「shutaro」さんのページ

総レビュー数: 23レビュー(全て表示) 最終投稿: 2005年10月20日

8点 MONSTER

メインとなるミステリーの周りに、上質なショートショートを
絡ませ、徐々にそれらとともに一つの着地点へと収束していく作品。
脇の人物の背景描写にいきなり飛んだりするので、やや散発的な嫌いはあるが、
それでも物語に引き込んでいくのは、その絶妙な間の持たせかたや、
そしてこれまた絶妙な謎の残し具合のおかげである。まさに絶妙。
またそういったストーリー構成の見事さもさることながら、テーマも
興味深いものであり、大人の鑑賞に堪えうる作品だと感じた。
少し時間を経てからもう一度じっくり読んでみたい漫画。

ただ、「もうひとつのMONSTER」は正直言って蛇足だった。
あんなの出すのならもう1巻くらい完結を延ばせよと。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2005-11-03 21:54:42] [修正:2005-11-03 21:54:42] [このレビューのURL]

[ネタバレあり]

前作「海猿」でも感じたのだが、この人は葛藤を描くのがとても上手い。
無駄を省いたピンポイントのセリフと内面描写が、過剰なまでの強烈な絵と
相まって、もの凄く濃いドラマを形成している。
主人公の苦悩もさることながら、医師対患者や医師対医師との間で
起こる価値観と価値観のぶつかり合いが大きな見所であり、さらにそこから
価値判断の根底となる人間のエゴを暴き出そうとする筆致は、時に見ていて
痛々しい程に内なる激情を揺さぶられる思いがする。

久しぶりに漫画を読んで泣いてしまった。辛い展開山盛りの「がん医療編」で、
最期の彼女なりの「死に様」とその家族なりの受け止め方を見て、「あざとい
演出だなぁ」と思いながらも文字通り涙が流れてしまった。
「BJへの冒涜だ」とか「医療考証がなってない」とか「実際の現場と
かけ離れてる」とか言ってもしかたがない。
セリフに感動しストーリーに泣いたのだからこの点数である。

一部で騒がれたが、個人的にはこのタイトルはアリだと思う。
表現や手法は違うものの、しっかり受け継いでいこうという気概を感じた。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2005-11-03 19:46:05] [修正:2005-11-03 19:46:05] [このレビューのURL]

8点 寄生獣

これぞ名作といった感のある90年代を代表する有名SF漫画。
絵は古臭いと言うか淡白ではあるが、SFとしてのエンターテイメントを
追求した構成・演出とメッセージ性がとてもバランス良く織り交ぜられており、
SF設定やスプラッタ描写の適度さもさることながら、登場人物や
ストーリー展開にまったくもって無駄がなく、とてもスマートに仕上がっている。
やや後付け的に「環境問題に対する姿勢」などのテーマが出てくるものの、
「人とは」「生きるとは」といった主題を掲げ、それを一応の形ではあるが、
エンターテイメントと両立しつつ処理し描ききった事はとても素晴らしい。

ハラハラドキドキとSFを楽しみながらも、読後に考えさせられるタネを
与えてくれる、まるでSF漫画のお手本のような岩明均の大代表作。
(個人的には「七夕の国」の方がオススメですが)

ナイスレビュー: 1

[投稿:2005-10-26 14:53:16] [修正:2005-10-26 14:53:16] [このレビューのURL]

[ネタバレあり]

「寄生獣」を期待すれば拍子抜けするであろう地味なSF物語。
核となる謎やそれを追う展開はあるものの、エンターテイメント性はあまり
なく、主人公も「活躍しない」ことで活躍する能天気な大学生だが、
それを補って余りあるほど想像以上に深く哲学的な作品でもある。

主たるテーマは「主体性」だが、そこから広がる死生観や宗教観を物語に
絡ませていく手法は素晴らしい。特に「窓の外」と言う言葉は、いわゆる
神の領域である不可知なるものを感覚的直感的に捉えた見事な表現である。
また、登場人物たちの行動がそれぞれ示唆に富んでいて興味深い。
立ち止まって考え、力を使う者は死して再生する事を選択し、
立ち止まって考え、力を使わない者はその人生を切り開かんとし、
立ち止まって考え、他に力と自らを委ねた者はあっけなく排除され、
考える事をやめ、流される者たちは畏怖と盲信の檻の中である。
これらの行動を見事にSFと伝奇的な物語とに融合させている。

忙しく生き急ぐ方々にぜひ一度立ち止まって読んでもらいたい。
現代の主体性を欠く風潮に喝を入れるばかりか人生訓から哲学までもが
入った、4巻と短いながらも考えされられる名作。

ナイスレビュー: 4

[投稿:2005-10-26 14:15:15] [修正:2005-10-26 14:15:15] [このレビューのURL]

説明する必要もないバトル漫画の頂点。
間違いなくジャンプ黄金期のトップであり「努力・友情・勝利」の方程式を
完璧なまでに作り上げたと言っても過言ではない。
王道でありながらも世界観や設定が抜群に個性的であり、
多くのフォロワーを生んだこの漫画は一時代を築いたまさに名作中の名作。

リアルタイムに連載を追いかけた身なので冷静な評価は出来ないのではと思い、
従兄の10歳の子供に5巻までを貸してみた。その日の夜に残り全巻を取りに来た。
やはり名作は軽く世代を超える。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2005-10-20 16:50:11] [修正:2005-10-20 16:50:11] [このレビューのURL]