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7.1点(レビュー数:19人)

作者きづきあきら

巻数4巻 (完結)

連載誌COMIC SEED!:2003年~ / ぺんぎん書房

更新時刻 2009-11-25 06:27:11

あらすじ 門倉高校漫画研究会に突如現れた美人で巨乳の2年生、青木杏。その日から、生温い日常に浸りきっていた部員達の心にさざ波が立ち始める…

備考 ぺんぎん書房が倒産したため、3巻で無念の打ち切り。しかし2006年に小学館より完結までの描き下ろしを新たに加えた完全版(全4巻)が出版された。

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ヨイコノミライ!のレビュー

点数別:
1件~ 5件を表示/全19 件

9点 canさん

漫画のレビューを書いていると、自分が神様になったような錯覚に陥ることがあります。神様は言い過ぎかもしれませんが、何やら偉い批評家や評論家の先生にでもなったような、そんな気分になることがあります。
「自分がこの漫画の評価をしてやっている」
「この作品を描いた作者のために、こうしてレビューを書いてやっている」
普段は意識していない無意識下から、こうした認めたくはない言葉たちが、にょきにょきっと顔を出してくるのです。
こういった場にレビューを書いた経験がある人なら、何となくわかるのではないでしょうか。ここまで大げさではなくとも、各作品に対して点数をつけ、レビューを書いたときに得られる何とも言えない優越感。面白くないと感じた作品に対し、素直に「面白くない」とぶちまけたときの爽快感。作品の評価をすることで、自分がその作品より上に立っているという得難い感覚――。
これらは私たちが人間である以上、おそらくは否定できないものです。しかし不特定多数の人間が見るネット上に作品の評価を載せる以上、そういった感覚に身を任せ、自分の優越感を満たすためだけにレビューを書くことは許されません。作品に対して真摯に向き合い、(低評価を下す場合は特に)最低限の責任を持ってこの場に臨むべきです。
そんな「読者にとっての責任」を思い出させてくれるのが、この『ヨイコノミライ』です。堅苦しい言い方をしましたが、別に説教漫画ではありません。分類するとすればおそらく「オタク漫画」であり、舞台はとある高校の漫研です。そう聞いて「なんだ、『げんしけん』みたいなものか」と思って手を出すと、手痛い火傷を負う羽目になります。『げんしけん』がオタクの楽しい部分、ある意味「光」を描いた作品だとすれば、この作品で描かれているのはオタクの「影」の部分。オタクならば誰もが一度は身に覚えがあるであろうイタイ過去を、これでもかというほどほじくり返されます。もしもあなたがオタクならば、「ああ、いるよな、こんな奴」「ああ、いたいた。こんな奴もいた。てゆーか以前の俺だよちくしょぉぉぉお」となること請け合いです。私は微妙に現在進行形でこの作品の登場人物と似ていたりもするので、結構救いようがありません。あわわわわ。
さて。
長々と書いてきましたが結局何が言いたいのかというと、この『ヨイコノミライ』はこのような場にレビューを書く人には一度は読んでおいてほしい作品だということです。もっと多くの人に手に取ってほしいという個人的願望から、点数も高めにつけています。(あ、漫画としてもきちんと面白いので、決して高評価過ぎるということはないと思います)そして読み終えたあと、この作品に出てくる「天原君」にだけは、ならないようにと戒めてほしいです。作品内の「天原君」は幾分誇張されたキャラクターですが、油断すれば誰でもなりうる存在だと思います。
まだまだ書きたいことはたくさんあるのですが、延々と続きそうなのでこのへんで。最後に別の漫画から心に響いた名台詞を拝借して、締めにしたい所存です。
「人のやる事なす事に『中二』とか言って悦に入ってる連中が、一番何も作り出せない層なんだよ! バーカ!!」 by シズル
願わくば一流の読者になりたいなぁという話でした。

ナイスレビュー: 5

[投稿:2008-08-28 22:04:37] [修正:2009-12-02 23:22:41] [このレビューのURL]

9点 ジブリ好き!さん

彼らの痛みを感じ取ってあげてください。

この漫画はオタク文化の負の面を描いた作品です。
ですが、オタクに限らず、この作品を読んで感じるものがあると思います。
それだけ作中に出てくる考え方や人格はリアルで多様で現代的なんです。

