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6.14点(レビュー数:27人)

作者荒川弘

巻数15巻 (完結)

連載誌週刊少年サンデー:2011年~ / 小学館

更新時刻 2012-07-16 19:44:56

あらすじ 北海道に所在する大蝦夷農業高校(通称・エゾノー)は、農業に従事することを目指す農家の子供が多く通う学校であった。進学校として名高い中学出身でありながら、低偏差値校であるエゾノーにわけあって入学した八軒勇吾は、他のエゾノー生徒たちの多くが明確に将来の夢を持つ中、一人だけ何も夢を持っていないことに焦燥を感じ始める。高校としては日本一の広大な敷地面積を持ち、動物と自然に囲まれ、一年生の間は全寮制という慣習を持つエゾノーで、勇吾の青春の日々が始まる。(Wikipediaより)

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銀の匙 Silver Spoonのレビュー

点数別:
16件~ 20件を表示/全27 件

農業高校に入りながらも自分には将来の夢がないとウジウジしたり
都会と違う大自然での生活に翻弄されたり
そんな中で生きることについて学んでいく八軒には清々しさを感じる
一歩ずつ止まって悩んで「それっぽくまとめられる」のでは満足できない
牛歩でもしっかりと進んでいく

フィクションではない分現実にもこんな生活を送っている同世代の学生がいるのだろうなと
八軒の目線で読むといろいろと思うところがある

ハガレンにおいてあいさつと感謝の言葉を入れるよう心がけた荒川先生
エドとアルは旅の途中で出会う人たちとのつながりを大切にしてきた
そしてこれからさまざまな形で生き物の命と出会い別れていくであろう八軒
そこには「いただきます」「ありがとう」という同じ命に対する感謝やあいさつを
変わらず大事にする主人公の姿が描かれるはずである
そう、前作が「人間賛歌」のマンガであったとすれば
今作は家畜を含む「生き物すべてへの賛歌」なのだろう


また(個人的に)気になるタイトルの「銀の匙」とは
silver spoonとは「裕福な家に生まれる」という慣用表現であるが
これは八軒の家庭を示唆するものなのか
それとももう一つの意味である「よい星の下に生まれる」として使われているのか
作品の中で詳しく語られることはまだないがこの先テーマとなっていくのかもしれない

「あの荒川弘の最新作」というネームバリューだけで評価される部分は多い
内容が評価されるにはまだまだだがきっとこの人ならまた素晴らしいマンガを描くだろう
と、やっぱり「あの荒川弘」だから期待してしまいます。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2012-01-20 17:46:44] [修正:2012-06-03 19:03:50] [このレビューのURL]

6点 kikiさん

読み始めは主人公が農業学校で切磋琢磨して成長していって生命の
尊さを学んでいく作品なんだろなーって思ってました。
が、思ったよりも深い作品で驚きました。

主人公の農業学校内での経験だけでなく、学友たちのそれぞれの家の
それぞれの経営状態などを盛り込んでいるのが特に興味深かったです。
肉を食べるということはその生命を奪っていることなのに、普通に生活を
していたら食べるばかりでそのことを忘れがちです。
その根源の食肉業界の生産者事情がリアルに読みやすく描かれてて
素晴らしい。

まだ始まったばかりだけど、これ絶対小中学校で読ませるべき作品。


業界説明漫画としてはかなりいいと思うけど、作品の性格上少年漫画
としての熱いワクワク感があまりないのは仕方ないかな。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2012-03-19 00:52:13] [修正:2012-04-04 23:02:26] [このレビューのURL]

6点 ネコ好きさん

ハガレンでは浮きまくっていた「ギャグ」要素が
本作ではコメディとして活きているのがよかった
また、生を通じたシリアスな展開もあり非常にバランスが取れている


個人的には牛の出産が一番印象に残っている
生の誕生をここまで魅力的に描ききれたのは
やはり女性ならではの「母性」なのかもしれない

ナイスレビュー: 0

[投稿:2012-02-23 14:41:00] [修正:2012-02-23 14:41:00] [このレビューのURL]

