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7点(レビュー数:8人)

作者麻生羽呂

巻数18巻 (完結)

連載誌週刊少年サンデーS:2010年~ / 小学館

更新時刻 2011-06-02 06:21:36

あらすじ 有栖(アリス)良平は、パッとしない日常にイラつき、「どこか知らない所へ行きたい」と願う落ちこぼれ高校生。退学した苅部(カルベ)、お調子者の張太(チョータ)といつものようにブラつく夜、突然巨大な花火が空を覆い、3人は別世界へ… やりきれない日常をえぐる、新感覚/異色サスペンス!

備考 「週刊少年サンデーS」と「クラブサンデー」との同時連載。

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今際の国のアリスのレビュー

点数別:
1件~ 5件を表示/全8 件

[ネタバレあり]

私が福本作品や『ライアー・ゲーム』や『嘘喰い』なんかを嫌うのは、自分の欲望からそういう馬鹿げたゲームに入っていることなんだよ。
勝ったら莫大な富を得るという、どうでもいいことで大事なものを賭けるという、ギャンブル物なんだよな。
『今際の国のアリス』はそこが違うわけ。「生きる」という当たり前に与えられた命を、生きるために投げ出さなければならない。
つまり、生きるとは死ぬことである、という死生観を彷彿とさせる作品なんだな。

もちろん先鞭がつけられた構造で、理不尽に攫われて命懸けのゲームをさせられるということは既に多々在るんだよ。しかしそういう既存の作品との違いは、登場人物たちがその中でただ生き延びるだけではない、崇高さというものを見せてくれる点にあるんだな。
人間の弱さが前提としてあり、そこから不信も不安も広がっていく。しかし、だからこそ、闘おうとする者たちが生まれてくる。
これは人類がこの世界の理不尽と闘い続けてきた歴史そのものなんだよ。
我々はこの世界に放り出されたような存在なわけ。そして否応無く理不尽と闘わなければいけない。

実はこの我々の世界と、あのアリスたちの世界はまったく同じものなんだよ。
生きるために何事かをしなければいけない。それには仲間と協力しなければいけない。力を得なければいけない。
それを拒絶すれば、あのレーザーのように、自分の死を迎えるしかないんだよ。
欲望でギャンブルをするというものとは、一線を画する作品なんだよな。
あのビーチが都市や国の形成を示すことはわかるな。いろんな人間たちが集まって、一つの規律によって仲間となっている。
そして宗教も生ずるわけだ。
規律というものが大きな集団を形成し、夢というものが大きな力を創造する。
そしてそれを破壊する力もまた現れてくる。

生きるとは何なのか。死ぬとは何なのか。それを眼前に見せ付けてくれることがあの作品の醍醐味なんだよな。
そしてそれは、自分のために生きることではない、という結論が最初から一貫している、ということだな。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2018-08-10 11:20:41] [修正:2018-08-10 11:20:41] [このレビューのURL]

8点 イケメンさん

[ネタバレあり]

二日かけて一気読みしてしまう程には面白かった。
当方デスゲーム系漫画にハマっており、最近よく読むのだが玉石混淆なそれらの中でもこれは良作の部類。

だいたいのゲームが一巻の中で終わるテンポの良さが素晴らしい。
ただ、ゲームの途中に「特別編」と称して別のゲームを挟むのはいただけない。
「特別編」自体はわざわざ「特別編」と冠する必要はあったのか?と思う。普通に本編に絡む話だし。
アリスがいないからかと思えば、アリスのいない「ハートのJ」は本編扱いだったような。
また、アリスの内省、葛藤描写が少々クドい。いちいちウジウジしすぎ。ようやく吹っ切れたかと思えばまたウジウジの繰り返し。
そしてアリスが「すうとり」以降ほとんど出てこないのもマイナス。「スペードのK」は明らかな失敗エピソードだった(後述)。

福本伸行のギャンブル漫画に端を発するであろうこの系統の漫画のストーリーのツボをソツなくおさえており、作者の技量の高さ、器用さが伺える。
……のだが、キッチリおさえるべき点をおさえられていない粗も目立つ。お約束がわかってないなあという印象。

その最たるものは、上述の「スペードのK」戦だろう。次点で「クラブのK(すうとり)」。
まず「スペードのK」だが、このエピソードは一巻以上のページ数を割いており、この作品における屈指の長さなのである……そして主人公が一切出てこない。
内容自体もいまいちという鬼門とも言える出来なのである。

