「B・A」さんのページ
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はんずめまして。
ここでは見る価値のあるオススメ作品だけを取り上げていければと思っています。
得点は独自の採点基準として、
10点はマンガ界屈指の名作
(マンガの歴史に残るだろう作品)
9点は誰にでもオススメできる傑作
(時代を代表する作品)
8点は読んでて夢中になる作品
(個人的に大好きで、特に話が面白いと感じる作品)
7点は多少難があれど見るべきところがあるオススメ作品
(お話的にはそれほどでも、絵柄とか何か一つが突出している、語られるべき作品)
といった感じで評価させて貰っています。
7点だから10点より下、という意味ではなく、あくまで自分がどう思っているかの基準なだけであって、例えば7点を付けた作品でも10点の作品より好きだったりすることも結構あったりします(笑)。
ここまで読んで頂いてお分かりでしょうが、基本的に好きなマンガをレビューしています。
面白くないマンガをいくらけなしたって、仕方ないですから。
だからいつも点数は高めです。
なぜならそこには愛があるから(笑)。
なんとなく月に1,2回のペースで書いています。
よろしくお願いします。

9点 バガボンド
『弱点は残されつつも、その長所が限りなく伸ばされた作品』
この作品を読んだ時、微妙に違和感を感じます。
それは主人公や他の登場人物に共感出来ないからです。
剣の道をひたすら追求する武蔵、剣を交えることで相手と交流する小次郎、その他又八や胤瞬や伝七郎など様々な人物が出てくるのですが、どうにも入り込めない。
なぜ『スラムダンク』のようにはいかないのか?
それはある意味で、作者井上雄彦の弱点を露呈していて、今までやっていた少年誌の文法をそのまま青年誌へ持ってきたことによる違和感を解消できなかったことが原因だと思います。
ただ、じゃあ出来上がったものをみてどうかと言われると
さすがに他の凡百のマンガとは比べられない抜きん出た作品であると思います。
事あるごとに読み返すし、読むたびに惚れぼれしてしまいます。
では(僕が感じる)弱点とは何か?そしてどこに惚れたのかを語らせて頂ければと思います。
●短所、少年誌の文法とは
少年誌の文法とは、特にジャンプ系で顕著なのですが、まず魅力的な主人公をつくり、それをどれだけ際立たせられるかにほぼ全ての力を降り注ぐというやり方です。
『ドラゴンボール』の後期などが顕著ですが、目の前の戦いにすべてのエネルギーを注ぎ込むために、その後の展開という広い視野で語ることが出来ない作り方を(ほぼ意識的に)しています。
もっと簡潔に言うならば『魅力的な主人公に共感できる』のが少年誌の特徴であり、『人物だけにスポットを当てるのではなく、ちゃんとお話として楽しめる』ことに注力しているのが青年誌であるとも言えるのです。
ただ、ひとつだけ言いたいのは、『だから少年誌系がダメ』という訳ではないということです。僕個人もそういうジャンプ世代で育ちましたし、その魅力は青年誌にはないものだとも思っています。
●では『バガボンド』の短所とは
『スラムダンク』という誰もが認める名作を世に出した後に、作者井上雄彦はモーニング誌上にて『バガボンド』を発表して皆を驚かせました。
それはあの吉川英司の『宮本武蔵』かという驚きと、井上雄彦が青年誌に来たのかという驚きでした。あの絵のうまい人が宮本武蔵を描く。まるで王道中の王道のような作品です。面白くない訳がない。
ただ読み続けるうちに、妙な違和感を感じました。なんとなく感じる居心地の悪さ。
それは後になって気づくのです。これは共感するマンガではないんだって。
武蔵はひたすら剣の道を追求していきます。それこそ流川楓のように、桜木花道のように。
けれどそれは『どうやれば人を殺せるか』という手段の追求であり、途中から武蔵が一生懸命悩んでいるのは、簡単に言えば『人を殺していい理由』を求めているからです。
