「右から左へ。」さんのページ


読んでいて安定感を感じる漫画。

他のレビュアーの述べるとおり、ロボットによる戦闘がメインの漫画ではなく、むしろ話の中心は、隊員たちのごく普通の日常であり、それらが軽やかに描かれている。

話は和やかな感じに進んでいく。だが、扱っているテーマには掲載当時、そして現在でも問題とされている、バイオ技術の危険性や人身売買、高度な機械の持つ安全性への疑念という事柄も要素として組み込まれており、それを取り巻く相手と主人公たちの心理戦、戦闘も魅力のひとつである。

安定感を感じたのは、そのような話のシリアスな部分と和やかな日常が見事に描き分けられていること。そして、表現においても登場人物の心情がわかりやすいように、情景描写が工夫されていて、少年誌という掲載された媒体への配慮が感じられたからである。

安定感がある漫画ということは、穿った見方をするならば、予想のつかない展開になりづらいという欠点も孕んでいる。話は勧善懲悪ものであり、展開が予想しやすい。また、飛びぬけて驚くような相手も出てこないし、戦闘も激しい射撃戦が繰り広げられるわけでもない。題名を見て買った人は拍子抜けするかもしれない。

上述のように派手さはない。だが、評価したいのは使い古された題材を中心に、よくこれだけ全体としてまとめたな、ということ。進退きわまって、能力がインフレ的に上昇するだけで登場人物の成長が見られない漫画、伏線の説明的描写に終始する傾向の強い漫画を読んだ後にこの漫画を読めば、ゆうきまさみの魅力に気がつくことができるだろう。

夢中になって読みふけることはないものの、使い古された題材をテーマにうまくまとめたこの漫画、ただの良質な漫画ではないため、7点の評価とした。

ナイスレビュー: 2

[投稿:2008-10-11 22:57:48] [修正:2008-10-12 11:52:50]