犬夜叉のレビュー
5点 十歩神拳さん
確かに皆さんのおっしゃる通り無駄に長い。
しかし個人的には、前半は少年漫画としては傑作の部類に入るものだったと思います。
それまでの高橋留美子の少年誌における代表作はドタバタラブコメ系統のものが多く、一般的にはそういった作品しか創れないという印象が強かったのだろうと思います。
しかし、るーみっくワールドには「うる星」や「らんま」等の陰に隠れて一般的に知られていないたくさんのタイトルがあります。それらの作品の中には、高橋留美子の才能がドタバタラブコメに対してだけのものではないと証明するに十分な珠玉の名作が多数存在するのです。
そして「犬夜叉」は高橋留美子がこれまで紡ぎあげてきた数多くの名作を抽出して、一つの少年漫画として調和させた最強の集大成であるはずなのです。
現代と戦国時代の双方を舞台とし、冒険、アクション、恋愛、コメディ、不気味さ、心理描写などの、るーみっく諸作品のあらゆる持ち味を詰め込んだ作風には隙がありません。
少なくとも爆流破を会得するまでは。
その後の引き延ばしによる失速感が酷い。
七人隊編あたりは引き延ばしなりにも、敵キャラが立っていたので読めましたが、白童子や魍魎丸がどうしようもなかった。
ただでさえ奈落の不死身と逃走ぶりに読者がうんざりしかけていたのに、同じようなのをさらに二体も作るなんて。
名前が違うだけで、ポジション的には結局「奈落(大)」、「奈落(中)」、「奈落(小)」ですから。
彼らが出ずっぱりの話(コミックスにして29から44巻あたり)と中盤以降の変わり映えのない構図がこの作品に「ループ漫画」のレッテルを張り、著しく評価を下げたきっかけだと思います。
ただ、45巻以降は緊張感があり、意外な展開も割とあったことに加え、他の少年漫画が全体的に不作だったこともあり、相対的に面白く感じました。
全体を評価すれば、中盤を差し引いても駄作と言いきるのはあんまりかなと私は思います。
ナイスレビュー: 1 票
[投稿:2010-09-28 17:30:06] [修正:2010-10-27 14:41:28] [このレビューのURL]
2点 いーらびさん
56巻まで続く割に中身ペラペラ。印象に残るシーンが無く、読み終わっても見事に何も残らない。
はっきり言って読む時間が無駄。高橋留美子のファンだけにがっかり。
これなら『ファイヤートリッパー』の方が断然面白い。
唯一面白かったのは、所々織り交ぜられた現代が舞台の小咄。高橋漫画の魅力は、そういった人間同士のコミカルなやり取りの中に活きるテンポの良さなのに、これはもう何かを履き違えてるとしか思えない作品。
ただ、熱意だけはひしひしと伝わってくる。
きっと『うしおととら』みたいなの描きたかったんだろうなあ。
だけど全然、比較にもならない。
妖怪に対する愛情が感じられないのは致命的。
ナイスレビュー: 0 票
[投稿:2010-04-14 19:29:15] [修正:2013-04-10 10:44:06] [このレビューのURL]
4点 わすれなぐささん
早く連載が終わって欲しかった漫画だ
初めて、早く完結しないかな、と思わされた作品。これは、何も本作がつまらない・読む価値のない作品というわけではない。高橋留美子という漫画家が大好きな私にとっては、このようなバトルをメインとする漫画ではなく、ほのぼのとした生活の中に楽しみがある『らんま1/2』や『うる星やつら』のような作品を読みたかったからである。つまり、私は他の漫画家でも描けるような漫画ではなく、高橋留美子にしか描けないような作品を読みたかったのである。
これは私の偏った考えであるが、このように考える方も多いのではないか…と思う。
ナイスレビュー: 0 票
[投稿:2010-03-10 03:33:17] [修正:2010-03-10 03:33:17] [このレビューのURL]
5点 ショーンさん
とにかく長い。奈落は復活しすぎ!妖怪漫画だったが、これはこれで楽しめた。無駄を省けばもっと点数は良かったかも。
ナイスレビュー: 0 票