7点 景清さん

 我々日本人の食に関するこだわりの深さは良くも悪くも世界有数であり、特に薩摩黒豚がどうした和牛がこうしたといった“国産”肉への執着はもはや信仰のレベルと言って良いが、昨10年は口蹄疫、そして今年11年は原発災害による土壌汚染にTPP交渉参加、と日本の農業は重大な危機と岐路に直面している。
 
 今回紹介する『銀の匙 Silver spoon』はそんな近年の農業事情を考える上でも非常に有意義な作品だが、単純に漫画作品としてもかなり面白く、読者の興味を引き新鮮な驚きを与えてくれる。
 作者の荒川弘は大ヒット作『鋼の錬金術師』で有名だが、北海道の酪農農家出身という異色の出自でも知られており、『百姓貴族』など自身の農業体験に基づいたエッセイ作品も既に描いている。そして週刊少年サンデーで今年から連載の始まった今作『銀の匙』は、農業とは無縁の生活を送ってきた都会育ちの少年が、とある理由で北海道の農業高校に入学し様々な経験を積んでいくというストーリー漫画だ。
 サンデー伝統の“部活マンガ”路線の異色作と言えるし、同じく北海道での畜産を扱ったゆうきまさみの『じゃじゃ馬グルーミンUP』の後継作とも言えるが、扱われる内容はそれらと比較してもかなり生々しい。『じゃじゃ馬』ほどにラブコメ色が前面に出てくる気配は今のところ無く、主人公周辺のキャラの大半は農家の跡取りという立場から単なる部活モノのお気楽さとは比較のならない重さを秘めている。家畜の屠殺や間引きといった生臭いテーマも早々に正面から描かれ、獣医になれる条件には「殺れるかどうか」と答えさせる。かわいい仔豚ちゃんはいずれは食肉となる事が示唆され、熊嵐に象徴される北海道開拓の苦闘の歴史を描くことも忘れない。昨今の農業事情も意識しながら読むと、非常に考えさせられる事が多い作品なのだ。

 なんだか辛気臭い・説教臭い作品のように思われるかも知れないが、そこは等価交換、とても伸びやかで愉快な作品でもある。主人公の八軒は「家から遠く離れたい」という理由だけで遠路はるばる北海道の農業高校にやってきた勉強はできるが少々ひねくれた所のある少年で、実家が農家では無いし将来の夢も特には無い。そんな農業とは無縁だった少年の視点により、農業高校での様々な体験が読者の想像を絶する新鮮な驚きに満ちた、実に活き活きとした魅力あるものとして描かれているのだ。日本の農業事情を大上段から深刻に描くだけなら他にいくらでもあるが、こうも楽しさや驚きを少年漫画というフィールドで描きうる作者の筆力はやはり凄い。

 それらに対する八軒の反応も実に素直で良い。世間の常識から隔絶されたギャグのような(というか既にギャグの)農業高校生の生態にいちいち過剰反応を示し、産みたての卵かけご飯や自家製ピザに大感動、子牛の出産という普通なら「厳粛な生命の瞬間に立ち会えて云々」と感動する場面では素直に「グロい」と言ってのける。卵かけご飯をかっこむ際の「ばばばばばばばばばば」やトラクターの駆動音「ぐぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」など突き抜けるような擬音効果からもそんな素直さと勢いが感じられる。周囲の大半の学生と違い主人公は特に継ぐべき家業も将来の夢も現時点では持っていないが、校長先生曰く「それは良い!」 何もないまっさらな八軒だからこそ、様々な体験に驚き戸惑いながらも色々な分野へ挑戦することも出来るし、いずれは何者かになり得る可能性を見出すことができる。

 物足りなさを感じる部分としては、作品の性質上仕方のない事だがャラクターデザインが少々地味目で時々作画的にも不安定さが感じられる点、またせっかく北海道の大自然を舞台にしている割には背景の自然描写などもやや淡白な印象を受ける点などがある。上述の通り非常に勢いのあるシーンが多いのが魅力だが、反面専門的な部分の説明シーンなどは少々セリフが説明口調の長文になりがちな所も気になる。あと作者が週刊連載のペースに慣れていないのか休載が多いのもやはり気になる…。最近は休載も少なくなったので、今後も引き続き楽しく読んでいけることに期待したい。

