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6点(レビュー数:4人)

作者大今良時

原作冲方丁

巻数7巻 (完結)

連載誌別冊少年マガジン:2009年~ / 講談社

更新時刻 2011-04-11 01:19:20

あらすじ なんで私なの?
身寄りのない少女・バロットは、救いの手を差し伸べたはずの男・シェルに突然殺されかける! 瀕死の状態から目覚めると、その身には金属繊維の人工皮膚と、あらゆる電子機器を操る力が与えられていた。ネズミ型万能兵器・ウフコックの力を借りて、答えを探し求めるバロットの闘いが、今、始まる!!

備考 同名のSF小説を漫画化した物。

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マルドゥック・スクランブルのレビュー

点数別:
1件~ 4件を表示/全4 件

3点 Scroogeさん

殺された少女娼婦バロットがサイボーグの体と変幻自在の相棒を得て復讐するという話。

舞台はゴッサムシティの未来形。サイバーシティです。
主人公は攻殻機動隊の草薙素子の美少女形。ロリロリで電子的に無敵です。
相棒はバビル2世のロデムの小動物系。何でもありでおしゃべりの相手もできます。

漫画としての面白さは主に暴力描写にあって、
殺されたために暴力を振るう正当性を手に入れた主人公が、
殺人と性的快楽を直結した凶悪な変態どもを、もっと凶悪残酷にお仕置きするところ。
わかりやすい復讐の快楽と、さらなる敵のチラ見せで話をまわす。

変態バイオレンス路線がしばらく続いた後、主人公と相棒が殺しは嫌と言い出す。
互いにゴネてから、黒幕を逮捕し裁判にかけるというヌルい目的で同意して再び走り出す。
しょっぱなから倫理的に酷いシーンしかないので、社会全体がそういう価値観なのかと思っていたが、突然に良識が登場して相当に違和感がある。
さらに主人公の美少女が相棒の小動物を異性として愛していると言い出して、秩序を諦める。
路線変更からバトル一転、カジノを舞台にギャンブル勝負と人情話になった。
頭脳戦の内容はよく考えられていると思うが、絵ヅラが地味な上、
人情話は押し付けがましくてどうでも良い。

最後は、結局バトル。
小動物の昔の相棒が発狂して襲い掛かってくるのを撃退し、黒幕は起訴された。

原作は未読なので、作品の欠点を誰に帰責すべきかわからないが、
印象としては、漫画家のせい。
才能は素晴らしいが、漫画を作る地力が足りていない。
経験不足のまま大げさな原作に挑戦し、絵の才能で押し切った、という評価。
面白い面白くない以前に、何を描こうとしたのかがよく判らない。
漫画の文法をマスターすると大化けしそうだが、さて、そっちへ行きたがるのかどうか。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2012-06-14 16:57:14] [修正:2012-06-14 16:57:14] [このレビューのURL]

7点 鋼鉄くらげさん

「物語の完結」には二つのパターンがあると思っています。一つは、作者の意に依らない外発的な動機が起因となって引き起こされた「物語の完結」。つまりは「意図しないタイミングで終わらせた強制的な幕引き」です。そしてもう一つは、作者の意に沿う自発的な行動過程の結果によって導かれた「物語の完結」。つまりは「作者の描きたいものを最後まで描き切ったトゥルーエンド」です。(但し、必ずしもハッピーエンドとは限りません。ハッピーであれ、バッドであれ、作者が真に望む結末こそが、物語の真の結末であると考えるためです。)

そういった意味合いに当てはめて「物語の完結」を考えるならば、この作品は間違いなく正しい意味での「物語の完結」。つまり先程の例で言えば後者の、作者の望む形として物語の結末を迎えることができた作品だと思っています。

まず初めに断りを入れておくと、自分はこの作品の原作を読んだことがありません。なのでこのレビューは、漫画のみでの評価になっています。

元は冲方丁先生の原作がベースとなっているこの作品ですが、一個の漫画として見た場合でもその完成度はかなり高いです。何より、漫画としての面白さを漫画家(描き手)自身がとても良く分かっています。

それはつまり、画面全体の「空間」の使い方であったりだとか、各コマごとの「流れ」や「呼吸」の配分方法であったりだとか、漫画を面白く見せる上で重要な要素を漫画家自身がとても良く理解しており、かつそれを上手く体現させるだけの技術も持っています。

別マガ6月号で無事に完結し、最終巻が来月発売だということなので、また最終巻が出たあとに、最初から最後まで一気読みすると、本誌で読んでいた時とはまた違った印象になるのではないかと思います。ただ、途中、(グロいという意味で)結構過激な描写が出てくる場面が多々あるので、そういうのが苦手な人には少しキツい作品かもしれません。ですが、それも表現であり、演出の一部だと割り切ってしまえば、かなりの緊張感を持って物語を楽しむことができる作品なのではないかと思います。

「原作×漫画家」が「プロ×素人」であったためにこれまで数多くの駄作が歴史上積み上げられていきましたが、この作品は正に「プロ×プロ」によって完成したプロフェッショナルな作品だと思います。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2012-05-11 22:00:44] [修正:2012-05-11 22:04:39] [このレビューのURL]