このエピソードに出てくるアグニ、ヘイヤ、ドードーの三人は魅力的なキャラだ。アグニはビーチ編で散々読者に印象付けられているし、他の二人は特別編で数話にわたりフューチャーされているので下手な主要キャラよりも印象に残る。おそらく二人は「スペードのK」戦の為だけに用意されたキャラなのだろう。
だからこそ、ドードーの再登場、アグニとヘイヤの邂逅は心おどった。ああ、この三人でKを倒すのか、とワクワクした。
アグニは見た目は筋骨隆々のいわゆる脳筋キャラのようないでたちなのだが、思慮深く頭も回る友人想いの男だ。
ヘイヤは登場時点ではただの女子高生なのだが大けがと死の瀬戸際で大きく成長し、初登場時点では想像できないくらい逞しくなった女アーチャー(厨二心くすぐる義足と弓のコンボは興奮した)。初登場時の頼りなさも相まって、成長後の彼女はめちゃくちゃカッコいい。
ドードーは主要メンバー中最年少の中学生で普段は冴えないのだがいざという時にはアリスのように頭が回る……というキャラ。

肉体派のアグニとヘイヤ、そこに頭脳のドードーが力を合わせて、最強の戦闘マシーン「スペードのK」を倒すというこれ以上ない熱い展開。
……なのだが、その内容がお粗末であった。
三人の役目としては、アグニが主な戦闘、ドードーはレーダーの看破、ヘイヤがそれの破壊、であろう。
しかしレーダーはすでにアリスによって看破されているので読者としては驚きが無い。だからそれを破壊してもカタルシスが無い。そのうえただのレーダー頼りだったというKのショボさも露呈してしまう。これはいただけない。実はレーダーではなく他の方法で追跡していた、という展開だったらKの凄さや絶望感も際立つので良かったなあと思うが。
途中で三人のほのぼの描写なども混ぜてしまうのでテンポも悪い。戦闘自体も、最終的にはボスの精神が壊れて自滅といった感じで、三人で力を合わせて倒したといったカタルシスが無い。なんとなく勝っちゃった、みたいな展開。
うーん。もっとどうにかならなかったものか。「まじょがり」で大量殺戮をしたアグニはやはりここで死んでおくべきだったと思うし、ドードーやヘイヤの見せ場がもっと欲しかった。

次に、「クラブのK」。
アリスが参加した実質最後のゲームであるにも関わらず、展開の必然性の弱さ、ご都合展開が酷かった。必然性の弱さはこのゲームに限ったことではないが。全体的にこの作品の弱点は「必然性の弱さ」これに尽きる。
簡潔に言えば、敵チームのアホな油断のおかげで勝ってしまっているのだ。今際の国の住人だからジャンキーなのはわかるが後半のボスキャラでこれはキツイ。
仮にも「K」なのだから、もっと勝ちに執着したプレイをしてほしかった。
自陣を守るはずの敵が、主人公側の策という策もない作戦にホイホイ誘い出されてゆくのは噴飯物以外の何物でもない。こういった知能戦で考えも無しに動かれるのは萎える。
最後の逆転方法も、カイジを読んでいた人なら大方予想がついてしまうであろうもの。首輪が多い中、腕輪というところで勘のいい人なら気づくかも。

必然性の弱さはラスボスである「ハートのQ」戦でも目立つ。
もっとも「ハートのQ」「くろっけぇ」はゲームというゲームではなく、主人公の最後の内省イベントでしかないのだが。
主人公が毒入り紅茶を飲んでしまうのがバカすぎる。九割の読者が「おいおい、紅茶飲むなよ」とツッコんだはず。
主人公が紅茶飲まなかったらQはどうしてたんだろう?
てか二人だけじゃなくて全員で来られてたらどうしてたの?
福本漫画や喧嘩商売だと、使われないまでも「その策が失敗した場合の予備の策」がきちんと用意されているので問題ないのだが、どうも策は紅茶しかなさそうだし。
本作のウリであろう「ハート」ジャンルのラストゲーム、ラスボスなのに、「毒盛って幻覚見せて自滅させる」のが策だなんて酷すぎはしないか。

