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6.5点(レビュー数:4人)

作者丸尾末広

原作江戸川乱歩

巻数1巻 (完結)

連載誌コミックビーム:2009年~ / エンターブレイン

更新時刻 2010-03-08 01:10:42

あらすじ 両手両足・声帯・聴覚といった、五体の機能をほぼ失った傷痍軍人の夫・須永中尉とその妻・時子。
介護の日々を送る中で、夫を虐げる事に快楽を得るようになった時子。夫は何をされても無抵抗であり、またその醜い姿と五体満足な己の対比を否応にも感ぜられ、彼女の嗜虐心は尚更高ぶるのだった。
ある時、時子は夫が唯一持ちうる外部との接続器官である眼が、余りにも純粋であることに恐れと苛立ちを覚え、そして・・・

淫靡と戦慄に満ちた、愛欲の夫婦像!!

備考 丸尾末広による乱歩作品の漫画化第二段。
ほぼ原作通りではあるが、一部原作に無い場面が盛り込まれている。

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芋虫のレビュー

点数別:
1件~ 4件を表示/全4 件

6点 booさん

これが私の初丸尾末広作品。
パノラマ島奇譚はそこまで好きな作品ではないので興味はありつつも未読。芋虫は人間椅子と並んで私のお気に入りの乱歩短編なのでこれは読むしかないと購入してみた。

確かに乱歩と丸尾末広のゴールデンコンビの魅力は存分に感じることが出来た。多分これ以上はないだろう。しかし、そもそも映像化する意義があるのかというと少し迷ってしまう所で…。
乱歩の文章というのはかなり映像的なので頭の中でイメージするのはわりと容易なわけです。ある程度自分の中でイメージがあるものを実際に漫画で見た時にそこまで衝撃があったかというとそうでもなくて、さらに自分の中にあったイメージが丸尾末広版芋虫に侵食されてしまったようで何となく悲しい。

漫画の方を読んで思ったのは、私は乱歩の作品に関しては自分の中でイメージすること自体に楽しみを感じているということ。漫画で読むとそのイメージが固定化されてしまうので、そういう意味では気に入っている芋虫よりそこまででもないパノラマ島奇譚を読んだ方が楽しめたのかな。

丸尾末広は乱歩作品を漫画化するにおいて最適ということは認める。しかし私にとって芋虫の漫画化は楽しめもしたが失ったしまったものも大きかったと言えるかもしれない。まあとりあえずパノラマ島奇譚も読みますわ。
原作未読の人が読んだらどう感じるんだろうね。ぜひ誰かレビューを書いて欲しいです。

友人にこれを見られてしまった時に、「お前大丈夫か?」、とまじな顔をされたのはいい思い出。皆さんもご注意を笑。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-09-25 17:21:07] [修正:2011-09-26 00:36:15] [このレビューのURL]

6点 s-fateさん

前作「パノラマ島奇譚」に比べると、一冊のマンガとして読み応えがない、夢中になるまでに至らなかったので−1点で6点とします。丸尾さんには是非その他の江戸川乱歩の猟奇系作品も漫画化してほしいとは思いますが、これ一話で一冊はないんじゃないでしょうか。待ちますから一冊のボリュームとして充分な話数を描きためてから出版してほしいです。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2010-05-05 18:55:54] [修正:2010-05-05 18:55:54] [このレビューのURL]

7点 景清さん

 原作:江戸川乱歩、作画&脚色:丸尾末広。前作「パノラマ島綺譚」に続く至高にして(悪)夢のコラポレーション第2弾である。前作が手塚治虫文化省を受賞するなど反響も大きく完成度も高かったので、大きな期待と安心感を持って本作には接することができた。

 まず一つ言えるのは、本作「芋虫」は前作「パノラマ島」よりもはるかに丸尾末広の持ち味…大正昭和風味の残虐猟奇趣味が発揮できているという点だ。おそらく昔からの熱心な丸尾ファンには「芋虫」の方が肌に合うと思われる。
 物語の舞台は大正期の軍国時代の日本。大正というと「サクラ大戦」や「大正野球娘」のような華やかなイメージの作品が多いが、一方本作はというと…。戦場で四肢と言葉を失い物言わぬ肉塊となった軍人とそれを看護する妻。あてがわれた屋敷の離れを舞台に、世間的には「名誉の軍人」と「夫に尽くす良妻」である二人の、その実いびつで倒錯した愛憎模様が描かれる。もうこの舞台設定からして丸尾末広のためにあるような作品といえる。モダンと華やかさの影に咲く、腐臭を放つ奇形花の妖気。

 まさに水を得た魚、羽を得た芋虫のように丸尾末広はこちらの期待に応えるべく素晴らしい仕事振りを発揮している。短編である原作を肉付けするために様々な小話も盛り込まれ、浅草十二階や仁丹の絵看板などの小道具にも気が配られている。
 何より圧巻なのはやはり悪夢のように淫靡な”夫婦生活”のシーンで、奇形の芋虫とそれを弄びまた弄ばれる中年女の濃厚な絡みから、丸尾末広言うところの「前近代的湿潤」、日本的なじめっと湿度のある狂気がページを通り越して読者の顔面にこびりついてくるような錯覚すら覚えさせる。体液や汚物のすえた匂いまで立ち上って来そうなその描写力は凄まじく、特に第2話後半で憔悴しきった妻がさいなまれる悪夢のシーン(奇形、死体、毒虫、男性器などのおぞましいイメージの集積)を見た日には…。これぞ江戸川乱歩、これぞ丸尾末広であろう。

 が、本作を丸尾末広や江戸川乱歩ファン以外の読者に広く勧められるかというと、なかなかそうも言い切れないのが歯がゆい。前作「パノラマ島」と比べてもエログロ描写が上記のとおり段違いに上がっているため、耐性のない人に見せたら人間性を疑われることになるだろう。
 江戸川x丸尾のコラボをもっと読みたい自分としては本作も商業的に成功して欲しいと思っているが、文庫版で30ページに満たぬ原作を4話構成にまでカルピスのように水増し・過剰装飾した印象はぬぐえず、それがハードカバー1200円(税抜)というのもやや疑問が残るところである。これであれば、例えば芋虫以外にも手ごろな江戸川乱歩の短編を漫画化して単行本に収めてくれた方が良かったと思う。

 何より残念だったのは、これは別に誰が悪いのでも無いが、既に「パノラマ島綺譚」で江戸川乱歩x丸尾末広という究極のタッグの完成を目撃してしまっていた為、本作を読んだ時も信頼感に似た安心を覚えこそすれ、前作を書店で偶然発見した時ほどの衝撃を受けることは無かった。今後もこのコラボは続けて欲しいと心から願うが(個人的には「蟲」とかを是非)、初見の悪夢を上回る悪夢を生み出すハードルはどんどん高くなっていくのだろう。夜の夢のごと、まことに歯がゆい。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2010-03-22 14:43:51] [修正:2010-03-23 23:14:53] [このレビューのURL]

7点 蛸発光さん

懊悩による幻覚のビジュアル化は圧倒的だし、エログロ描写も十二分
と概ね満足ですが、原作を先に読んでいる為か、展開が少し性急に感じた。
夫に対する心境の変化を、もう少し掘り下げて描いてほしかった(そこには重点を置いていないのかもしれませんが・・・)

それにしても、バナナのやり取りは凄い。焦らす妻、狂喜し躍動する夫・・・これは笑って良い場面なのかな?

ナイスレビュー: 0

[投稿:2010-03-13 05:30:48] [修正:2010-03-13 05:30:48] [このレビューのURL]


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