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7.66点(レビュー数:3人)

作者深巳琳子

巻数4巻 (完結)

連載誌ビッグコミックオリジナル:2001年~ / 小学館

更新時刻 2011-02-08 23:20:02

あらすじ 明代中国。劉家の奥様・沈夫人の食への欲求は飽くことを知らない。その欲求に応えるべく、天才料理人・李三は今日も料理を作る。必死に作る! 全ては奥様の笑顔のために…。
 

備考 平成16年度の文化庁メディア芸術祭において、審査委員会推薦作品に選ばれた。
 

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沈夫人の料理人のレビュー

点数別:
1件~ 3件を表示/全3 件

7点 朔太さん

中国の豪族劉家に仕える料理人、李三は、どうやら買われてきたらしい。
料理人といえども相当身分は低そう。
劉家、それも厨房・食堂と奥様の部屋以外の場面はほとんど出てこないけれども、時代考証や文化はしっかり検証されています。
文化庁の何とか賞にも受賞候補にもなったようで、さもありなんと納得いたします。

しかし、基本となるシナリオは、毎回同じ。
基本はドSの沈夫人が無理難題でドMの李三を苦しめ、一層美味しい料理を作らせてしまう。
このプロセスが1話完結の荒唐無稽なコメディになるというお話です。
当初は設定の面白さ、沈婦人の美しさと李三の料理の素晴らしさが対比されて、従来にない手法の漫画作品として楽しめましたが、4巻までがやはり限界でしたね。

ちなみに、毎回レシピと料理法が説明されており、立派なグルメ作品の一面も持ち合わせております。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2017-09-01 03:30:30] [修正:2017-09-01 03:30:30] [このレビューのURL]

7点 とろっちさん

食べる事が何よりお好きな劉家の若奥様・沈夫人。
退屈に飽かせて今日も奥様はお抱え料理人・李三を相手にお戯れになる。

基本的には一話完結のワンパターン漫画。
空腹もしくは退屈のために不機嫌になった奥様が李三に無理難題を言いつけ、困り果てた李三が
旨い料理を作って奥様を満足させる、というもの。
李三は忠義に厚く、小心者で、困った事があるとこの世の終わりみたいな表情になって嘆き悲しむという
良く言えば純粋、悪く言えば愚鈍な性格。 密かに奥様のファンでもあります。
そしてこの男、困れば困るほど旨い料理を作るという、ある意味本当に困った男。

この奥様は性格が破綻しているかどうかはさて置き、別に根が悪人なわけでも李三が憎いわけでもなく
彼に意地悪を言うのはただ単に自分の食欲(と、ドSな嗜好)を満たしたいだけ。
本気で悩んで窮地に陥っている李三を見るのは楽しくて仕方ないし、そんな状態の李三が作る料理は
さらに旨くなるしで、李三を困らせることは奥様にとって一石二鳥なのです。
もちろんそれだけでは李三がストレスで倒れてしまうので、上手く褒めることも欠かさずに。
単純な李三はそんな企みに全く気付かず、奥様のアメとムチによって天国と地獄を行ったり来たり。
そういうやり取りが非常に巧みに描かれていて楽しめます。

この作品は料理は当然のこと、服や小物、街並み、文化や生活様式に至るまでその描写が凝っていて、
当時の中国の主従関係の雰囲気も伝わってきます。
主である年下の美人奥様に対して横恋慕なんてとんでもなく、ただただ奥様を心からお慕いする李三。
自分に出来ることは美味しい料理を召し上がっていただくことだけ、という気概で努力し続けます。
そんな料理をパクッと食べたときの奥様の笑顔(と李三をいじめているときの笑顔)が何とも素晴らしく、
奥様の苦労、李三の苦労、それぞれが報われる瞬間というのが読者にもわかりやすくて実に良い感じ。

上記のように基本的にはワンパターンなので、まとめ読みにはあまり向いていないかもしれません。
最初は李三に同情しながら読んでいたのですが、なんか話が進むごとに李三の阿呆っぷりにターボが
かかっていくように思えてイラッとして、途中からは奥様目線で読むようになりました。
李三目線と奥様目線、それぞれ違った楽しみ方ができていいですね。
もっとイラッとさせられる玉潔や李大など味がある脇役もいますので、彼らが出てくる話では
奥様が人格者に見えるという錯覚すら味わえます。

この作品が上手く出来ていると思うのは、料理漫画として中華料理のみに的を絞っていること。
例え同じ近世を舞台にしていても、確かに和食や洋食ではこうはいかなかったかもしれないですね。
食材やその調理法の幅広さでは他に類がなく、薬食同源的な発想で、食で体と心を整える中華。
作り手の食べ手に対する意図が作中でも明確に表現され、よくもまあ毎回のテーマごとに
これだけたくさんの料理を紹介できるなと感心してしまいます。
さてその料理ですが、調理工程から完成図の描写に至るまでとても丁寧に描かれていて、
実に興味と食欲をそそります。 とても秀逸な料理漫画。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2011-11-16 00:44:09] [修正:2011-11-16 00:46:33] [このレビューのURL]

9点 玄米茶さん

本当においしい中華料理には、和食や洋食とは違う、不思議な感動がある気がする。つくり手によって味に大きく差がでてしまうからか、料理そのものの感動+つくり手の技量への尊敬のような、敬虔な感情が心に湧き起こる。…(私だけ?) おそらく、劉家の料理人である李三の作る料理も、そんな味がするのだろう。「あれだけ」食事が好きな奥様を、毎回感動させているのだから。

李三の「料理」という職能と、奥様の「美しさ」という職能を、心の底で「互いに認め合っている」ことは、読者には分かる。職能で結ばれた関係はとても強く健全である。その上でのSMは、強固な関係を前提にした「遊び」なのだから、コメディーにしかならない。で、その「遊び」が抜群におもしろいのがこのマンガである。

絵も丁寧に描かれていて良い。服や小物、背景も明代中国っぽくていい感じである。料理工程も思わず全部読んでしまうほど、ポイントを押さえて描かれている。表紙の塗り方が、なんだか諸星大二郎っぽくて大変よろしい。買って損は無いマンガだと思う。

しかし、奥様はこんな生活を送っていて、自分が嫌いにならないのか、とは少し思う。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2011-02-08 23:21:53] [修正:2011-02-08 23:21:53] [このレビューのURL]


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