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6.8点(レビュー数:5人)

作者宮下英樹

巻数5巻 (完結)

連載誌月刊ヤングマガジン:2007年~ / 講談社

更新時刻 2010-12-24 13:39:56

あらすじ 乱世を遊んだ男・今川義元と、戦国最高の軍師・太原崇孚雪斎。血で血を洗う戦乱の時代に出会った2人は日本史上初の”戦国大名”への道を進み始める…!! 戦国史上最も有名な合戦を描く、超絶歴史エンターテイメント!! いまだ謎に包まれた[桶狭間]の真実に迫る決定版!!

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センゴク外伝 桶狭間戦記のレビュー

点数別:
1件~ 5件を表示/全5 件

7点 gundam22vさん

桶狭間の末路の一点で暗愚とされがちな今川義元の再評価を
丁寧に行なっているのは素晴らしいです。
作中で魅力的なキャラですが主人公なので美化しすぎというのは確かでしょう。しかし、行跡に関しては
事実しか描いてませんし。敗れたのは漫画を読み終えれば
偶然が絡みつつやはり天下人な信長という相手が悪かったのだという思いを強くします。素晴らしいのに評価されてない
武将という点では主役として良いところに目を付けたなと
思いました。
信長についても桶狭間でメジャーになる前の尾張統一辺りからしっかり描いています。後の天才天下人とはいえセンゴク本編に比べて
弱さや青さが覗く辺りも上手い信長の造型だったかと。
あまりこの時代の信長は題材にならないので有名人ですが新鮮な気分で読めました。

合戦過程について義元が俗説の天下とりではなく、領土拡大だけを狙ったというここはもはや現在の通説的見方をとっていること、
油断していた義元をしてやったりの奇襲で信長勝利という従来の奇襲説(俗説、二次創作は全部こうなっていますね)と信長が単に一矢報いるため、偶然突いたのが本陣だったというだけという最近有力な偶然奇襲説を折衷して偶然要素にも助けられた奇襲説というバランスのとれた見方を採用している辺りは漫画という媒体でここまで
鋭いのかと感心しました。

最後の最後の力の部分で統制はしていても一点の綻びに対処出来ない悪く言うとマニュアル今川兵が、未完成だがそれ故に暴れ馬の緒田兵にけちらされてしまったというオチや米から銭へと時代は移りつつあり、銭への執着・人間の欲に忠実な信長を時代は選んだというメッセージも説得力があったと思います。ただ小氷河期理論は勇足だった感は否めないと思いますが…

漫画としての面白みや絵の丁寧さがあり、合戦シーンは迫力があります。独自の説も見られますが、背景から歴史解説や現代に通じるメッセージを示すスタイルが多少読みにくさはありながらも読めてしまう辺り作者の技量は高いです。
センゴク無印本編よりは実績豊富で大将クラスの人物を主人公に据えただけにオリジナル話や脚色が少ないのも長所かと。

ただ欠点をあげると盛り上がるのが桶狭間合戦のある最終巻近く
なので、それまでが政治駆け引きなどに偏り多少読者選んじゃうかなとは思いました。もう少し合戦を詳細にして(信行との対決である稲生の戦いなんか過程も面白いのにダイジェストだけでしたし)他は絞るなど工夫した方が山は作れたかもしれません。

総じて厚めの全5巻でこのテーマに関しては詳細に切り込みまくっている歴史漫画として上質の作品だと思います。
俗説と史実のギャップが激しい義元の再評価のためにはもっと読まれた方が嬉しいのですが。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2012-02-14 08:17:55] [修正:2012-02-14 08:17:55] [このレビューのURL]

7点 臼井健士さん

戦国時代の合戦史上でも毛利元就の「厳島の戦い」、武田信玄と上杉謙信の「川中島の戦い」と並ぶ三大合戦にも挙げられている
「桶狭間の戦い」に至るまでの道筋を駿河の今川義元側を中心とした視点で描いていくというこれまでにない作品。

他の方も言われていることだが、信長に討たれたために今川義元に対する後世の評価は厳しく、
「徳川家康」以前の「東海道一の弓取り」が、「凡将」あるいは酷いものになると「愚将」とさえ言われかねない程。
今川義元の実像については「誤解」ばかりが広く喧伝されてしまっているともいえる。

