ホーム > 不明 > 短編集 > 25時のバカンス 市川春子作品集(2)

6.4点(レビュー数:5人)

作者市川春子

巻数1巻 (完結)

連載誌短編集:2011年~ / 講談社

更新時刻 2011-10-26 00:14:27

あらすじ 深海生物圏研究室に勤務する西乙女は、休暇を取って久しぶりに弟の甲太郎と再会する。深夜25時の海辺にて乙女が甲太郎に見せたのは、貝に侵食された自分の姿だった。(『25時のバカンス』)土星の衛星に立地する「パンドラ女学院」の不良学生・ナナと奇妙な新入生との交流を描く。(『パンドラにて』)天才高校生が雪深い北の果てで、ひとりの男と共同生活を始める。(『月の葬式』)。

備考 短編集のため連載開始年には発行年を記載。

シェア
Check

25時のバカンス 市川春子作品集(2)のレビュー

点数別:
1件~ 5件を表示/全5 件

5点 Leonさん

ストーリーはわかりにくいが、個性があって良い。
世界観・作画は結構センスがあって凄いと思う。
自分はそこまではまれなかったので5点

ナイスレビュー: 0

[投稿:2016-01-31 14:43:50] [修正:2022-03-30 01:22:23] [このレビューのURL]

8点 punpeeさん

「虫と歌」を初めて見た時程の衝撃はありませんが、相変わらず世界観とクオリティは秀逸。

大場つぐみ×小畑建ペアの作品ほど説明しろとは言わないが、作品の世界観や設定を読み手が整理しながら読まないといけません。
なので読み応えはあるが、非常に疲れます。

市川春子に少しでも興味を持たれた方は、まず「虫と歌」を試してください。
「25時のバカンス」と読み味は一緒なだけに、多少クオリティ&インパクトの高いそちらがハマれば、どんどん開拓していきましょう。


この作者は月が好きですね。
あと、そういう作品が多いだけに、血の繋がりをそこまで重要視しない方なのだろうか?

ナイスレビュー: 0

[投稿:2016-02-13 18:31:09] [修正:2016-02-13 18:31:09] [このレビューのURL]

4点 kikiさん

SFが入ってる淡い物語…と感じました。
奇抜な設定や登場人物間に芽生える淡い想いなどは面白いと思いましたが、
私にはストーリーが分かりにくかったです。
「え?あれ?」と思ってページをめくりなおすことが何回かあり、
読みづらかったです。

あと個人的に内臓とかが飛び出す描写は平気なのですが、顔に穴開くの
ダメなんです。何故か。もう読んだ瞬間「うわー」ってなっちゃいました。
評価が低いのはそのせいもあると思って下さい。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2012-10-02 23:21:53] [修正:2012-10-06 20:03:36] [このレビューのURL]

7点 クランベリーさん

がんばって読んでみた。

ここのレビューに限らず、「彼女の作品の面白さを理解できない人は漫画好きとしてどうかと思う」みたいなメッセージが暗に込められた論調が各所でまかり通っていて、読む前から息苦しくてやだなーって思ってた。
で、がんばって読んでみた結果は点数のとおり。


前作「虫と歌」は私には全然ダメだった。「作者のセンス」なんていう言葉でうまく誤魔化されてはいるものの突拍子もない素材を並べ立てているだけで、結局は作者と共感すること、しかも読者の方から歩み寄って作者のいる高みまで登り詰めていかなければいけないような作品に思えた。
そんな私だったので、この作品が私にとって作者への適合性を問う試金石のような形で読んでみた。そしたら、あらなかなか面白いじゃないの。
前作よりもずっと読みやすかった。と同時に、前作ではさっぱり見えてこなかった作者の特徴がやっと私にも見えた気がする。

この作者、すごく照れ屋なんじゃないのかな。だって、全3篇のうちちょっと趣向の違った真ん中の話は置いといて、他の2篇はすごくシンプルなお話だったから。
根幹にあるのがすごくシンプルでストレートなお話で、でもそれをストレートに表現するのがこっぱずかしくて、「貝殻になった女」とか「皮膚に穴が開く奇病にかかった月の王子様」とかそういう突拍子もない設定でカモフラージュしているだけなんじゃないかって。

