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6.75点(レビュー数:4人)

作者鬼頭莫宏

巻数5巻 (完結)

連載誌good!アフタヌーン:2009年~ / 講談社

更新時刻 2011-01-08 22:28:12

あらすじ 少年・日比野光は中3の春、転校生・一社との出会いで特殊な能力を開花させる。世間からは「犯罪」と呼ばれる行為に手を染めながら、少年たちは「ぼくらの思う正義」に向かって「力」を行使する。

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なにかもちがってますかのレビュー

点数別:
1件~ 3件を表示/全3 件

10点 朔太さん

結論を先に言えば、素晴らしい衝撃を受けました。
描画力は相変わらず、髪型でしか人物をかき分ける
ことができない不出来さがあるのですが、
それを上回る魅力を感じました。

「ぼくらの」でも小さな超能力を持つ少年少女の登場が
ありましたが、同じような面白さを感じます。
本作品でも小さな超能力を大きく振りかざすことなく、
どんどん先読みを促してくれます。
5巻全巻を読むのを途中で止められなくなり、
あっという間に読んでしましました。

本作品の最大の魅力は、社会正義の在り方への考察を
一社高蔵に語らせるクダリです。
主人公日比野はあくまでも標準的日本人の代表者のような
ノンポリなんですね。
主人公相手に徹底的に馬鹿扱いします。
共感した一社の言葉を下記に列挙します。

・学校の勉強は、役に立たないという奴がいるけど、
根本的に間違っている。
課題を与えられた時の適応能力を見ているのだ。
学校でダメだった奴のその後の人生は破綻する確率が高い。
・バカでもテレビに出て楽しくやっていけるという
作られた幻想が世の中のバカをさらにバカにして
つけあがらせていく。
それを作っている奴らもそこまで責任を持たない。
・日本の裁判の方向性が間違っている。
計画性がある方が罪が大きくなる。
出来心で犯す無自覚な人間の方が、生かしておくと
また社会に害を与えるのに。
・人を殺してはいけない絶対的な理由なんてない。
一番の理由は、もっと利己的なものだ。
私はあなたを殺しません。
だから、あなたも私を殺さないでください、という
社会としての契約である。
それを全員が守っている間は全員が安全である。
だから、そのルールを破った人間は自分が殺されても
良いと表明したわけである。
つまり人権を侵した人間に人権は必要ない。
・人間の刑罰判定には点数制を導入すべきである。
生まれながらに持っている例えば100点という点数を
罪を犯すたびに減点していく。
ゼロになれば死刑とする。
そうすると再犯率は間違いなく低下する。
・精神衰弱や精神障害という責任能力の有無が問題になる。
責任を取る能力のない人間が社会生活を営んでいる。
そういう人間なら差別や区別をされるべきであろう。
本来は犯した罪の内容のみで量刑が語られるべきである。
・異常か正常かの二元的に語られるが、自分は正常だが
自分にもおかしなところがあると考えるべきである。
でもバカな奴ほど自分は正しくて未来永劫間違える
ことはないと考える。
・バカは大概携帯電話が大好きな傾向にあるが、
そのくせそういう奴らは数学なんてキライだの、
何の役に立つかわからないだのと言う。
彼らは科学の発展を抑制する

特に、犯罪の点数制は、作者の鬼頭さんが
「点数制、悪くないと思うんですがねえ」と
言っているぐらいに強く主張しているのです。

タイトルも良くできています。
「間違っていますか」というべきところを
「もちがっていますか」と言うことで、
一見正義のように見えることの不正確さを表現できており、
素晴らしい。

全体としては、SF仕立ての展開に社会学、倫理学を持ち込んで、
漫画とは思えない重厚な問題提議をしてくれました。
高次元の知識欲を掻き立てる面白さにすっかり魅了されました。
全力でお勧めいたします。

ナイスレビュー: 2

[投稿:2020-10-14 18:09:07] [修正:2020-10-14 18:09:07] [このレビューのURL]

2点 ジブリ好き!さん

少年二人、片や頭脳役、片や能力者で、静かに世直しを始める…

この作品のすぐ後(ほぼ同時期)に『ホーリーランド』『自殺島』の森恒二先生がYJで『デストロイ アンド レボリューション』というほぼ同テーマ・同内容の作品を連載している。
両者の革命論の比較も、見所の一つだろう。
なにせ両者の過去作と人生経験は大分異なるのだ。
どちらもマイナスオーラ漂う話の作品が多いが、森さんは早めに明るい雰囲気を織り交ぜて展開していく一方、鬼頭さんはずるずると負のオーラを引きずって展開していく傾向がある。
また生い立ちに関して言えば、森さんは本当に荒れた波乱万丈の人生、鬼頭さんも社会経験豊富な遅咲きの苦労人。両者とも作中で自身の意見・思想をバリバリ描いちゃうので、いやでも地が出る展開になっていくだろう。


(3巻時点追記)

「ジャンプSQ.」で「なるたるの一部を先鋭化した感じの作品で、いっぱい人が死にます」と述べていたが、思考だけがクローズアップされすぎてて物語がついてきてない。
冗長な描写も多く、過去作に比べてテンポが悪すぎる。
ポイ捨てしたから殺すって考えも、殺人の動機として過激すぎてて個人的に不快。

……というか端的に、つまらん。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-01-08 22:28:31] [修正:2013-02-18 02:01:44] [このレビューのURL]

7点 あおはなさん

鬼頭先生が講談社から久々に発表された作品なので、気になって読んでみた。

・・・久々にでたか・・・このカラー。

でも「なるたる」の頃に比べると、やはり軽やかさが増したのは間違いない。
例えれば、「時をかける少女」がアニメ映画でリニューアルされた時の雰囲気?

でも感じ方も学園系なのでそれに近いんだもの。

どろどろさが影を潜め、引き換えに洗練さが増していく鬼頭先生の最近の作品に期待が大です。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-02-15 08:16:42] [修正:2011-02-15 08:16:42] [このレビューのURL]


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