彼らを反面教師として捉えてください。
彼らの記号的な人格や考え方に、少なからず僕らも当てはまる部分があると思います。彼らを見ていて「痛いなぁ」と感じるのは、彼らが本当に痛い人間だからだけではありません。
それは、自分自身を客観的に垣間見てしまった痛さなのです。
ここまで極端な人格はしてないぞ!って思うけれど、実はその境界線はかなり微妙なものなのかもしれないのだから。天原君ではなくとも、井之上君である可能性はあるのです。

この作品の素晴らしいところは、単にそうした説教くさい一面をもってるだけではなく、しっかりと読ませるストーリーをもっていることです。娯楽作品としても面白く、例えば1巻の番外編は、それ自体はハッピーエンドですが、本編とリンクしてるのを確かめるとすごく怖い話になります。
ぺんぎん書房の倒産で、長く続けるはずだったのが短く終わってしまいましたが、しっかりまとまっているのも凄い。

記号的なキャラのオタク達が、部誌と青木をきっかけに、その日常を変えていく。初めこそ記号的であったキャラたちが、経験とともに人間的なキャラクターへ進化していきます。しかし、それは一概に「成長」とは呼べません。
才能をもちながらも本気になろうとしない瞬や、繫がりを捨て己が夢へ歩む大門。
そしてラストは井之上と青木で終わると思ってただけに、あの二人の対比で締めたのは秀逸でした。
現実に出なければ傷つくこともない。
いつまでも安全で好き勝手言える内輪の世界から抜け出せない者
夢に向かい、安全地帯を捨て、傷つくことも覚悟しながら前へ進む者
成功の保証なんてないのだから、どちらが良いことだなんて言えません。ただ、どちらがかっこいいか、人間的な進歩につながるのかはわかります。

今学生の人だと特に共感できる部分が多い作品です。
また、こうしたサイトでレビューしたりする人ならば、一度は読んでおくべきかとも思います。
ある批評家が「僕ら批評家が作品を批評するのは、その作品を愛してるからなんです。いわば、その作品の恋人のよう」と言ってました。確かに、新しい見方の提示にはその作品を読み込むことが必要です。でもそれ以前に、その作品を愛することが必要なんですよね。人間の恋愛のように、たとえ悪い部分が多かったとしても、総評すれば「大好きだ!」と言える愛の批評。『本物の批評』とは、批判とも感想とも違う、貶めるものではなく魅せるもの。
少しでも天原君のような批評観をもってしまったことを全力で戒めたい今日このごろ。

ナイスレビュー: 3

[投稿:2010-02-15 01:22:36] [修正:2010-04-03 00:58:47] [このレビューのURL]

7点 とろっちさん

面白い話を描こう、というよりは、作者が強烈なメッセージを読者にぶつけたいがための
作品のように感じられます。
それでいて漫画としても綺麗にまとまっていて、素直に面白かったです。

読んでいて「痛い」とはそれほど思わなかったですね。
むしろ「痛々しい」という表現の方がしっくりくる感じです。
青木さんが「言葉は暴力」と自ら言うほどの鋭い発言でズバズバ斬ってくれるのが爽快だったり。
部員にもっと自己投影した方がよかったのかもしれないですが、登場人物になりきるだけが
漫画の読み方じゃないですからね。 まぁ性格悪い読み方かもしれません。


この作品に対するレビューは素晴らしいものが多くて、ちょっと気後れしてしまいますが、
以上、ここまでがこの作品の感想文でした。
確かに天原君なんかは悪例極まりないですが、一般人レベルで考えると、個人的には別に
感想文じみたものでもいいと思うんですよ。
プロの批評家がしかるべき場で読書感想文なんか披露したら、もうその人に仕事は来ないでしょうが、
我々はプロの批評家ではないのだし(と言うと無責任な逃げの発言になってしまいますけど)、
このサイトのレビューなどでもそうですが、「好きなものを読んで好きだと表現すること」 の敷居を
高くしたくないなあ、と思います。

でも必ず心に留めておきたいのが、自分の発言を聞いてくれる人に、文章を見てくれる人に、
そして何よりその作品に対して、敬意を表すること、ですね。
特に悪い評価を下すときは要注意。 褒めるよりも、けなす方が簡単なんですよね。
青木さんが言うように、作品を叩くことで「自己顕示欲」を発揮するだけのものは特に。
悪い部分ばかりを指摘したものは何となく本質を捉えているように錯覚しがちですが、
それは単なる批判であって、批評ではないのですから。