それが少年誌で連載されるバトル物であれば問題なかったと思います。
けれどここは青年誌で死という概念がもっとリアリティをもって描かれている舞台なのです。斬れば腕はちょんぎれますし、やられた人間は実は生きていたなんてことも出来ません。
一生懸命悩んだとして、その結果相手と殺しあうという構図は一体どれほどの共感を得られるのでしょうか。
もし青年誌として描くのであれば、そこに持ってくるのは共感ではなく、何を考えているのか分からない(むやみに心の中を覗かせない)人物を描くべきだったんじゃないかと思うのです。
例えば伊藤一刀斎のような常人にはなかなか理解しがたい人物を描く方がうまくいった気がするのですが、それはまぁ後だしジャンケンみたいなものでただの難くせなのかもしれません。
●では『バガボンド』はどうだったのか
ではバガボンドはどうだったのか。
僕はとても好きです。これだけグダグダと文句をつけてもやっぱり絵の素晴らしさというのはかけがえのない魅力です。
特に後半にかけての凄みが尋常ではありません。
青年誌ということもあり(ここではこれがいい方向に効いています)、実際自分の目では見たことのない斬り合いをリアリティたっぷりに感じることが出来ます。
特に斬り損ないの描写がいいんですよね。
ちゃんと振らないと斬れなかったり、斬り過ぎて刀が曲がってしまって鞘に収められなかったりと今まで小説では読んでいたけども、マンガでは見ることの出来なかった描写をふんだんに取り入れ、それが余計に命のやり取りをしているんだという切迫感を増してくれます。
とくに吉岡一門との対決は、あの長い分量を使ってひたすら切り結ぶという
『スラムダンク』のラストを彷彿とさせる、いやそれを越えたといっても過言ではなくくらいすごい描写でした。
あの徐々に疲弊していく武蔵に、次々と殺されていく吉岡十剣たち。あの迫力は他のどんなメディア(小説、アニメ、映画等々)にも優るとも劣らない素晴らしい出来だったと思います。
それだけでも青年誌で描いた意義はあると思います。前半と矛盾しますけど。
これからバガボンドは小次郎との対決に向けて終局へと近づいていくわけですが、それがどんなラストになろうとも、ここまでですでに語るべき作品になっていると思います。
もし少年誌でバガボンドを連載してたらどうなっていたかな、ってちょっと思いますけど(笑)。
ナイスレビュー: 0 票
[投稿:2010-08-10 05:36:06] [修正:2010-08-10 06:03:20] [このレビューのURL]
9点 NARUTO-ナルト-
最新51巻で累計1億冊を超えたバケモノマンガです。
これだけ多くの人に読まれているには、それだけの理由があると思います。現に僕自身毎回単行本が出るたびに買ってたりしますしね。
ただこれもバケモノマンガの「ワンピース」と比べてすごくバランスが悪いのも事実なんですね。
バトルや設定、話の展開が心躍る一方、キャラ描写や話の展開(今度は悪い意味で)にもクセがあり、その両方が目に付くからか、多くの人に賞賛とバッシングの嵐を巻き起こしているのではないかと思うんです。
まずは好きな部分。
これは単純に色んな忍術が出てきて楽しいです。おしまい。
…て訳にもいかないのでもうちょっと説明。たくさんのキャラクターが敵味方問わずに出てきて色んな技を出すって単純だけどそれだけで面白いです。キン肉マンに夢中になっていた頃は新しい超人のかっこいい技が出るだけで、もう嬉しくってたまらなかったのを思い出します。実際毎週のように新キャラを新しい技と共に作り出すのって本当大変だと思います。
それに「ジョジョ」「ドラゴンボール」「忍空」「うしおととら」「ハンターハンター」など順当に影響を受けて(良くも悪くも)その遺伝子を引き継いでいることもプラスになっているのではないでしょうか。
ジョジョが生み出した能力対決が忍術にすり替わっただけ、という見方もあるでしょうが、それこそそれで面白くなればいいんじゃないかとも思うのです。
発明なんて最初の一人しか出来ないんですから。
