「friendstudio」さんのページ

総レビュー数: 17レビュー(全て表示) 最終投稿: 2005年11月09日

映画の方からこの漫画を知りました。いきなり関係ありませんが僕は映画が大好きで(笑)、「この卓出した映像センスは原作からも来てるのかな?」と楽しみにしてました。いやー!これは原作の力だ!「ずば抜けてんだよ、センスがっ・・・ハンパじゃねえっ!」
とにかく、凄すぎる絵。いまだかつてこんなに絵がうまい人は見たことが無いです(上手(じょうず)にあらず)。トーンをほとんど使わずペン1本で描かれた、陰影のハッキリとした独特の絵柄。パワフルな「空気の動き」までも見えます。さらにはタダモノではない、\"映像的\"を飛び越えたアングル、コマ割り、切り取り方・・・。漫画を読んでいるというよりは「映像体験」させられているような錯覚にさえ陥ります。特に漫画史上における金字塔の対決ではないかと思われる「星野VS風間」戦は最も気合の入った作画になっており、紙の中に飲み込まれそうなほどの圧倒的な迫力!もちろん作画だけではなく、挫折と栄光と苦悩を鮮やかに書き上げたストーリーに、磨き上げられたキャラ造形、随所に挟み込まれているユーモア・・・いずれもかなり高レベルでまとまっています。
ストーリーについて、もう少し。才能はあるのにやる気が無い月本が最初のメーン主人公ですが、彼が目覚めていくうちに、次第に主人公は星野にスライドしていきます。この二人のシーンごとの心情変化が非常に巧みに書かれており、展開も「ムダ」なシーンやわき道にそれるようなコトもほとんどなく、相当計画された上でのシナリオなのだなと思えました。また、二人だけではなく魅力的なサブキャラクターたち――挫折を乗り越えて\"役目\"を見つけるチャイナ、「飛べない鳥も居る」と苦渋の末に卓球を諦めるアクマ、最強ゆえの苦しみの果てに、最後に星野によって解き放たれるドラゴン(風間)・・・、さらにはコーチ陣の「バタフライ・ジョー」と「オババ」も加わって複雑に絡み合い(いや、ある意味単純?)、ふたりの主人公を盛り上げます。特に僕は佐久間(アクマ)にどーしても感情移入してしまって・・・ゲホゲホ。兎に角もこれらキャラクターたちの性格付けがいずれも強烈で、それらから放たれる痛快なセリフもこの作品の魅力です。セリフは最初から最後まで見事でした。日常生活で使ってしまいそうです(笑)
とはいえ単純には「スポ根」モノであり、シナリオも、陳腐と言われてしまえばそこまでという面はあります(笑)。しかしそれでも、「やっぱり、いい」と思える、これらのキャラクタ、シナリオ、そして\"映像\"。チャンスがあればぜひ手に取っていただきたい漫画です。この独特の絵柄、良い意味でも悪い意味でも、途中から慣れます(笑)

ナイスレビュー: 0

[投稿:2006-11-19 21:04:28] [修正:2006-11-19 21:04:28] [このレビューのURL]

今話題の新感覚野球マンガです。
今まで野球マンガというと「勝気な投手の主人公が、速球を武器にワザを持つライバルを悩みながらも打ち破っていく」とか、また、よく超人的な技持ってたり、強烈な個性のアリエナイキャラクターたちがメインだったり、ガチガチに塗り固まった野球理論や戦略で攻めたりと、何かと偏った、またここ数年新たな傾向が見られていない「王道派」のジャンルでした。ところがこの作品は以上の定義をことごとく裏切っていて、主人公は自分に自信が持てずいつもクヨクヨして泣き虫、努力家なのに認めてもらなかった過去もあって劣等感を持っていて、挙句の果てに球が遅く・・・他にも、彼を支える捕手は天才肌なんだけど投手を駒扱いする所があったり、登場する選手誰一人として「必殺技」なんて非現実的なものも持っていない、なんだか一見は冴えない、見栄えのしない野球マンガに見えます。
この作品全編に描かれているものは、もちろん現実的で科学的な野球理論があって、それに基づいてはいるものの、結局は「野球って人と人のつながりなんだ!」ということだったりします。三橋は阿部を少しづつ信頼していき(あの校舎裏のシーンはGood!)、また阿部も「捕手とは何か」に少しづつ気がついていき・・・配球や戦略だって、もちろんこのマンガでは丁寧に書かれているけれど、でもやっぱり最後には「キモチ」だったり「自信」だったり「信頼」だったりする。それは「相手との駆け引き」などと軽く書くにはあまりに複雑で深く、もっと根底の、野球理論ではない「人間対人間」のつながりが試合を左右していく様子はリアルで、マインドが次第にじわじわと人間を突き動かし、試合を変えていく姿は「ゾクゾク」来る面白さ!何の劇的な物語も無く出会ったメンバーたちが少しづつ一つになっていく様子、過去のトラウマを仲間に支えられながら乗り越える姿・・・「負けたくない!」「勝たせてやりたい!」とヒトがそう思う衝動は単なる欲ではない現代に希薄な\"キズナ\"を描いているとも取れるし、またそうでもなくて、それを描いたもの自体が根本的に人間が読んでいて面白いのかもしれないし。ともかくも、普段野球マンガはおろか、普通の「マンガ」でさえも描かないような、\"リクツ\"じゃない人間っつー存在を、見事に、そしてどこか「完璧なドラマ」になりきっていない庶民感覚(?)の残ったように描かれた物語は「うおおっ!」の一言です(笑)
ちょっと書いたけど、このマンガの「もう一つの柱」みたいに書かれている「科学論に基づいた野球ウンチク」は、たしかに色々「へぇー」と来るものもあったけど、それはどこか「科学トレーニング」の一歩手前で、ここにもどこか「現実的」というか、「庶民的」な感じが出ていて気持ち良いです。「美味しいものを美味しいと食べること」だったり「手をつないで相手の体温を感じたり」といったトレーニングも、なんだか「メンタルトレーニング」というには幼稚で、だけど「より効果がありそう」で・・・この不思議な感覚の根底は説明が難しくて、うんと、読んでください(笑)
登場してくる女先生がときおり非現実的なコトをやってのけちゃたり、目つきがあちこちで怖かったり(笑)他にもたまーに「オイオイ」があったりもしましたが、野球マンガとして読みたい人は勿論、「野球に興味の無い人が読む普通のマンガ」としても読める秀作だと思いました。「ゲッツーって何?」くらいは知っといたほうが良いけど。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2006-11-19 20:54:23] [修正:2006-11-19 20:54:23] [このレビューのURL]

映画版とは違い、この作品のキモはノスタルジアではない。そこだけ留意した上で・・・

とにかくすべての物語に共通する人間の暖かさにはニコニコせずにはいられなくなる。
この50年間で日本人が失ったもの、そして今も揺るいでいないもの・・・
何気ないエピソードから日常の幸せを巧みに描き出している。
長期連載は現在も続いている。歴史の生き証人として、ぜひ手にとってみていただきたい。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2005-11-09 19:02:18] [修正:2005-11-09 19:02:59] [このレビューのURL]