天原くんの非は、「批評と感想との区別がついていないこと」にあるのではなく、
「作品への愛情がない」ことと、「自分の意見を相手に押し付ける」ことにあると思っています。


さてこの作品、タイトルからして皮肉たっぷりですが、ただ切り捨て御免で終わるのではなく、
読者にとって希望も持たせてくれるところがちょっとばかり心憎いです。

「一所懸命は、悪くないよね? いいよ!」
「夢はつぶれたり、消えたりするものじゃなくて、ただ、形を変えるだけなんです。
16歳の青木杏さんの、今の夢は…?」

読み終わった後、つい自問自答したくなりました。

見たくないものもちゃんと見えているか? 聞きたくないこともちゃんと聞こえているか?
気付かないうちに自分に都合よく事実を歪めることはしてない……よな?

ナイスレビュー: 2

[投稿:2010-09-01 00:55:25] [修正:2010-09-01 01:19:26] [このレビューのURL]

9点 rankyさん

癖のあるメンバーが集まっている漫研、
一見すると平和だが、その中で渦巻いている各人の闇や問題点と、
外部からの刺激から始まる騒動等々を描いている作品。
小学館のIKKI COMICSから出ている完全版を読んでの感想です。

この作品に9点をつけるのは非常に迷った。
この作品は、マンガという表現の中で、
万人に通用する絶対的ななにかを持っているわけではない。
高得点をつけたくなったのは、自分の好みと読んだタイミングの問題だと思う。
それをわかっていながら、9点を付けたくなった。
このレビューを読んでくださる方がいたら、
レビューを書いている私は、青春フェチだということを勘案して捉えて欲しい。


久々に、正面から切りつけてくる作品だった。
正面から切りつけられ、衝撃が残った。

学校生活は、定型化された学園モノのようにきれいなものではなく、
限られた空間/限られた人間関係の中で、生存競争にも似た闘争状態。
自分と周囲の葛藤。
周囲を変えるか、自分を変えるか、
そんな、縄張り争いに近いギリギリのラインの引っ張り合いの中で、
微妙なバランスで成り立っている。
学校生活は決して気楽ではない。
生き残るために必死だ。
それを思い出させてくれた。

やっとの思いで抜けたのに、思い出したくはない感覚かもしれない。
思い出すことに何も意味はないかもしれない。
ただ、あの頃に抜けきらなかった何かもあると思う。
そのままではいけないのかと言われたら分からないが、
この作品のストレートな言葉と描写から、
もう一度、自分自身を見つめなおすきっかけになりえると思う。
読み手の成長のきっかけになりえると思う。

だから私は評価してます。
そして、そう思えるように育ててくれた環境に感謝したいと思います。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2010-08-11 01:26:38] [修正:2010-08-11 01:47:29] [このレビューのURL]

6点 あんりさん

人とうまく接触できない、それが過度になった場合
読んで字の如く「自閉症」なんてかつては呼ばれたらしい。

他人を批判しなければ、何かキャラを被らなければ、妄想を挿まなくては、対人関係において自分を保つことができない
自閉する一歩手前な登場人物たち。
殻に籠りがちな日本人には それらは逃避ではあるがコミュニケーション術の一つでもあり、
オタクに限ったことではないだろう。みんな少なからず自己防衛してるのだ

思春期において その加減を知ることができないと、その後の生活に支障をきたす。
だから皆、集団生活を義務とされ 他人を知ることで自分を知り、傷を負うことへの免疫を多少なり持つことによって自立(または自律)していく。
もういい歳なのに人と関われない、自制できないといった人は
今までに、傷つき過ぎたとか 傷つくことを知れなかった、そういった原因があるのかもしれない。
それらが改善されず ますます悪化していくと、何らかの「しょうがい」となってしまう

脱線したが
つまりトリックスター青木さんにテコ入れされ傷ついた漫研部員は ある意味、救われたのだ。
刊行の関係でその後のエピソードはあまり語られないが、きっとみんな大丈夫。天原君も成長できる

きづき氏は毎度、登場人物を通して読者をチクチク痛めつけ、自己開拓を促してくれる。
これはもはや我々への愛だ(と妄想しておく)
今の語りすぎた御託を読んで、少しでも心当たりのあった方には 是非お奨めしたい(しかし救いを求めてはいけない)
いろんなことを気づかせてくれた

ナイスレビュー: 1

[投稿:2010-06-03 17:16:44] [修正:2010-06-04 18:56:09] [このレビューのURL]

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