 タイトルの『銀の匙』だが、現時点では学生寮の食堂に飾られていることが言及されるのみでそれが何を意味するのかはよく分からない。中勘助の小説ともおそらく縁は無いだろう。ただ、食を命を掬い上げ自身そして他者の口にそれを授ける“匙”という食器の持つ象徴的な意味を考えると、本作が今後何を描いていくのかを考える材料にはなるかも知れない。
 八軒が生まれて初めて野生の鹿をさばいた時、彼は鹿の亡骸に向かい手を合わせるが、その姿はまるで何かを錬成しようとする錬金術師に重なって見えた。恐らく、作者の描きたかったものはハガレンから本作まで一貫しているのだろう。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-12-31 00:52:00] [修正:2011-12-31 01:14:31] [このレビューのURL]

8点 鋼鉄くらげさん

人間の価値観は千差万別で十人十色。百人いれば百通りの好みや価値観が存在します。そんな中で、全ての人間の価値観に符合する「誰が読んでも面白い作品」なんてものは、未来永劫、半永久的に存在しえないなんてことは、今更ここで長々と語るまでもなく明白なことです。しかし、そんな人類不変の絶対真理を語っておいてなお、この作品に対する感想を述べさせてもらうと、「この作品は面白いです」。

さすがは荒川先生と言うべきか。農業高校の学校生活なんていう地味なテーマの話でも、実に興味深く、そして分かりやすく、作品のテーマから引き出す事のできる面白さを十二分に伝えられています。

さて、今回レビューを書くにあたって作品全体を見た場合、現段階ではレビューを書くにはまだまだ話そのものが始まったばかり。道半ばという段階です。なので今回は、2巻まで読んだ中で特に印象に残ったエピソードを一つ、紹介するだけに留めておこうかと思います。

そのエピソードとは、1巻134ページから展開される「獣医になる夢を叶えるために必要なものは何か?」という主人公の台詞に対して獣医が答えた言葉。
「殺れるかどうか」です。

例えば「小さくて可愛いペットが大好きだから」なんて理由で将来ペットショップ屋さんになりたいなんて言うのは、それこそ幼稚園児レベルの発想で、そんな志望動機は、実際にペットショップ屋さんが抱える苦悩や葛藤をまるで理解していないからこそ出てくる台詞そのものでしかないわけです。

生物を育てるにしろ、生物を救うにしろ、「命」を養うという事は、同時に「命」を奪うという事もその裏返しとして存在しています。そんな厳然たる事実を置き去りにして、安易で一時的な感情論で物事の指針を判断していると、いつか必ず「命」を扱う仕事が抱える絶対的な問題に直面します。それはつまり「死」です。自分が対象生物の生き死にを扱う覚悟があるのか。その覚悟を受け入れる事が、獣医として(命を扱う仕事として)必要な「資格」であると。そんな事を言いたいシーンなんじゃないかと思います。

普段。私たちの食生活は「命」を感じる事が少なくなってきています。今どきの子供たちは、スーパーの魚の切り身がそのまま海を泳いでいると思っている、なんて笑い話もあるくらいです。しかしそれは、逆に言えば、それだけ「生物=食物」という意識が希薄化していると言う事の証明でもあります。食物が大量生産され、製造工程が機械化されれば、それだけ「命」の存在感が薄れ、消失していく。それが善か悪かの二元論では無く、歴史の必然と言われれば、それは人間の傲慢なんじゃないかと、そんな事をこの作品を通して考えます。

自動化され、流動化される時代の中で、敢えて「生(せい)」を描くこの作品が、今後どのような物語を辿るのか。とても楽しみです。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2011-12-28 20:44:29] [修正:2011-12-28 20:52:39] [このレビューのURL]

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