「中華三振」さんのページ

総レビュー数: 9レビュー(全て表示) 最終投稿: 2010年09月10日

この作品はよく、同様に子供の無邪気な日常生活を扱った「よつばと!」と比較される部分があります。
確かに同じ年頃の、ちょっと変わった子供の日常を描いているという点だけみると同じように聞こえるのですが
2作品を読み比べてみると分かると思いますが、決定的に違う場所があります。
それは『誰の視点で話を描いてるか』ということです。

よつばと!の場合は、主人公のよつばにフォーカスしつつも、基本は周りの大人や友人等の、客観的視点から見たよつばの行動が描かれています。
一方、この作品では主人公のリューシカ自身から世界を見た、主観的視点で描かれることが多いです。

上の二つの違いを、ちょっと自分の子供時代の体験談で例えてみます。
子供のころ親と電車に乗っていたとき、自分の電車が停車しているすぐ横のホームから電車が発進したとき、親に「(ホーム側を指して)こっちの窓は止まってるのに、反対側(発進中の電車が見える方)は発進してる!どうして!?列車が分裂してるの?」と真剣に尋ねたらしいです。親は最初、何を言ってるのか理解できなかったそうですが、自分の言わんとしてることを理解して大爆笑したとか。
大人にとっては当たり前の常識が、子供の知識の上ではまだ理解できなかったんですね。

つまり、上の例でいう「子供時代の自分が、窓からの眺めだけで自分の列車が走っている」と思い込んでる部分が、『リューシカ・リューシカ』で用いられる視点。それを聞いて親が?と疑問に思ったり、話を聞いてツッコミをいれるのが『よつばと!』でよく用いられる視点です。

ですので、どちらの話が面白いか、ということではなく、『よつばと!』が楽しめる方ならば『リューシカ・リューシカ』も楽しめると思います。2つの視点両方から見るというのもなかなか面白いです。


それと、実はこの漫画、全ページフルカラーです。昨今フルカラーの漫画は非常に珍しいです。これだけのフルカラーで上質な紙を用いた印刷物を650円で出してしまうというのですから・・・非常にお買い得でもあると思います。
美術的な観点からみてもお勧めの一冊です。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2010-09-12 18:13:55] [修正:2010-09-14 19:13:16] [このレビューのURL]

この先生のデビューの読みきり作品「機動剣士 ガンボーグVZ」を読んで、そのコロコロ離れした凄まじい描きこみっぷりに感激し、以降の「電人ファウスト」等も読んでいました。が、一つ上の兄貴や、周りの友人の上山先生に対する評価はイマイチ・・・どうも自分の好みは渋かったのかもしれません。
(ちなみに、同時期にコロコロに連載していた上山道郎先生の実弟だと知ったのは最近になってからでした)


そして先生の最後の小学誌連載となる「LAMPO」
ジェファン神国や神国ロボット、登場する兵器のリアリティに感激を覚えました。
そしてド派手で恒例のコロコロ離れをした演出。
読んだことある方なら分かると思いますが、第1話冒頭の主人公ランポがサメを釣るシーン(掲載時はたしかここででっかく作品タイトルが出たと思います)の”掴み”を見た時の興奮は今も忘れることができません。

私以外にLAMPOのレビューをされてる方、同様。自分も連載中にコロコロは卒業してしまい、途中以降のストーリーは知らないまま最近まで過してきました。
そして、ネットでふとコロコロ談義がされている掲示板にてLAMPOの話が出たとき、どうしても読み直したくなったので、オークションにて少々値が張りましたがなんとか購入。

歳を経て、落ち着いた視点で読み直してまず思ったのが「小学誌には勿体無い!!」
プロットもそうですが、背景の描きこみっぷりが半端ないレベルです。青年誌でもここまで描き込む&描き込める漫画化はそうそういないです。背景の線の細かさなど、芸術レベルに達してます。
ストーリーも、あまり時間を与えてもらえず、後半の駆け足展開っぷりが非常にもったいなかったですが、それは当時の雑誌からこの漫画に向けられていた視線を考えるとやむ終えなかったのかな・・・と。
もっと長く連載していれば、あるいはもっと違った結果だったかもしれません。
(その点だけがどうしても響くので、今回は7点とさせて頂きます。心情的には9点くらい与えたいのですが)

とにかく、背景が書き込まれてる漫画が好きな人には絶対お勧めです。
小さい頃読んでいて、続きが気になるなという方にもお勧めです。
まったく読んだことがないという方は、そこそこの値段で手に入れる幸運があれば(古書店で安くあったとか)是非お勧めします。
残念ながら現在絶版漫画のため、入手が難しいことだけが玉に傷ですね。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2010-09-12 18:35:22] [修正:2010-09-12 18:36:43] [このレビューのURL]

7点 自殺島

ホーリーランドの森恒二先生の新作。
ホーリーランド内にて語られているように、作者は現実で過去に一度ひどい挫折を味わい、そこから這い上がってきた先生の作品だけあり、前作に引き続き(前作以上に)生きる事に絶望を感じている主人公が、徐々に生きる意味を見出していく描写が印象的です。

ストーリーとしては、現在出ている3巻まででいうと、さいとうたかお先生の「サバイバル」や、本宮ひろし先生の「まだ生きてる」のように、とにかく”生きる”ということを主軸に持ってきているサバイバル物です。
ただ、登場人物達が通常のサバイバル物の漫画とは一線を画しているのがこの漫画の特徴です。

また、作中内に「南国の島で水もあり人が住んでいた形跡もあり、妙に”人が生きる”環境が整い過ぎている気がする」や「かつてこの島は無法島と呼ばれる流刑の島だった」等
節々に自殺島の存在そのものについての伏線的な描写が見え隠れします。

後半のストーリーは、「バトルロワイヤル」のような人間同士の争いと、島からの脱出がテーマになってくるのではないでしょうか。
特にこの手のサバイバル物は落としどころや終わり方が難しいだけに、存在自体が謎である自殺島という存在は
終わりに向けての絶好の伏線となるかもしれません。
今後もますます期待が持てます。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2010-09-10 21:11:29] [修正:2010-09-10 21:12:30] [このレビューのURL]

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