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8.75点(レビュー数:4人)

作者谷川史子

巻数1巻 (完結)

連載誌コーラス:2006年~ / 集英社

更新時刻 2009-11-25 00:45:57

あらすじ 亡くなった妻が悲しむから――と女子学生と目も合わせない鳥野教授。助手の美幹はそんな教授が気になって…。不器用な愛を描く表題作ほか揺れる恋心を切り取る二作品収録!

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積極−愛のうたのレビュー

点数別:
1件~ 4件を表示/全4 件

9点 橙木犀さん

私が谷川史子さんという作家さんを知るきっかけになった作品です。
他にも短編が収録されていますが、飛び抜けて表題作の「積極 愛のうた」に惚れ込んでしまいました。

愛情深く奥ゆかしく、そして高い知性と教養をさり気なく漂わせる鳥野教授。美幹ちゃんが心から惹かれ、想いを寄せずにいられないのが分かります。
本当に誰かを愛することを知ったために失ったもの、自分の最低さを思い知って、それでもやっぱり、美幹ちゃんは鳥野教授に出会えて良かったのだと、読んでいて自然に思えました。

教授が美幹ちゃんに渡した物、それが最後の最後に題名とつながって、その意味がわかったときに目の奥が熱くなりました。こういう温かさと教養と愛情に満ちた想いの伝え方、受け取ることができた美幹ちゃんはとても幸せだったと思います。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2013-01-09 10:52:25] [修正:2013-01-09 10:52:25] [このレビューのURL]

8点 とろっちさん

すごく柔らかく、それでいて凛としている表題作。

意外性やどんでん返しなどとは無縁な作風で、そんな展開は起こるべくもないですが、
それでもこの終わり方は今まで読んできた漫画の中でもかなりの出来。

幸福、悲哀、充足、寂寥、出会い、別れ。
様々な感情、想いが入り交じりながら形成されたこの作品。
普通は色を重ねていくとどんどん濃く黒くなっていくものなのに、この人の漫画は違います。
そういう想いを重ねていくとどんどん透き通っていく。 実に不思議。

奥ゆかしいまでの、純然たる「積極」。
タイトルから何からすべてがほぼ完璧。 参った。
読み終えて読者の心に一片の光が射すような、そんな温かみのある作品です。


その他2作品収録。 その他扱いして申し訳ないですが、その他としか思えないぐらいに
表題作にインパクトがありました。
ただその中でも「スパイラル ホリディ」はテンポも構成もラストも良く、良質なドタバタコメディ。
「風の道」は普通の少女漫画かな。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-05-29 16:40:51] [修正:2011-05-29 16:41:54] [このレビューのURL]

9点 blackbirdさん

この作者はたくさんの短編を描いていますが、決してハッピーエンドばかりではないんですよね。
ほわっとした雰囲気、付き合い始めたころの暖かい雰囲気の幸福感に包まれているかと思えば、そこにふっと辛い現実や別れが訪れることも。

「積極」では、辛い現実が主人公に訪れますが、何故か最後には明るい日差しが見えるような結末と感じました。

青林檎に込められた教授の想い。
ところどころにクスリと、かわいらしい笑いを取り入れながらも、最後にぐっと掴まれます。

残り二作は、どたばた、ちょっとコメディっぽく楽しめる作品。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-04-14 23:02:51] [修正:2011-04-14 23:02:51] [このレビューのURL]

9点 canさん

個人的に谷川史子さんの最高傑作は、この『積極―愛のうた』であると思っています。
短編集にあまり高得点をつけるのもどうかとは思いましたが、もう本当に大好きなので9点。


短編の名手として知られる谷川先生ですが、そもそもその魅力とは何でしょうか?
それは作品全体から漂うほっとする雰囲気と、そこに時折差し込むどきりとする瞬間に他ならないと思います。

読んでいて癒される、ふわふわとした温かい絵柄とストーリー。いいですね、素晴らしいですね。疲れたときなんかに最適ですね。人に優しくなれる気がしますね。
そしてそんな優しい雰囲気の中に不意に差し込む、孤独や淋しさを感じさせる一瞬――。
谷川先生はこの「落差」の表現が非常にうまく、特に本作『積極』では、その演出が際立っています。
本作の結末はハッピーエンドとは言えないかもしれませんが、私は読後に切なさこそあれ、悲壮感は感じませんでした。それはなぜか。

温かくほっとする雰囲気の中に、時折ふっと、どうしようもないほどの悲しみが混じる。
これは生きることそのものです。生きてゆくこと、恋をすることは幸福ですが、幸せなばかりではいられない。それが人間の営みである以上、避けられない寂寞が付きまとってくる。
谷川先生の作品はひどく感覚的に、この生きることの本質を捉えています。幸せなだけではいられない事実を、私たちに突きつけてきます。
しかしその読後感が決して悲しみに満ちたものでなく、むしろ前を向いたものになるのは、作品が生きていく上で避けられない不幸を肯定し、それでも生きることは素晴らしいのだと、読者に訴えかけてくるからです。

他人とわかりあえなくても、一人でも、いつか死んでしまっても。
悲しいことはたくさんあるけど、それでも生きることは幸福であり、
私たちは生きているかぎりは前に進むべきなのだ。

表題作の『積極―愛のうた』を読んだあと、私はそんなふうに思いました。
一発で谷川先生のファンになり、翌日には周辺の本屋を駆けずり回って、既刊を片っ端から買い漁っていました。

いつの間にか作品のレビューではなく作者のレビューになってしまいましたが、あしからず。
あ、おまけ漫画の「告白物語」は、このためだけにお金を払ってもいいくらい好きです。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2009-02-08 20:30:20] [修正:2010-04-09 22:00:07] [このレビューのURL]


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