この漫画のレビュー
10点 佐々木裕健さん
レズ、百合というジャンルは閉鎖的な作品が多い。
「同性愛者がマイノリティに属している」「まだまだ社会に受け入れられる価値観になっていない」という事実、現実的な問題をバッサリ切り落とし、背徳的な快楽、二人だけの閉じた幸福というおいしいところだけを表現する、現実逃避的な作品ばかりである。
したがって、そういう世界観を無条件で楽しめる人、好きな人、はまり込んでいる人以外の人にもお勧めできる作品はほとんど存在しない。
『青い花』はその唯一(に近い)の例外である。
友達に同性愛を告白する際「気持ち悪いと思わないで。」と泣き崩れるシーンは、ただの百合もので終わらないという作者の姿勢の象徴とも言える。
もちろん、ただ厳しい現実を描いたからすばらしいというのではない。
登場人物一人一人の丁寧かつリアルな描写、幸福も不幸も全てをやさしく包み込む世界は、極めて上質なエンターテイメントである。美化しているところも含めて。
ナイスレビュー: 1 票
[投稿:2007-06-12 15:15:29] [修正:2007-06-12 15:15:29]