「friendstudio」さんのページ

総レビュー数: 17レビュー(全て表示) 最終投稿: 2005年11月09日

とにかく変人極まりない「のだめ」と、硬派で専制君主な「千秋」を中心に様々な変人たちが入り乱れるマンガですが、ここで過剰に「クラシックマンガ」として期待していた自分は少々ガックリ。これは「ギャグマンガの形を借りたクラシックマンガ」じゃなくて「クラシックマンガの形を借りたギャグマンガ」なんっすね・・・。「クラシックを知らない人が読んだらクラシックが好きになれる」けど、「クラシック好きがクラシックマンガとして読む」には、だいぶ肩透かしを食らうと思いますので、ご注意ください(笑)
もちろん、だからといってクラシックの描写が悪いわけではなく、むしろ見事な出来で、これは多分マンガじゃなければ表現できないものなんだなーと思ったり。音が一切聞こえない\"マンガ\"というメディアを逆手にとって「現実じゃなかなか表現できない素晴らしい音楽」を描写する手法。「鍵盤ハーモニカで始まるラプソディ・イン・ブルー」とか「ド派手パフォーマンスしちゃう葬送行進曲」等、分かる人にはわかるネタ(笑)から、特に見事だったラフマニノフのピアノ協奏曲第二番(ピアノが無茶苦茶難しいことで有名)を千秋が演奏しきる場面まで、「音じゃない手法で奏でられる」大迫力の演出はこの作品の大きなポイントかな、と。(でも全体的に演奏シーンが少ない・・・)
とはいえギャグマンガなので、やはりそちらが本腰。少年漫画的なギャグしか知らなかった自分は、最初「笑わせ方」に違和感を覚えましたが、二度三度読んでいると次第に病みつきになりそうな感じで、登場人物の95%以上が変人ばっかっちゅー素晴らしい(笑)キャラクター設定で物語をぐいぐい引っ張っていきます。すんごく千秋がカッコつけてるシーンのセリフが「さらばこたつ・・・」ってノリとか僕好みなんですけど・・・うーむ、これはただの僕の主観的な好みですが、イマイチ主役二人のキャラが好きになれない・・・。人の弁当掻っ攫って「セーンパーイウフフフ!!」なのだめも、全体通してずいぶん柔らかくはなるけどやっぱりドきつい千秋も、なんだかなー・・・。この作品が好きになれるかは、「のだめが好きになれるか」が分かれ道になってるかと。タイトルは「のだめカンタービレ」だけど、実際に成長してるのは千秋だけだし・・・(6巻まで入手して読みました)。こーゆーのは少女ギャグマンガの特徴なのかな・・・。繰り返すように自分の主観的な好みに過ぎませんが、そこが「☆四つが取れる実力を持った作品」がギリギリで☆三つになっちゃった原因かなぁ。
この作品のテーマは「一番の変人は千秋なんだ」ってコトなんでしょうね。キャラそれぞれ強烈な個性があって、イラつくしぶつかるし否定したくなるけど、それでも真っ直ぐに音楽へ向かっていく登場人物たちの姿を見ていると、「一番ヘンなのは、この中でただ一人ヘンじゃない千秋なんじゃないか」なんて思えてくるあたり、なんだか不思議な感じ・・・見事でした。

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[投稿:2006-11-19 20:59:16] [修正:2006-11-19 20:59:16] [このレビューのURL]