だから世間ではそういう突拍子もない設定、すなわち「作者のセンス」を喜んで評価している人が多くて、それはそれでいいと思うんだけど、私はそれを剥がしていった中にある根幹のお話が面白かった。
姉と弟のそれぞれちょっとベクトルの違った優しさだとか、姉の偏屈な愛情とそれを受け止める弟の大きさとか。
「虫と歌」では根幹のお話を覆う殻が分厚すぎて話がさっぱり見えなかったのに。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2012-05-04 23:00:50] [修正:2012-05-04 23:00:50] [このレビューのURL]

8点 booさん

前作「虫と歌」で見せた才能はちょっとした衝撃だった。本物かどうか、試金石となる現在進行形の奇才の2作目。

この市川春子の2作目ではっきりしたことは幾つかあって、とりあえず言えることは彼女の才能が本物だったということ。「虫と歌」はまぐれではなかった。
そりゃそうだろ、と仰る方もいるかもしれない。でも2作目以降ガタっと作品の質が落ちる作家は少なくないし、1作目が良かったからこそ2作目への期待はもちろんだけど同じくらいの不安もあった。
もう分かっただろう、25時のバカンスを読むとそんな不安は粉々に消えてなくなった。表現はより洗練され、物語は深化している。

25時のバカンス 市川春子作品集(2)には表題作25時のバカンスを含む3話が収められている。
前作と変わらず人と人以外のものとの交流が叙情性豊かに語られる物語となっている。そういう意味で市川春子の描きたいものは以前と変わらず一貫している。

しかし明らかな変化も見受けられる。
虫と歌の記事で私はこう書いた。少しずつねじれていて、変質的で、痛すぎる、と。でも“痛さ”は25時のバカンスで“無機質な美しさ”に昇華される。
表題作「25時のバカンス」を見て欲しい。貝殻人間の体の中に手を差し入れる場面の何とエロティックなことか。「月の葬式」だってたまらない。月に生きた最後の男を蝕む奇病はその孤独と寂しさを哀しいほどに美しく表現する。「パンドラにて」だけはちょっと味わいが異なっていてそれも良い。宇宙空間での言葉にならない侵食はウイルスが染色体を注入するイメージからきているのだろうか。

もう一つ自分の中ではっきりしたことは高野文子と市川春子の違い。
市川春子はよく高野文子のフォロワーとされる。もちろん彼女の影響は顕著なのだけど、それは絵柄や表現技法など作画方面に偏っているように思われる。
高野文子がテーマありきで話を作るのに対して、市川春子はあくまで彼女の世界観に沿った話を作ることに力を傾倒する。SF的なガジェットだってあくまで世界観を装飾するための道具だ。その意味で市川春子の物語というのは以前紹介したポリス・ヴィアンと岡崎京子のうたかたの日々に近い。

25時のバカンスを読み解こうとするのは人ならざるものと交流することに似ているかもしれない。違うものを理解しようとする時に人間の美しさは垣間見える。
理系的な知識に裏付けられた物語はさらに美しさを増して、私達に豊潤な漫画体験をもたらす。類型化されていないこのような作品を切り捨てるのは簡単だけど、それゆえに私は2つとないものとして貴重に思うのだ。そして多分そんな人は少なくない。

[追記]
ダ・ヴィンチの11月号に市川春子のインタビューが載っていた。
彼女によると、“賢い人”は社会にその頭脳を還元出来る人で、“頭のいい人”は自分のために使ってしまう不器用な人らしい。今作「25時のバカンス」ではそんな頭のいい人達が愛するもののために奮闘するのが一つのテーマだったということ。

すごく納得した。それで「虫と歌」より読みやすくなっているんだなと。天才でも“頭のいい人”だからこそコメディ要素や憎めない部分が輝いて、人間らしい美しい心が際立つ。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-10-26 00:21:52] [修正:2011-11-05 01:45:54] [このレビューのURL]

PR


25時のバカンス 市川春子作品集(2)と同じ作者の漫画

市川春子の情報をもっと見る

同年代の漫画

短編集の情報をもっと見る