「ぷたりう」さんのページ

総レビュー数: 7レビュー(全て表示) 最終投稿: 2007年10月14日

すごい!ジャンプ系マンガはあまり読んだことがなく、読んでもレビューを書きたいと思ったことはなかったけど、これにはやられた。
ヒカルの個人的な成長物語が、囲碁という文化そのもの、つまり、一人一人が真剣に取り組むことで次世代を継承する歴史的営みのなかに上手く埋め込まれていて感動的でした。
それに、マンガとしての読みやすさ、キャラのかわいさ、おもしろさ。
とにかく、登場人物全員がサイを筆頭にすべて勝負に対して真剣で誇り高く善人!すばらしい!悩み苦しみながらみんな一生懸命。ぜひぜひ、子どもに読ませたいPTA推奨マンガですね。
っていうと、なんかバカにしているようですが、本当に今まで読まなかったことが悔やまれる深いテーマを持った作品だと思います。
誰かも書いていたけど、これはほんとに囲碁の世界の文化的背景をよく理解している「大人」でないと書けない内容なんでしょうね。
こういう作品を読むことで子どもがまっとうな大人の世界に誘われて欲しいと老婆心ながら思ってしまう。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2009-07-16 14:39:08] [修正:2009-07-16 14:56:30] [このレビューのURL]

不朽の名作。

これだけ繊細なペン使いで繊細なストーリーを描ける人が今いたら教えて欲しい。これは反語ではなく,ほんとに生きているうちにもう一度これだけの作品に出会いたいと感じる。作者本人でさえ,作風が変わってしまった今,この世界を再度表現することは不可能。奇跡のような作品だと思う。

この作品には「さとう菓子」ということばがぴったりの甘いファンタジーの世界と,永遠のこどもでありながら,永遠の時を生きる運命を与えられた主人公たちの過酷さと喪失感が同居していて,なんて名前をつけていいかわからない感覚におそわれます。

また,時を超えて生きる彼らと絡む「人間」のストーリーが時代を前後しつつ描かれていますが,その描写はヒューマニスティックで軽い話も重い話も残ります。作者の人間やその歴史に対する深い造詣と愛情を感じる。しかし,説教くさいところはみじんもないクールな作品です。ちょっとほめすぎですかね。


ナイスレビュー: 1

[投稿:2007-12-03 12:40:20] [修正:2007-12-03 12:40:20] [このレビューのURL]

[ネタバレあり]

神懸かり的におもしろい作品。
頭の中がしばらく飛鳥時代になる。
この時代の政治的な緊張感もよく描けているのでストーリーも楽しめるが,オカルトと同性愛的要素も入っているので,そういうものに嫌悪感がある人はだめかも。だが,本来はそれも含めてはじめて全体的にまとまりのある独特の世界観に仕上がっていると思う。

個人的にはうまやどの生い立ちや母へのアンビバレントな感情など,人間ドラマとして非常に完成度が高いと思う。それを直接表現するのではなく,ちょっとしたセリフやエピソードで描いているのがうまいっ!と感じる。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2007-12-03 12:06:42] [修正:2007-12-03 12:06:42] [このレビューのURL]

心理学的な部分の説明や描写がいかにも説明くさいし,その中身も浅くわかりやすすぎ。頭で理解しないといけない作品。感覚的な余韻を残すのが彼女の作品の良さなのにそういう部分がなかった。他の作品にもっと彼女のすごさを発揮している作品がたくさんあるように思える。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2007-12-03 11:50:16] [修正:2007-12-03 11:50:16] [このレビューのURL]

6点 PLUTO

この作者の作品は他に20世紀少年しか読んでいないが,独特の空気感がかっこよい。お話しの進め方はとっても似ている印象。とにかく謎をちりばめて,こっちの期待を高まらせる。映画見てるみたい。今度はうまく収集つけてほしい。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2007-12-03 11:24:49] [修正:2007-12-03 11:24:49] [このレビューのURL]

9点 リアル

[ネタバレあり]

スラムダンクやバガボンドで今イチ井上雄彦にのれなかった自分がはまっています。

このマンガを読むと「強い」ということがいかに脆く移ろいやすいものなのか,考えさせられます。学校では強者だった高橋や清春の精神的なヒーローだったヤマの変化・・・。それでも彼らは目の前に刻々と迫る「リアル」と戦わざるを得ないのです。
そういう意味では弱さを自覚したところから始まっている野宮は一番強いかもしれない。もともと持っている精神的なタフさも含めて大好きなキャラです。

個人的には高橋の今後が気になります。「バスケがしたいです・・」みたいに,自分をさらけ出して変われたら楽なんだろうけど・・・。けど,高橋には高橋なりの人生の解釈でまだまだ暗く戦ってもらいたいかも。あの家庭環境であの母親のもとで培われた仮面は引っぺがすのに相当苦労すると思う。というより,その仮面はもう彼の人格の一部。人はそう簡単には変われない。その変われない自分を抱えて苦しむのもリアル。

ペースが遅いのは作者がそれだけしっかり考えて物語を作っていると解釈しています。ハイペースで書くことでこの濃さが薄まったらそれこそ残念だと思います。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2007-12-03 10:56:59] [修正:2007-12-03 10:56:59] [このレビューのURL]

[ネタバレあり]

この作品は「ヒミズ」とセットで読むべき作品だと思う。

この作者は「どのように自分という“理由なき”存在を引き受けるか」という問いをテーマにしているようにみえる。
初期のギャグ作品にもかいま見られるこのテーマは,青年期に一番鋭く問題化されるが,基本的には生涯続く問いであろう。

そのテーマをかなりはっきり提示したのが「ヒミズ」と「シガテラ」。主人公の家庭環境はまったく正反対であり,結末がその生い立ちに起因するかのように明暗を分けているのが気になるが,2人ともここではないあちら側の世界にジャンプできるか,落ちるかという危うい状態の中で葛藤している点は共通。白黒はっきりした場所に身をおけない,つねに決定的なリスクと隣り合わせの現代に生きる若者の不安や所在なさを描いている。

しかし,これらのテーマは今まさに「青春ど真ん中」にいる人には伝わりにくいかもしれない。現代に生きる30歳以上の人ならば,これら一連の作品を客観的に読むことができ,より共感できるのではないか。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2007-10-14 11:40:38] [修正:2007-10-14 11:40:38] [このレビューのURL]