「てっち」さんのページ

[ネタバレあり]

巨人の星系でも水島系でもキャプテン系でもない、
「普通の高校生と監督」の甲子園を描いた野球漫画。
マンガの影響から「野球は、努力好きで真面目で才能ある選ばれた奴がやるべきだよな」と思いこんでた私には新鮮でした。
やったろうじゃんの「監督が選手と考えながら野球していく」路線が『大きく振りかぶって』『ラストイニング』につながっていく(と勝手に思っている)。

朝霧高校に喜多条監督が赴任し、反発を受けながらも野球部を一つにまとめていく序盤。練習・日常生活・心情まで、普通(天才でも不良でもない)の高校野球部員の生活を描いているので、チームが一つになっていく過程は感情移入して一気に読める。

その後、滝山高に勝つためには、甲子園で勝つためには、努力と運が必要だということを思い知らされます。剛速球投手・江崎がチームに加わり、高めあいながら快進撃を続けたのも運なら、その江崎がチームのために限界を超えて故障するのも運。これが中盤。

全てのドラマが終わり、重厚な江崎のドラマに突入する終盤。
楽しい時も苦しい時も悲しい時も野球をやってきた江崎は、最愛の女性がレイプされた怒りすら、野球で表現することを求められます。自分の才能すら呪いたくなりながらも、才能がある故に投げ続けなくてはいけない、それもまた甲子園の真実でしょう。

甲子園を夢見る普通の高校生・加納の話から、高校野球に翻弄されなお高校野球に戻ってきた喜多条監督、江崎という天才の話まで…要は「野球が好きな男」のお話ですね。

滝川高ぐらいまではもう面白くて面白くて、甲子園でも江崎が覚醒していく姿と選手が考えながら野球するのが面白くて、確実に10点満点でしたねぇ。
ただその後があまりに暗くて…。『部屋においでよ』や『青空』でも描かれている、あの息苦しくなる暗さです(笑)
ってことでマイナス2点。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2007-07-18 00:58:33] [修正:2007-07-18 00:58:33]