ヴィンランド・サガのレビュー
8点 punpeeさん
プラネテス同様、この作者は良い意味で読み手を裏切りませんね。
卓越した個性を感じる作者ではないですが、
本当に丁寧なストーリー進行、構成、そして間やセリフ、構図といった演出力が秀逸。
作品に対する真面目さ、真摯さがひしひしと伝わってきます。
何よりも特筆すべきは、
「愛」とは何か、
「死」とは何か、
「何故生きるのか」といった問題提起に対し、一つ一つ解答を提示している。
それもブレの無いプロセスと、秀逸な文章力と演出力を持ってして高い説得力を感じさせる。
少しだけ中弛みを感じなくもない奴隷編に関しては、若干の無駄があったのかどうか、
これから行きつく先次第にはなるが、現在連載中の漫画の中では、トップクラスだと思います。
良質で良心的な良作。
これからの展開や結末次第では、名作と語られる作品にもなり得ると思います。
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[投稿:2016-12-05 20:58:45] [修正:2016-12-05 20:58:45] [このレビューのURL]
8点 ゆーやさん
「正しく愛を体現できる者はどこにいるのだ」
「そこにいますよ。ホラ。彼は死んでどんな生者よりも美しくなった。愛そのものといっていい。
彼はもはや、憎むことも殺すことも奪う事もしません。素晴らしいと思いませんか?
彼はこのままここに打ち捨てられ、その肉を獣や虫に惜しみなく与えるでしょう。
風にはさらされるまま、雨には打たれるまま、それで一言半句の文句も言いません。
死は人間を完成させるのです。」
「・・・愛の本質が・・・死だというのか」
「はい」
「・・・ならば我が子を・・・夫婦が互いを、ラグナルが私を大切に想う気持ちは、一体何だ?」
「差別です。王にへつらい、奴隷に鞭打つことと大してかわりません」
「わかってきた・・・まるで、霧が晴れていくようだ・・・
この雪が・・・愛なのだな」
「・・・そうです」
「あの空が
あの太陽が
吹きゆく風が
木々が
山々が・・・
・・・なのに・・・
なんということだ・・・
世界が・・・
神の御技がこんなにも美しいというのに・・・
人間の心には愛がないのか」
この一連の経緯、表情、構図、間、
全てが完璧だった。
漫画でここまで分かりやすく語れるのだと感動しました。
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[投稿:2015-06-03 19:30:00] [修正:2015-06-03 19:30:00] [このレビューのURL]
8点 torinokidさん
ヴァイキングを扱った作品ってのは結構珍しいかも。
時代背景とか相当詳しく調べてられており勉強になる。
時折かなり陰惨な描写もあったりするが、
良い意味で力の抜けたセリフ回しのおかげで
痛々しさがうまく中和されている。
※14巻読後追記
ヴァイキング編はお見事な終わらせ方でしたね。
感服いたしました。評価を8点に上げたいと思います。
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[投稿:2010-12-16 13:35:37] [修正:2014-11-14 17:54:19] [このレビューのURL]
8点 霧立さん
力こそ全てのヴァイキングの世界で本当の戦士とは何かを問い、力なき敗者たちの最後の理想郷としての「ヴィンランド」を探し求める物語。
全ての人が不幸にならない為にはどうすればいいのか。一見ありがちなテーマを奪う側(王、ヴァイキング)奪われる側(農民、奴隷)それぞれの視点から丹念に語る事で説得力を生み出し、大河的な話ながら場面場面での先の読めない展開に興奮できる構成力は見事。
何より殺戮と略奪に生きるヴァイキング達が生き生きと描かれているのが良いですね。また、主人公の理想論も多くの痛みと絶望の末に語られる物なのでさほど薄甘さを感じることもありません。
ただ、本当の戦士になったトールズもトルフィンも、数多の命を奪ったのちにようやくその境地へたどり着いたという事実。言い換えれば人々を救い守り育てる力とは、結局のところ同じほどの命を奪わなければ得られないのだという残酷な真実を突きつけているようでもあります。そう考えると救いが無さ過ぎますか。
突き抜けてはいないが全てにおいて本当に高いレベルでまとまっている作品。あとは無事に物語を畳んでくれれば名作確定です。
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[投稿:2014-11-04 16:52:49] [修正:2014-11-04 16:52:49] [このレビューのURL]
8点 notatallさん
久々の大当たり。この作品はよい。
傭兵団の叙事詩かと思いきや、輔弼の臣の物語。と、勘違いさせといて実はユートピア建設の物語になりそうな気配。
そしてなにやら色々ツボを押さえている。
戦場を個人の武勇によってひっくり返す慶次感。
流浪の傭兵集団が戦果を挙げて成り上がっていく鷹の団感。
命を懸けてつくすべき真の王が現れ、ピッコロまでが味方になる王道ジャンプ感。
権謀うず巻く宮廷闘争。少しずつ味方に引き込むとか、ダレそう。と思う間もない急転直下。
開墾から収穫へという流れでは、やすらぎとか充足とか愛とか憤り。
当然、11世紀の物語に現代の価値観を押し付けてはいけない。かといって現代の価値観抜きに当時を振り返ることはできない。
このあたりのさじ加減も良い感じ。
様々な階層からの視点で世相を切り取っている手法も、やはり評価すべきだろう。
ただし一つの方向性で最大に盛り上がっているところで、次の展開に行くから、イマイチ納得いかないというか、肩すかしというか、物足りない感もあるといえばある。
んだが、それだけに、
おなか一杯感は得られない。飽きないのである。
悪く言えば食い散らかしてる感はある。
いずれにしろ世の中の不条理が根柢にあるから、結末は難しそう。
新天地を見つけてユートピア建設開始。てトコで終わってたらこのテーマからすると逃げっぽい。実際クヌートも、結局は現実の汚れ仕事に向き合わなくてはならなくなってる。トルフィンだけが皆が幸せに暮らせる大地を手に入れられる道理はない。
だからって絶望してもっかい放浪させたり抜け殻にするっていうのも違う。くどくなる。
戦士としての再起は、、、大切なものを守るためならありか。。?
宗教の伏線を張ったからと言って、出家っていうオチは、それだけは認めない。許せない。
この物語をどう結んでいくのか。
見逃せない作品に出会えたことを、北欧神話の神々に感謝。
カプラ!!
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[投稿:2013-08-26 03:36:42] [修正:2013-08-28 01:53:41] [このレビューのURL]
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