ただお話の部分になってくるとちょっと話が難しくなってくる。さっきも言いましたが、いい部分と悪い部分がどちらも大きすぎて一方だけを語るのが適当ではなくなってしまうからです。
忍者学校から中忍試験、そして大蛇丸から木の葉くずしと大きな話の筋はとても順当で、正しい流れだと思います。自分(ナルト)の世界が徐々に広がっていき、使える忍術も広がり敵も強大になっていきます。
それ自体はとても正しいと思えるのですが、いかんせん色んな部分にご都合主義が目に余ってしまうのです。
それは一つは世界観。
いわゆるナルト達は敵の情勢を探る忍者ではなくて金で雇われる傭兵の国として存在しているのだけど、それにしてはあまりにも国の外、つまり忍者ではない世界を描かなすぎるんじゃないかと思うんです。
それを描くことによってこの作品で描きたかったテーマを生かすことが出来るし(僕が思うこの作品のテーマは後述)、だからこそ忍者に生まれてきたことの悲哀みたいなことを出せるんじゃないかと思うんです。
忍者、忍者というわりにやっていることはただの潰しあいに見えて個人の私怨の為に国が滅ぶ危機が起こりすぎるのは、もうちょっと大人が何とか出来ないものか、なんて思ったりもするんですよね。
あともうひとつ、ナルト世代の異常な強さがあげられるんではないかと。
これもご都合主義でそういうもんだと言う事も可能ですし本筋からはずれるんですが、実は結構重要な部分だったりします。
よくありがちな最初の中忍試験をがっつり描きすぎてみんながすごくなりすぎちゃった感じになってしまったのですが、それにしても毎年中忍試験はやるはずでだからこそ火の国は回っていってるわけです。
後の砂影になる我愛羅は例外としても、その他の忍者達はあっという間に世界のトップクラスの敵忍者とタイマン張って勝ってたりします。
この世界にとってはナルトとその仲間と教えてくれる先輩、親世代。それしかいない訳です。その他はもう無きが如くといった感じで、そのせいで世界観がより縮こまってしまったのではないかと思います。
ただ多少の世界観の小ささはどうであれ、ここまでテンションを高めながらこれたのはやっぱり並大抵のことではないと思います。
これもきっとワンピースの作者にも言えることだと思いますけど、終わり方、終わらせ方のビジョンがある程度出来ているからこそ、そのテンションが続くのだと思うんです。
『はじめの一歩』も面白いし、その巻数も多いのですが、『ナルト』『ワンピース』とは違って明らかに終わり方とか何にも(あるいは一歩と宮田くんの対決ぐらいしか)考えておらず、話があっちいったりこっちいったりしています。けれどむしろそうなるのが普通なので、単行本を50巻越えて一本の話を作ることなんて、もうそれだけで両手をあげて降参するしかないくらいすごいことなんだと思います。
あと、このマンガで一番チャレンジしているのはそのテーマ性。
僕は『つながり』だと思っています。
登場人物は一様に誰かとのつながりを常に意識しており、それが絶たれた状態をナルト、サスケなどの『孤独』を表し、誰かと繋がっている状態を火の国の絆や仲間で現し、それを紡いでいくことを世代間の引継ぎであらわしている。
あくまですべては『つながり』を意識して作られ、それは今までの少年マンガではなかなか無かったテーマではないかと思うのです。(仲間意識とか孤独だけとかはありましたがそれらを包括してのテーマではなかった訳です)
少年マンガに限らず、どうしてもお話を見るとき個人としての考えや行動に目がいってしまうものです。それを全体で感じさせようとするチャレンジは、それが成功していなかったとしても高く評価されるべきではないでしょうか。
ある意味一番ジャンプマンガらしいとも言える作品かもしれません。
不満もありますが、やはりよきにつけ悪きにつけ一流のマンガだと思います。
ナイスレビュー: 1 票
[投稿:2010-05-03 12:36:29] [修正:2010-06-09 22:15:19] [このレビューのURL]