曰く「胴長短足の風体で、馬にも満足に乗れず輿に乗っていた」
曰く「京都の公家のような格好をしており、お歯黒を付けていた」
曰く「大軍で行軍しながら油断して信長に討たれた」等。
これらの多くは後世の創作による逸話らしい。それが信長を賞賛するための踏み台とされて、あまりにも広く世に喧伝されてしまった。

そんな義元は今川家の分国法に当たる「仮名目録」を定めた父・氏親の五男として誕生し、決して将来を約束された身ではなかったが、
この義元の教育係を務めたのが京都から今川家に招かれていた「大原雪斎」に教育を受け、武将としての資質が覚醒していく。
父・氏親が死去した後に家督を相続した兄・氏輝が病弱で、ほどなく死去した後に起こった家督争いで側室の子供である兄を成敗して、
ようやく歴史の表舞台に登場する。

一方、隣国の尾張国でも「津島」「熱田」という商人・寺社勢力を取り込んで勢力を拡大させつつあった男がいた。
織田信長の父「織田信秀」である。この信秀と義元は度々干戈を交えているのだが、決着を付けることなく信秀は病死し、
因縁は息子の信長に引継がれていく。

一般的に義元の西への行軍は京都に上洛して天下に号令するためであったとする説だが、その割に道中の浅井氏・六角氏・北畠氏などに対する
外交の形跡が見られないため、将来的な布石かはともかく、この作品で語られているような「単なる領土拡大のための侵攻」だった模様だ。

いわば義元・信長共に「戦国大名」としての脱皮の末の「桶狭間合戦」という位置付けである。
けれど、軍師「大原雪斎」存命ならば、義元の命運もまた違ったであろう。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2012-01-04 22:11:13] [修正:2012-01-04 22:11:13] [このレビューのURL]

6点 torinokidさん

今まで他の様々な作品で扱われている桶狭間だけに
当初は「今さら?」な感じもあった本作品だが、
いやいや良いじゃないですか。面白かったです。

義元も信長もなかなか良い感じのキャラ。
時代背景、合戦への経緯、合戦の展開なども概ね納得です。
ただし小氷河期理論?はちょっと微妙。

ラストはお見事。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2011-01-07 21:01:59] [修正:2011-04-18 23:07:19] [このレビューのURL]

7点 あおはなさん

最終巻の盛り上がりでこの点数。

「今川義元について新解釈」という触れ込みで語られることが多い本作ですが、概ね本作で語られている今川義元がデフォルメを除いても実像に近いと思います。

彼は武田信玄や北条氏康が同盟を結ばなければならないと考えるほどの、優れた政治力を誇った戦国大名の一人ですから。

むしろ「小氷河期」が戦国時代を生んだという大胆な提言から始まる本作全体の展開と「貨幣」を通じて描かれる「虚と実」の拮抗が本作を面白いものにしているのが(おはずかしいことに)最終巻ではっきりしたので、ちょっと点数高めです。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2011-02-15 08:25:19] [修正:2011-02-15 08:25:19] [このレビューのURL]

7点 Hopeさん

本作の主役は信長と今川義元、準主役に信長の父信秀と義元の師匠で戦国時代屈指の名軍師太原雪斎。
物語は雪斎が幼い義元に出会うところから、桶狭間の戦いまでの37?38年くらいの期間の話です。

歴史物はキャラクターの魅力がとて大事だと思います。実話だからこれから起こる出来事はもう分かっている訳だし、ましてや信長という超メジャーな人物ならすでに読む側にもイメージというものが出来てることが多いでしょう。
その点この作品は素晴らしい、信長・信秀親子は従来のイメージを壊すことなく新鮮な魅力をもっているし、義元・太原雪斎の師弟コンビも奔放な義元と生真面目な雪斎の組み合わせが見ていてとても楽しいです。

歴史上の人物を描くときは一般的にその人物のドラマチックな逸話を描くことが多いと思います。わかりやすい逸話を挟んだ方がその人物の個性とか説明しやすいと思ったりするわけです。しかし本作にはあまりそういった話は出てきません。
そうではなくて、その人物が生まれた土地柄、身分や立場、歴史的な行跡から焦点をあてその人物の個性を探ろうとしているように感じました。
登場人物の行動や個性にも重厚感があってよかったです。

作者自身の史観もわかりやすくて面白かったです。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2010-12-29 22:07:13] [修正:2010-12-29 22:07:13] [このレビューのURL]

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