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 朗読がこんなに面白いとは、と思わせる力を持った作品。

最初に朗読されるのは、誰もが知っている宮沢賢治の「やまなし」(クラムボンは笑ったよ、というやつ)で、これを読み解いていく過程で朗読とはどういうものかが説明される。朗読する作品内の登場人物の立場を読み解き、セリフに情感を込める、という過程が、やまなしに出てくる二匹のカニの立場を考える形で説明される。私はこの作品を読んで、初めて「やまなし」の内容を理解できた。

また、「ぼろぼろな駝鳥」(高村光太郎)という作品では、最後の一文だけ話者が「作品の筆者」から「ダチョウ」に変わる(という解釈を主人公が行っている)。その朗読の場面では、話者の変換による衝撃的な効果が臨場感に満ちて表現されており、声が聞こえない漫画であるにも関わらず、朗読の面白さを十分に伝えている。

 題材は異色だが、朗読に対する説明も十分で、主人公の成長・親友とのライバル関係といった要素もあり、今後に期待ができる作品。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2013-02-06 21:00:04] [修正:2013-02-06 21:00:04]

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