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7.44点(レビュー数:9人)

作者松本次郎

巻数12巻 (完結)

連載誌月刊IKKI:2001年~ / 小学館

更新時刻 2010-04-03 01:12:58

あらすじ 混乱の日本では敵討ち法があり、
動物の行う擬態のような能力を持つ叶ヒロシはひとつの職業となった敵討ちを代理で行う執行代理人になり、
理想と現実のあいだに苦しむ山田、
身を守るためのはずの擬態能力を持ちながら敵討ちをする叶にに危機感と苛立ちを持ち殺そうと考える溝口らと共に敵討ちを執行していく。

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フリージアのレビュー

点数別:
1件~ 5件を表示/全9 件

8点 SEVONEさん

松本次郎の作品はあまり好きではないのですが、この作品は名作だと思います。
話は非常に難解ですが、筋は通っていて論理的です。
絵については、表紙や扉絵は味があってとても好きなのですが、普段は線が多く少し雑で読みづらい絵柄です。12巻で非常に象徴的にフリージアの花が出てくるのですが、それまでに出てきた他の花との違いがわからないくらいです。こころなしか後半に行くほど雑になってる気がしました。ですが、慣れてしまえばそれほど気になりません。
登場人物がとても魅力的です。特に主人公は少し頭のおかしい人物なのですが、それにもかかわらず感情移入できてしまう程に人格が作りこまれています。
全体としてはとても素晴らしい漫画だと思います。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2012-03-02 22:23:37] [修正:2012-03-02 22:24:15] [このレビューのURL]

8点 あおはなさん

どうも結構この作品も難解なのでしょうか?
松本次郎先生の作品の中ではかなり理解しやすい部類には入るはずなんですが、やはり単なる「小ネタ」を織り交ぜた雰囲気漫画と捉えられる傾向があるような・・・

とはいってもこの作品は「シマウマ」の話を前面に出している段階でかなり先生の作品では分かりやすい部類です。

シマウマ=擬態。叶くんをシマウマと表現する溝口の会話。
意思の効力(功罪か?)そしてラストシーンへ繋がるあの流れ。
よく読むとちゃんと繋がっているんですが、なんか難しい。

このアタリが楽しめるかどうか?コレ次第では本作はDQNの愉快な殺し合いとウッシー小山とミータの小ネタ劇場で終わるかもしれませんが。

意思がない=感情の振幅がない=目立ちにくい=擬態しやすい。そして意思を持つことは擬態が・・しにくい。敵討ち戦で様々な人間に疑問を持つ叶が最後は・・・そして・・普通と思っている事柄が異常で異常と認識されていることが意外とそうではないのかも?という循環。この漫画の妙味なのかでしょうか?

ナイスレビュー: 0

[投稿:2010-11-04 20:27:45] [修正:2011-02-02 19:30:30] [このレビューのURL]

7点 weskerさん

絵が怖い。この絵ならホラー漫画にもなるのではないでしょうか?
読んだその日悪夢を見たぐらいです。
自分が怖いというのは作者の描く町の雰囲気、人、物までも、なんだか全てが陰湿なのです。
正直読み始めは気分が悪くなって一回読むのを断念したのですが、少し間を置いて再開してみるとそのままどっぷり作者の描く世界に引き込まれてしまいましたw
町の雰囲気、グロも読んでいるうちに段々味があるように思えてきます。
人というのも最初はとても自分には理解できないような狂った人々(主人公は特にそうです)ばかりなように思えるのですが、読んでいるうちに何故か違和感がなくなります。
人を選ぶ作品であることは確かですが、エンターテイメント作品として十分に読めると思います。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2010-06-13 23:58:25] [修正:2010-11-18 01:52:38] [このレビューのURL]

8点 limolimoさん

読む人によってだいぶ受け取り方が変わりそうな漫画だと思う。
とにかく狂った人のオンパレード。まず主人公が最初からもういっちゃってるのである。同僚も狩る側と主張しドメスティックだし、まともっぽい山田は最後にはもう顔付きがまったく変わってしまっている。敵討ちされる方は犯罪者なのになぜか被害者にも見えてくるカオス。とにかくカオスな漫画だ。
これだけおかしな登場人物ばっかりでグロい漫画なのに、あまり嫌悪感が個人的にはなかった。人間の表面的な部分があまりない漫画なので、ある意味潔い黒い漫画だ。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2010-09-17 23:31:29] [修正:2010-09-17 23:31:29] [このレビューのURL]