ぶっちゃけ、「すうとり」で作者が力尽きた感がすごい。

「ダイヤのK」も途中までは良かったが、二人になってからは駄目。
オチが早い話「相手の良心に訴えて勝ち」というお粗末展開。
ボスキャラがそれはどうなのよ。
理性では勝とうとしていたけれど実は良心のせいで負けた……とかならわかるが。
そういうキャラクタの魅力依存なオチにするならするで、ボスであるクズリューが冷徹非道だという描写をもっと早い段階でしてほしかった。ビーチから居ることは居たが殆ど描写の無かったぽっと出のキャラが実はいい人でしたとやられても。

言いたいことは他にもあるのだが疲れてきたのでこの辺で終わりにします。
一番良かったのは、女性キャラが美人ぞろいで魅力的なところでしょうか。
露出度の高いキャラが多く、読んでいるとムラムラしてしまい、三巻に一度くらいオナニーしてしまいました。この作者の描く女性は唇が艶めかしくていいんですよねぇ。
文句ばかり書きましたが、面白い漫画です。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2017-11-05 22:13:32] [修正:2017-11-05 22:37:17] [このレビューのURL]

8点 rokaさん

結末には賛否両論あると思うが、私はこれ以上のオチも浮かばないし、ある意味で、この漫画にとても相応しいラストだとも思うので、特に文句はない。
ともかく、「過程」は本当に面白かった。
子どもの頃、かくれんぼに感じたみたいなドキドキがあった。
ひとつひとつのゲームが非常によく練られていて、完成度が高い。
ただまあ、途中のスピンオフはいささか多すぎる気もする。

個人的には、「今際の国」にちょっと憧れてしまった。
今の日常に大した不満があるわけでもないのに、実際に迷い込んだらすぐ帰りたくなるに決まっているのに。
心の奥底には、あるのかもしれない。
逃避への願望か、非日常への渇望か、命がけの遊びへの切望か。
私にも、もしかしたら、あなたにも。
もしそうであるならば、私たちの目の前に、この漫画の、今際の国への入り口は、真っ赤な口を開けて待っている。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2017-06-25 23:44:25] [修正:2017-06-25 23:44:25] [このレビューのURL]

7点 フィロさん

絵が一貫して綺麗で、読みやすいデスゲーム物です。

デスゲームだけあって、人が死ぬ場面も多いのですが、どことなくゲームの設定が人の心理の裏をついたような物も多く、読んでいて単純に「先が気になる」。
そうきたか、と意表をつかれた結果も多く、なかなかスリリングでした。

終盤は哲学というか精神世界のお話になってしまい、それまでのゲームで見られた主人公が知恵を振り絞ってクリアを目指す面白さがなくなってしまったので勿体ない気もします。

読み終わったあと、残るような影響はないけど、間違いなく、ハラハラしながら夢中で読める面白い漫画です。もっと知名度があってもいいと思う、まとまった出来の作品です。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2017-03-23 19:32:11] [修正:2017-03-23 19:33:49] [このレビューのURL]

7点 gundam22vさん

[ネタバレあり]

完結後の評価になります。近年増えてるデスゲーム系作品。絵が非常に綺麗なのが印象的。ただオチはやっぱり実はこの世界は作られた系に該当しちゃいましたね(現実との一定のリンクはあるにせよ)。前半はゲームがシンプルながら運動系含めて種類が豊富で緊張感もありました。世界観もビザ期限を用いての時間切れ死亡制度など独特です。群像劇的な番外編で主人公アリス以外の人間を描くのも面白い試み。しかし後半はゲームより哲学的な論戦、作者の主張が出過ぎている感じだったり、主人公アリスがもうゲームには金輪際参加しない宣言から、番外編で本筋に絡まない人間模様を延々と見せられてグダグダしてしまった感が。後半で例外的に面白かったどくぼうゲームの勝者コンビ(今際の国完全肯定)がまさか終盤に全く絡まないとは悪い意味で想像出来ませんでしたし。このオチやるなら全十数巻くらいで番外編をもっとカットして主人公アリス(とヒロインウサギ)の物語に集中させスムーズに終わった方が良かったのではないかと(一貫してアリスが地頭良い程度のチート感ない主人公でウサギがかわいい運動系ヒロインなのは良かったが)。ただ後半の欠点を考慮しても、近年のデスゲーム漫画ではかなりの良作だったと思います。

ナイスレビュー: 2

[投稿:2016-05-24 20:11:45] [修正:2016-05-24 20:11:45] [このレビューのURL]

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