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7.39点(レビュー数:33人)

作者ゆうきまさみ

巻数26巻 (完結)

連載誌週刊少年サンデー:1994年~ / 小学館

更新時刻 2012-08-27 17:52:31

あらすじ 春の北海道を旅行中、駿平は行き倒れ寸前で渡会牧場に拾われた。優しい瞳の馬たちと美人ぞろいの四人姉妹に囲まれて、駿平の青春が発走!!

備考 文庫版全14巻。

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この漫画のレビュー

[ネタバレあり]

競馬漫画と言われるが、「ホームドラマ」と言ったほうがしっくりくる。主題は間違いなく人間ドラマであり、テーマは恋愛だけでなく親子、兄弟、友人といった人間同士の関係、心情の揺れ、人格の成長といった点にも及ぶ。
そして凡百と違う最大の点は、そのさまざまな人間ドラマを、どれかにだけ偏らずすべてをきちんと描ききっている点だ。

例えば一般的なヒューマンドラマは、ストーリーの進行とともにどれかひとつに重心が移っていくことが多い。次第に恋愛中心になったり、友情ドラマになったり。そしてだんだんに消えていくキャラがいて、最終回にだけ再登場したりする(笑)。
ところが本作では、主人公の成長、とりわけ恋愛と仕事での成長を中心にすえつつ、両親が最後まで一定の距離感で登場する。青春モノで両親といえば、たいてい主人公の成長に立ちはだかる最後のカベであり、乗り越えた後は切り捨てられるのが普通だが、本作は家族の絆は最後まで保たれる。そして両親同士の葛藤なんかも忘れずに描かれていたりする。

こうした様々に織り成された人間関係は、全体としてお互いに邪魔しあうこともなく、無駄な部分もない。ホームドラマとしては間違いなく一級品であり、作者の「心配り」には関心せざるを得ない。

こうした人間ドラマが縦軸とすると、競馬は横軸だ。だがこの横軸もハンパな描き方ではない。
生産者の世界、競馬関係者の世界がどれも徹底したリアリティで描かれている。作者のこだわりだろうが、とにかく「そこまでこだわるか」と思うほどの描きこみである。ほのぼのしたトーンの中にも厳しい生産界の状況をきっちり描き、「北海道」「牧場」「馬」といった言葉に都会人が抱く甘いロマンははっきり否定される。これがストーリーを地に足が着いたものにしている。

登場する牧場や競馬関係者、馬、レースにはだいたいモデルと思われるものがあり、競馬ファンにとってはそれを探すのもまた楽しい。最後の有馬記念は、あのレースを参考にしたとしか思えないし(笑)

ちなみに後半のヒロインについては議論があるところだが、自分は肯定派。たしかに当初の魅力はなくなっていくが、作者はそれでも徹頭徹尾、ずっと同じ時間が流れていくことに執着していたのだと思う。競馬漫画でなくても描けた人間ドラマを、あえて競走馬生産という舞台で描いたのは、次代に血をつないでいくという競馬の世界に、家族の姿を重ねたかったんじゃないだろうか。

そうなると、やはりヒロインは少女から母に変化せざるを得ないわけで、そうじゃないと命をつなぐ物語にならない。このストーリーでは、ヒロインはああなるしかなかったとも言える。まあ、恋人が母親になり、昔の魅力がなくなっていくという過程もリアルといえばリアルである。

とにかくあらゆる面においてリアルにこだわった作品であり、ほのぼのしていながらも下手な夢は見させてくれない。そこを楽しめれば最高の一作といえるだろう。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2006-10-28 01:37:38] [修正:2006-10-28 01:37:38]

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