7点 B・Aさん

『共感できる狂気』

松本次郎というマンガ家をこのマンガで初めて知ったのですが、随分と驚いた記憶があります。またとんでもない人が出てきたな、と。
こんな感じで驚いたマンガ家さんてこの人以来いないんじゃないか。そう思うくらい稀有な作家性を持っていると思います。

『敵討ち法』という非現実的な設定を使って色んな人間の想いが交錯していく、ある意味SF的な物語なんですが、そこに描かれている人間のほとんどが人間的に欠落している。というか、狂人なんですね簡単に言えば。それがすごい。

だれもが狂っている。それがどれほどすごいことなのか。
まず、誰も公正な視点で物事を語れないわけです。すべての人間の物差しが狂っているから、それぞれが同じ物事を見ても全くちがう感情を持ってしまう。するとマンガを読んでいる人にとっては、だれに共感してよいものなのか分からなくなってしまうんです。

本来なら、主人公がその役目を果たさなければいけないところですが、あろうことか主人公の叶ヒロシが一番ぶっとんでしまってます(笑)。そのお目付け役であるヒグチは、そのヒロシですら頭を抱え込んでしまうほどの難敵ですし、唯一このお話の良心的な部分を担っている山田くんは“ある意味”一番ふさわしくない人物だったりします。

山田君。実はこの人が一番キーマンなのではないかと思うのです(事実、物語もヒロシと山田君がラストを締めくくります)。
一見考えていることもマトモで、この物語で唯一の普通の人のように見えます。けれど果たして本当にそうなのでしょうか。
彼は自分の正義を貫くために執行人となります。その為に彼女と別れて自分の志をまっとうしようともがきます。「こういう仕事を叶さんや溝口のような人間にやらせる訳にはいかない。僕のようなちゃんとした人間が責任をもってやり遂げなければ」と奮闘するわけです。

もうその時点で狂っている訳です。やっていることは人殺しな訳ですから。読んでいる人にとっては唯一話がまともに出来る人間だから騙されてしまうわけですが(笑)、彼の言っていることは「敵討ちって必要だよね。」って言っているんです。それが正しいわけがない。


誰もマトモな語り部がいない(というかマトモな人間がいないw)この作品は、では成立していないのか。

それが成立しているから、すごいと思うんです。

なぜ成立しているのか。言い換えると『なぜ面白いのか』。それは語っている内容が『敵討ち法がどうなのか』とか『殺される側の事情』とかではなく(もちろんそこもちゃんと描写されてはいるんですが)、最後まで『狂気』を扱っていたからだと思います。

それも他人が持っている狂気ではなく、身の内にある狂気です。

少なくても僕は、ここに描かれている狂気を多少は理解出来ます。多くの人にとってもそうなのではないでしょうか。
もちろんその経験があるというわけではありません。人には見えない友人を持っている訳ではありませんし、彼女に胃が破裂するほどスパゲティを食べさせたいとも思っていません(笑)。

けれどそこにある『いらだち』は共感できるのです。狂気におちいる一歩手前のいらだち。

自分の事を本当には分かって貰えないいらだち。人の事が許せないいらだち。自分の正しいと思っていることが認めてもらえないいらだち…。ここに描かれている全ての人間が持っている、『狂気の中に含まれているいらだち』はとても共感出来るのです。

少なくてもヒロシの狂気は理解できなくても山田君のいらだちは共感できるのではないでしょうか。


あるいはもっというと、世の中普通の人なんてほとんどいないんじゃないかとも思うのです。誰もが心の暗いところに小さな狂気を抱き続けている。もちろん面には出さないけども、それは確かに存在してる。

このマンガはそういう部分を照らし出した珍しいマンガだと思います。だからこそ、強く惹かれてしまうのです。まるで覗いてはいけない穴の中を好奇心を抑えきれずに覗き込んでしまうように。


作者、松本次郎は短編もいくつか出しており、それらもいい意味でぶっとんでおります。




ちなみに7点なのは個人的な採点方式のため。
正確には『個人的にはとても好きだけど、万人におすすめ出来る作品ではなく、人によっては大きく好き嫌いが出る作品。』という意味での7点です。

自分がレビューする作品は個人的には大体満点です(笑)。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2010-06-06 06:57:21] [修正:2010-06-06 06:59:59] [このレビューのURL]

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