石の花のレビュー
8点 gundam22vさん
現在においても題材になっていない第二次世界大戦の旧ユーゴスラビアでの顛末を漫画として描いた話。史実を基にしてキャラに魅力があり、先に気になる群像劇的な体裁をとっており、強制収容所の中までしっかり描かれている辺りは凄いです。複雑なこの地方で行った内部紛争を誘発させるナチスのしたたかさ、台頭を産んだ要因などをしっかり解説されており勉強になりました。その辺のゴタゴタや収容所での顛末などで人間の醜さを描いており、絶望と闘いながら、ひたすら生きようとする登場人物達への感情移入度は高まります。ただ最後は多分打ち切りだったのかもなというほど、急に勝ってしまい、勝ったという実感ないまま後日談を纏めて終わったかな感があります(金塊持った爺さんなんか未消化も良いところでしたし)。最終話で後味の悪い勝利を描いてましたが、勝利自体の実感が薄かったのは戦争ものとしてはどうだったかなと(戦いは負けてばかりの印象しかない)。
『アドルフに告ぐ』とは似た雰囲気の作品と言えばそうですが、あちらがヒトラーがユダヤ人という明らかにおかしいオチやラストシーンはこちらが感動や美しさがあっただけに、総合的には良かったかなと思います。
ナイスレビュー: 1 票
[投稿:2014-05-28 05:12:13] [修正:2014-05-28 05:12:13] [このレビューのURL]
10点 臼井健士さん
第二次大戦中の旧ユーゴスラビアを舞台に、祖国をナチスドイツに侵攻されたひとりの少年が解放軍に身を投じて戦う姿をナチスによる強制収容所の虐待と合わせて描いていく・・・・。
とにかくナチス関連の漫画では手塚治虫の「アドルフに告ぐ」と並ぶ傑作だと思う。
画の上手さといい資料を元にした歴史的事実の詳細さも特筆。村で平和に暮らしていた少年がいかにして非日常的な戦いに巻き込まれていったのか?、巻き込まれねばならなかったのか?現代日本で日常的生活を送る我々に警鐘を鳴らしているようにも感じる。
「ナチスドイツの蛮行」を強制収容所を舞台にして描いている数少ない作品です。
手塚先生の「アドルフに告ぐ」は強制収容所の様子についてはほぼ触れていませんでしたから。
それを知る意味でも、一読の価値のある作品と思われます。
それにしてもナチス将校の外道ぶりは・・・正に「人の皮を被ったケダモノの如し」です。
現在ではそれぞれが独立したことで「完全消滅」してしまった旧ユーゴスラビアの複雑な立場。
これじゃ・・争いが起こるのもやむなし・・・と納得させるものがあります。
「人が人として扱われないこと」がいかに悲しいことであるのか。いかに悲惨なことであるのか。
そしてこの漫画はこれがつい半世紀ほど前にあった事実なのだと読者に突き付ける。
ナイスレビュー: 1 票
[投稿:2011-06-07 12:36:45] [修正:2011-06-07 12:36:45] [このレビューのURL]
9点 blackbirdさん
名作の名高いこの作品を読むのは、なかなか覚悟がいりました。
日本人にはよくわからない、複雑な民族・宗教・言語の入り混じったユーゴ。その近代史、内戦に至る事情と、そこに巻き込まれる国民、
とりわけ若者の苦しい心情を、よくここまで描いたなと感心します。
話としては、前半の丁寧さに比べ、後半なぜナチスの勢いが失速し、
解放されたのかというところがざっくりしているのが残念でした。
でも、多民族国家の複雑さと、それを悪用したナチスの狡猾さは良くわかり、読んでいてため息が出ます。
幸福を求めることがすでにいけないことなのか?と、そんな哀しいことを問いかけなくてはいけない世界が、すでに哀しすぎます。
そんなに絵が際立って上手いわけでもないのかと思っていましたが、そんなことはありませんでした。
ところどころ本当に動き出しそうな場面があったり、自然の中に吸い込まれそうになったり。
コマを見ただけで涙が出そうになったところもあります。
朦朧とした中で森をさまようクリロや、一人死を迎えた老人、
収容所でのフィー、理想を語るマイスナー。
そんな描写に引き込まれました。
簡単に手に取ることはできないけど、一度は読むといい名作と思います。
ナイスレビュー: 2 票
[投稿:2011-06-02 11:07:18] [修正:2011-06-02 11:07:18] [このレビューのURL]
8点 torinokidさん
これは名作ですな。凄いとしか言いようがない。
舞台はナチス侵攻により蹂躙された戦時下のユーゴ。
私は「パルチザン」という言葉の本当の意味を本書で知った。
戦後、独特の社会主義体制で注目されたユーゴも今はない。
国家とは?民族とは?戦争とは?そして正義とは?
答えの出ない問いを繰り返してしまう。
ナイスレビュー: 1 票
[投稿:2011-03-28 10:31:25] [修正:2011-04-14 21:57:04] [このレビューのURL]
8点 とろっちさん
第二次大戦時のユーゴスラビアを描いた作品です。
日本人にはあまり馴染みのない国かもしれません。サッカーぐらい。
世界史の教科書にも「ナチスドイツに対し、チトー率いるパルチザンがゲリラ戦で抵抗した」
程度の記載しかないですが、このほんの数行の裏に隠れているのは、こんなに凄惨な物語。
この作品では、どんどん人が死んでいきます。
生命を軽んじるわけでもなく、特別視するでもなく。
まるでそれが当たり前のように。
やらないとやられるから殺すのではなく、
自分の信念を守るために、生活や家族を守るために、殺す、
それが戦争。
理想と現実との間で苦しむ主人公にスポットを当て、ナチス対パルチザンの単純な善悪二元論では
なく、もっと根本的な人間のあり方、生き様を徹底的に描写しています。
特筆すべきは、驚異的な絵の巧さ。現代風の絵ではないですが。
収容所の描写は圧巻です。
面白いとか面白くないとかをある意味超越している作品かと思います。
点数を付けるのが非常に難しいですが、紛れもない名作ということを考慮して、この点数。
ただ、このサイトの点数基準で8点は「何度も読み返してしまうような名作作品」とのことですが、
あまり何度も読み返したくなるような作品ではありません。念のため。
ナイスレビュー: 2 票
[投稿:2009-12-23 14:51:07] [修正:2009-12-23 14:52:05] [このレビューのURL]
PR