「nur_wer_die_sehnsucht」さんのページ

[ネタバレあり]

荒木というのは、初期の頃から読んで行くと分かるわけだけど、人間の深さというものに非常に興味を持っている男なんだよな。
今時の感覚ではないんだよ。昔の人間が持っていた名誉心とか誇りというものに価値を置いているわけ。初代ジョジョは貴族の子弟だったじゃない。だから他のマンガとは一線を画するんだよな。
私は『ジョジョ』シリーズでは、「ゴールド・エクスペリエンス」の第5部か。あれが頂点だと思うな。マフィアという最底辺の人間存在を主人公とし、人間の最も崇高な何かを描こうとしているよ。

何が崇高なのかと言えば、それは「命懸け」ということなんだよ。ただ優れた能力を持っているとか、そいういう事ではないの。どんな存在であっても、命懸けで何事かをやることに「崇高」があるわけよ。
その命懸けの行為こそが古今東西のノブレス・オブリージュや帝王学の要諦であり、歴史上の偉人たちの共通点なんだから。
そこに人間存在の意義があるわけだから、それを「人間賛歌」と呼んでいるんだな。
その「崇高」を際立たせるために、反対概念としての卑しさもちゃんと描いているんだよ。また色んな価値観に生きる人間を次々と登場させているよな。
よく観れば、みんな一本通っている人物が多いことに気付くよ。それが大事なんだよ。
あの吉良だって一本通っている部分があるわけ。だから読者にも人気があって、死んだ後も活躍してるじゃない。チョコラータなんかもそうだよなぁ(笑)。

知的な攻防で魅せる部分も多々あるけど、本質はそこではないのな。善悪を超えた人間の意義と生命の躍動があるんだよ、あの作品には。
敵であっても何か感心するものがあると、物語は深くなるんだよ。
ダービー兄なんて、もうド変態でいいよなぁ。深さを求めれば、キャラも立つんだよな。
変態って、美学に通ずるものが多いんだよ。

「ジョジョ立ち」って誰かが気付いたわけだけど、あれは変態のポーズだからな。
要は自分の美学のみに生きる者の存在の姿になっているわけ。
でも町中でやってればただの「変態」なんだよ(笑)。

ナイスレビュー: 2

[投稿:2018-08-10 11:30:36] [修正:2019-04-06 20:06:30]