「右から左へ。」さんのページ


ソクラテスの話がいいという評判が気になったので読んでみた。

なるほど、興味深い。

人間の嫌な部分といい部分、人間の複雑な性質が、色々な話の中に織り込まれるようにして描かれている。オペラを観た後のような感じ。オペラ同様、少し演出が大袈裟であるため、不自然に感じる人もいるとは思うが、壮大なテーマをこれだけ正面から描く漫画、そして話にうまくオチをつけることができている漫画はそうそうない。

一種の哲学書となりうる。人間の本質とは何かが描かれているのは前述のとおりであり、また日常生活を送ってふと疑問を感じたときに読み返して、「あぁ、そうだなぁ。」と感じることができるからだ。読後に思索にふけることができるほど、話が深いのである。一話完結でありながら、深い人間描写。作者の技量が試されたソクラテスの話に限らず、全体としてそのような雰囲気が流れている。しかも、説教臭さが出ないような配慮が感じられた。

絵はやや少女漫画のようであり、好き嫌いが分かれると思うが、是非読んでもらいたい作品。特に、思春期をすぎて青年となる人や、大人の人は楽しめると思う。適度なエンターテイメント性を備えた、考えさせられる漫画。ふーん、で流さずに、自分の身に当てはめて味わってほしい。何回も読むことができることに加えて、人によっては物事の考え方が変わったりするほどの力をもった作品。9点。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2008-10-16 06:50:18] [修正:2008-10-24 15:21:50]