「mardonios」さんのページ

総レビュー数: 8レビュー(全て表示) 最終投稿: 2010年10月20日

ヒトラーの生涯を描いた漫画としては、『アドルフに告ぐ』『ひっとらぁ伯父サン』とともに御三家といっていいんじゃないかな。その中でも一番オーソドックスで、かつ一番生々しいヒトラーがこの水木ヒトラーだと思う。

基本的にはヒトラーの生涯をなぞっていくのだが、その中心はナチ党入党から権力掌握、そして開戦までの期間。水木さんの筆にかかると、ヒトラー一味が完全に妖怪にしか見えない。っつっても、鬼太郎ライクな妖怪だ。あまりにも人間的すぎて人間に見えないというやつ。

その中でもお気に入りなキャラは、「ドイツ軍人を疑うことは許されない!」なルーデンドルフおじいちゃんと、自称両刀遣いのレーム大尉。ミュンヘン一揆と長いナイフの夜という、開戦以前のナチスの二大イベントの主役級ということもあって、出番の割にキャラが立ちすぎ。

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[投稿:2010-10-23 07:07:33] [修正:2010-10-23 07:08:06] [このレビューのURL]

水木さんの主観なので事実としては異なるところもあるだろうが、その「わけのわからない怒り」というのは本物だろう。それを当事者でない者が感じ取ることができるのかわからないけど、鬱蒼としたジャングルなどの背景にはそんな気迫のようなものがこもっているかもしれない。生々しいエピソードの数々が生々しい絵で描かれ、もう引き込まれるしかない。

水木さんの戦争体験は『コミック昭和史』などで知ったのだが、その昭和史の多くの部分は、この『総員玉砕せよ』からの引用だった(昭和史の方は人名などが実名になっているが)。このコミック昭和史には『のんのんばあとオレ』の内容なども含まれてるので、水木さんをてっとりばやく知るにはおすすめ。

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[投稿:2010-10-21 00:47:09] [修正:2010-10-21 00:47:09] [このレビューのURL]

前情報ではヒロインのヤエの最終的にとった行動だけがひとり歩きしてさんざん目にしていたので、実際ヤエがどんなキャラなんだろうか、というのをちょっと楽しみにして購入した漫画。結果から言えば、いい買い物になった。

ヤエはとにかく、こねる理屈もあるし好き嫌いもはっきりしているし自分の考えというものもあるんだけど、結局それらの中にあるのは全部自分が自分の思ったとおりにならないことへの苛立ちでしかないというキャラ。すっごい卑小な喩えをすればカ○ジナさん。

主人公の芹生は、ヤエに比べればこねる理屈には筋が通ってるし、苛立ちを他人にぶつけることはあまりないのだが、根本的にはヤエと同じ性格だと思う。この二人が付き合って、お互いイライラして……。まあ嫌な性格のキャラにありがちなのは、読んでいる方は自分を見ているようで余計イライラする。

そのイライラを、後半戦ですっきり解消してくれる。これは暗い漫画じゃないと思う。前半の方が好きだし、澄緒ちゃんよりヤエの方が好きだけど、後半も読まないと消化不良な漫画。あと絵は正直見辛い。味はある。

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[投稿:2010-10-20 22:45:55] [修正:2010-10-20 22:45:55] [このレビューのURL]

ひぐちアサの絵はまあお世辞にも巧いとはいえないものの、なんとなく古臭い絵柄が気に入っているので、ライフワーク化しそうなおお振り以外にもまたこういう短くて内容に凝った作品を読んでみたい。

「家族のそれから」の方はそこまで新鮮味のあるストーリーではないけど、兄妹の子供っぽさと義父の子供っぽさがぶつかったときの微妙な感じが良く、そこそこ面白く読める。

「ゆくところ」は同性愛がどうとか障害がどうとかより、それを相手に伝えて付き合っていかなきゃいけないときの気まずさというか気恥かしさっつー感じの雰囲気が充満していて、ちょっと居心地の悪いものを感じながら読まなきゃいけなかった。

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[投稿:2010-10-20 22:08:04] [修正:2010-10-20 22:08:04] [このレビューのURL]

小学生編か中学生編の頃のキャラなら全員名前を挙げられると思う。それくらい文句なしにスキな漫画。荒唐無稽とか、絵が下手とか、どうでもいいじゃん。俺はシュートし続ける新田とパスし続ける浦辺に心底感動したんだよ。それで充分。

無印キャプテン翼なら、ね。

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[投稿:2010-10-20 11:50:57] [修正:2010-10-20 11:50:57] [このレビューのURL]

基本的に孔子やら子路やら顔回やら子貢やら、陽虎やら狂接輿やら老子やら仏陀やら、どこかで目にしたような名前の人々がどこかで目にしたような台詞を吐いていくのだけど、残念ながら漢文の勉強にはならない。親しみは湧くか。子貢なんか、この漫画に出合うまではただの孔子一派の聖人君子連中の一人としか思ってなかったもんな。

とにかく頻繁に古典から引用された台詞が挿入され、画面を埋め尽くすそれは完全に再解釈されてしまう。さらには現代の宇宙論やら古地磁気学やらが混入してきて頭の悪い俺にはわけわからん。まさに狂気の衒学。圧倒されるためだけに読み返してしまう稀有な漫画。

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[投稿:2010-10-20 11:35:02] [修正:2010-10-20 11:35:02] [このレビューのURL]

孔子暗黒伝の濃さも好きだけど、この暗黒神話の淡々とというか猛然とラストに突き進んでいく感じもまた好き。

初めて読んだときは、高木彬光『成吉思汗の秘密』『邪馬台国の秘密』的な歴史の再構成ものを期待していたけど、途中から何やら狂気の世界にどんどん落ち込んでいくので、どっぷり浸かって気付くと孔子暗黒伝も合わせて4時間くらい熱中していた。

主人公の武に感情移入していると、なんだか誇大妄想な気分に浸れる。読みやすい絵ではないので、あまり疲れていないときにじっくり読むか、すごく疲れているときに一気に読んでぶっとんでみるのがいいと思う。

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[投稿:2010-10-20 07:01:50] [修正:2010-10-20 07:09:11] [このレビューのURL]

古典作品を漫画化するシリーズの中のひとつなのだが、このシリーズの他の漫画の恐ろしいまでの無味乾燥さと、『三河物語』の壮絶なまでの愚痴が組み合わさったらどうなっていたかを考えれば、出典そのままではなく彦左衛門自身の人となりを取り上げたのは、とても上手かったと思う。

安彦良和だから言うまでもなく絵は抜群に上手いし、アリオン以来歴史や神話物の漫画を多く手がけてきただけに、この作品でも江戸時代初頭の雰囲気が丁寧に描かれている。

ストーリーの方は、1巻という短さもあってややあっさりしている感じが否めないけども、キャラクターの良さで全てを許せる。彦左衛門の頑固さや意地の悪さがやがて愛おしいとさえ(ヒゲのオッサンなのに!)思えるようになるのだから。このあっさりとした感じも、読み終えると逆に短い映画を見終えたみたいで良い。

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[投稿:2010-10-20 01:08:17] [修正:2010-10-20 01:10:40] [このレビューのURL]

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