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7点(レビュー数:12人)

作者新井英樹

巻数6巻 (完結)

連載誌ビッグコミックスピリッツ:1995年~ / 小学館

更新時刻 2009-11-25 06:25:57

あらすじ 宍戸岩男、42歳、独身。山を越えた街のパチンコ店勤務。年老いて痴呆の進む父親と、一人息子の岩男を溺愛する頑迷な母親との3人暮らし。岩男の人生は波瀾もなかったが、悩むべきひとつの恋もなかったが、パチンコ店の同僚・吉岡愛子から誕生日プレゼントをもらい、岩男の心の中に、恋心が芽生えたのだが、その後見事な敗北を喫す。

母・ツルの岩男への激しい愛情にも追いつめられ、国際結婚相談所を最後の頼りに、女を求め、フィリピンへ見合い旅行に行くのだが・・・。

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この漫画のレビュー

8点 朔太さん

[ネタバレあり]

表紙で強調されるフィリピーナの絵姿と表題にすっかり騙された。
どうしたって、「愛しの・・」となるとヒューマンなお話を期待するもので、当初の寒村の40過ぎ独身者の悲哀、恋愛に対するコンプレックス、老々介護への不安、フィリンピン人の貧困に起因する売春、結婚斡旋ビジネスに殺到する登録者たち、などなどは、これから起きる小さな幸福が始まる伏線だと思うじゃないですか。

全然違うのね、これが。
いつまで行っても、明るい未来なんてものは見えてこない。
それどころか、どんどん事態は悪化して、遂には・・・なんてことが起こってしまう。
もう、戻れないから逃避行が始まると思いきや、人生を破綻させてしまうんだな。
途中、岩男は「あいつをフィリピンに帰す」と言ってたはずなのに、それも叶わずで、思いがけない結末へ。

いや、怒涛の勢いで息継ぎができないぐらい暗い展開。
一気に6巻まで読まずにはいられない。
連載中、読者はついてこれたのかな。
こんな暗くて惨めな話は、毎号続きを読みたいなんて思うだろうかね。
そういう意味で、やっぱり新井英樹はすごい。
誰もが知っていながら見向きもしないフィリピーナの物語をモチーフにしてしまうのもすごいし、変な純愛物語に改質してしまわず、悲惨なものはより一層悲惨なまま読者に届けてしまう。
絵はあいかわらず下手だが、「宮本から君へ」に続く彼の書きたい理不尽な世界だったと気づく。

これから読まれる方に忠告しておくが、最終話に至る一歩手前まで、悪い胸やけが続くので、それに耐える覚悟が必要。
最後まで読んだからといって、やっぱり胸やけは治らないし。

新井氏は本作品がお気に入りで、登場する人物が「好き勝手」なところが好きなんだそうな。
代表作として扱われないことを不満に思ってるらしい。
これだけ強烈な読後感を残す作品はあまりないので、やっぱり名作なのかな、いやワースト側で名を遺す作品かもだ。
あまり、再読をしたいと積極的には思わないが、変に後を引く作品とでも言っておきたい。
多分、何度も読み返すような毒がある。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2022-09-14 22:01:43] [修正:2022-09-14 22:01:43]

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