6点 booさん

まさかマルドゥック・スクランブルが今さらコミカライズされるとは! それもうら若い新人女性作家に描かせるとは!…まあ間違いなく別マガ編集部は変態の集まりということで笑。

精神的にも肉体的にも虐げられ、文字通り殻の中にこもり続けていた少女バロット。
バロットは万能型ネズミのウフコックに出会うことで初めて殻を破り、感じ、傷つき、恋をし、戦い、進化する。
マルドゥック・スクランブルはバロットの成長譚だ。

原作小説は日本SF大賞を受賞しており、00年代を代表するSF小説の一つ。
ジャンルとしてはサイバーパンクSFに分類されるのかな。コミカライズということで、攻殻機動隊やBLAME!と比べてしまう人も多いでしょうがご安心を。おもしろい部分が全く違うので。
「レオン」をモデルにしただけあって、保護者に守られつつ成長する少女とその保護者との微妙な関係性が楽しめる作品。ボイルドの「徘徊者」もやはりレオンが着想の元だろうな。

原作はそのハードボイルドさが大きな魅力だったのに対し、大今良時はうまく少女の成長譚に的を絞ってコミカライズしている。
原作の改変もうまい。大筋は残しつつも畜産業者やフェイスマン辺りの説明はスパっとまとめ、独自の変更を加えていく。カジノ編に至った今となってはもはや原作と別物の大今良時版スクランブルとも言えるかもしれない。
バロットの才能やボイルドについてはもうちょい説明した方が分かりやすいとは思う。全てを知覚するバロットとウフコックへの執着以外の感覚を喪失したボイルドの対比なんかも。
絵は独自の色がありつつも、まだまだ粗い。伸びしろは大いに感じるし、オリジナリティと工夫が随所に見られて楽しめます。

畜産業者編までの出来は非常に良かった。しかし原作で傑作と名高いカジノ編はかなり見劣りするのが否めない。ここは漫画化が難しいだろうし、そもそも漫画で見る必要性を感じない話なので…と言えばそれまでだけど。

ベル・ウィングは私のお気に入りなのにこちらは微妙だったなぁ。これじゃルーレットはただのゲームに過ぎないし、ベルは何となくかっこいいだけのおばさんではないか。
原作でのルーレットはまさに”運命の輪”。バロットの「右に、回してください」という台詞は、今まで周りに流されっぱなしだった彼女が運命を自らの手で掴みとると決意したことを示し、その台詞はベルをも「右回りの人生」に回帰させる。だからこそベルは右に回し、バロットは「あの人みたいになりたい」と言うのだ。大今良時は最後だけ抜き出したわけだけど、それでは全く意味が通らないのでどうせなら全面的に作り直した方が良かったと思う。
「左回り」「右回り」と彼女の女としてのあり方を示したバロットとのやり取りは原作屈指の名シーンです。ここだけでも原作を見る価値はあるはず。てか”運命をねじ伏せる”はマルドゥック全体のテーマで、ボイルドとフェイスマンの問答を見る感じでは漫画版でもそれは同様だと感じていたんだけど違うのか?

現在はアシュレイと対決している所。持ち直しを期待します。序盤でのあの虚無的なバロットが最終回でどんな女性になっているのか、楽しみですね。

原作未読の方はもちろん、既読でもまた違った方向性で楽しめる大今良時版マルドゥック・スクランブル、おすすめです。かなり読みやすくなってるので敷居は確実に下がりました。
興味を持ったら原作の方も併せてどうぞ。こちらは傑作。

どちらかと言えばマルドゥック・ヴェロシティの方のコミカライズを見てみたいので、続いてこちらも期待。ついでにイースターのカオス理論に基づいたまだら染めのカラー絵も期待。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2011-09-08 01:20:49] [修正:2012-01-22 22:18:48] [このレビューのURL]

8点 ジブリ好き!さん

なんともSFらしい世界観。
SF好きなら映画や小説で見慣れた世界観でしょう。漫画なら士郎正宗なんかが既に同様のイメージを持っていますね。設定も「ガンスリンガー・ガール」なんかを思い出します。
しかし、そうした既視感が減点要素になどなっていません。むしろ世界観・設定・展開、そしてアクション、全てがSFらしい王道+味のついた高いクオリティでまとまっていて、作品世界にのめり込んでしまいます。
特に3巻のバロットとウフコックの心理描写なんかは凄かった。
恐るべし冲方丁。。

さて、コミカライズということで画にも注目が集まると思いますが、、
なんと、大今良時は(連載開始時)10代の女の子なのです。驚き!
骨格や見せ方の角度なんかに未熟さを感じたりしましたが、画力の高さ・緻密さは目を見張るものがあります。
そして、原作者から自由に描かせてもらっていること、つまり情報の取捨選択や見せ方、少年漫画らしくするための細かい変更などもほとんど彼女がやっていること、これもまた驚きです。
恐るべし大今良時。。


物語もどんどん面白くなっていき、画力もますます磨かれていく、非常に前途有望な作品。
少年漫画で成功した女性漫画家は高橋留美子や荒川弘、他に星野桂などのジャンプ作家が少々と数えるほどだけれど、そこに大今良時が加わる日も近い!と密かに期待していたり。。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-04-11 01:19:34] [修正:2011-04-11 01:19:34] [このレビューのURL]


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