[投稿:2010-02-08 15:16:23] [修正:2010-03-07 04:10:01] [このレビューのURL]
6点 景清さん
漫画史にその名を残すであろう天才の高橋留美子が挑んだ初の本格長編バトルファンタジー漫画は、商業的にはともかく作品的にはお世辞にも成功したとは言いがたかった。
既に多く語られているように、とにかく無駄に展開が長く、描写の淡泊さも相まって冗長なイメージの作品になってしまい、「うる星やつら」や「らんま1/2」以来の古参のファンからは駄作であると見なされる事も多い。実際自分も読んでる途中で飽きが来て作品からしばらく離れることも多かったし、全体を通してこれはという印象的なシーンを思い出せないことも多い。
しかし、それでもこの作品は高橋留美子の長いキャリアの中でも重要な位置を最終的には占める事になったと思う。そう感じたのは、最終回があまりにも従来の高橋作品の雰囲気からは異質であり、同時に一つの到達点をも感じさせるものだったからだ。
これまでの高橋作品は「終わらない青春という名のワンダーランド」を描いてきた。登場キャラ達は年を取らずに何度もループする永遠の少年少女達であり、作品内でキャラ同士が思いを育みあっていっても「結婚」や「卒業」といった断絶は描かれない。ラブコメの金字塔「めぞん一刻」ではキャラはリアルに年を取って主人公とヒロインはラストで結ばれるが、それでも最終回に互いの青春ドラマの舞台であったアパートの一刻館に戻っており、やはり明確な断絶とはなっていない。
ところがシリアス路線で描かれた本作「犬夜叉」は違った。現代生まれのヒロインのかごめは現代日本(日常)と物語の舞台となる魑魅魍魎のはびこる戦国時代を自在に行き来するが、彼女の持つ二つの世界は本質的に相容れはしない。家族のいるこの世と愛する男(犬夜叉)のいるあちら、二つの世界のどちらかをいずれは選択を迫られることは物語当初から予感させられていたが、最終回で彼女がとった行動とは…。
最終回。現代日本に帰還し、家族や友人達と平穏な日々をしばし送った後、かごめは愛する家族に別れを告げて犬夜叉のいる戦国の世へ自らの意志で”嫁いで”いったのである。
作中明言こそされていないが、残された家族の表情から察するに、二度と戻れないことはおそらく承知の上で。
かつて嫁入りとは女が自分を育ててくれた家族に別れを告げて夫の家の一員となることを意味していた。下手すれば二度と実家の敷居をまたがない覚悟が問われたのである。勿論こんな結婚観はフェミニズムの見地からも現代は崩れつつあるが、かつてあれほど軽妙なラブコメを描いてきた高橋留美子が少年詞向け作品でこのような「嫁入り」を描いたことは特筆に値する。(「炎トリッパー」というささやかな前例もあるけどね。)
そしてこの嫁入りが昔のそれと違っていたのは、決して家同士の決めごとによるものではなく、ヒロインであるかごめの強い想いと決意に基づいて行われたという事実。
高橋作品で昔から描かれてきたテーマに「戦って勝ち取る恋」「受け身じゃない強い女性」というものがあった。特に彼女の描くアグレッシブで強い女性キャラが漫画界に与えた影響は良くも悪くも計り知れないだろう。
かごめもそんな系譜に属するヒロインだったが、二度と住み慣れた日常に戻れぬことを覚悟して貧しく危険な戦国の世で愛する男と沿い遂げることを最終的に選択して恋を成就させた彼女の精神的な強さは、これまでの高橋作品の女性のみならずその他の寸止めラブコメ諸作品のそれと比較しても、際だって強い。
正直に言って、この最終回だけでこれまでのグダグダが全てどうでもよくなるほどの何にも言いがたい感慨に包まれた。
全体的に見ても傑作とは言いがたい部分が多いが、これまでの、そしてこれからの高橋留美子を考える上で重要な作品となったには違いないのだ。
ナイスレビュー: 1 票
[投稿:2009-11-28 23:47:29] [修正:2009-11-29 01:41:08] [このレビューのURL]
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