「さぶさぶ」さんのページ

総レビュー数: 19レビュー(全て表示) 最終投稿: 2011年02月20日

 少年漫画という領域からは身体半歩分はみ出している作品。子供が読んで理解できるかどうかはともかくとして、作品としての価値は最高峰だろう。

 運命と呼ぶのが相応しいのか。
 まるで懸糸傀儡のように、翻弄されゆく登場人物達。
 登場人物は皆、残された者――そして読者に何かを残して退場してゆく。

 深い世界観や設定。交錯する人間模様。いくつか矛盾している点や不自然に感じるところがないわけではない。ないのだが――それらを笑い飛ばせるだけの力がある。
 キャラクター、と呼ぶのは不適切だ。そう思うほどに人物に背景がある。過去がある。願いがあり、相反する絶望を背負っている。
 それでも何らかの意味を手に入れ、彼らは笑うのだ。最後の瞬間に。

 前作「うしおととら」よりも画力は上達しているが、反面読みづらいと感じる方も少なくはないだろう。
 また、女性のスタイルが若干誇張され過ぎではないか、と感じることも事実である。
 しかし、それらに寄るところもあるのだろう。
 風圧を体感させるほどの圧倒的迫力、その喜怒哀楽が読者の元へ直に届くキャラクター達の表情――それらは、まとまっているだけの作品には存在し得ない、独自の魅力だ。

 心に直接届く言葉。
 刃物のように鋭いものもあり、水滴で岩を穿つようなじわじわと来るものもあり、握りしめた拳のような衝撃もあった。
 
 構成も素晴らしい。
 が、連載向き――特に週刊少年誌という分類――ではなかったろう。
 ジェットコースターの登りが緩やかかつ長過ぎる。コミックでイッキ読みする分には気にならないのだが、連載を追っていた人間には辛かったのではないだろうか?

 残念に思うのは中盤の盛り上がりが極大過ぎて、終盤にそれを超えることができなかったことか。盛り上がり方が逆ならばもっと一般的な高評価にも繋がったかも知れない。

 ハマる人はハマる。そんな言葉が何より相応しい一作。
 苦手な人が多くいるのも理解はできるが、私にとってはこの作品は最高のものだ。
 どうか食わず嫌いだけはやめてほしいと思う。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-02-21 13:17:56] [修正:2011-02-21 14:18:34] [このレビューのURL]

10点 TISTA

 まるでフランス映画のような作品。

 少年は少女と出会い。
 少女は少年と出会う。

 積み重ねてきた過去への葛藤。手遅れになっていることへの恐怖。血で染まった手。
 その全てを読者の心に暴力的に塗り付けるコマ割り、タッチ。

 銃声が静寂を撃ち破るのが聴こえるような戦闘。移入ではなく同化する、キャラクターと自分の感情。
 ――脳髄に刻まれたようなナレーション。
 その全てが、新人とは思えない領域である。

 僅か二巻。それでも読む価値は十分過ぎるほど。これにハマったら遠藤先生が現在連載中の「月華美刃」もオススメです。

 ジャンプ本誌での読み切りで、遠藤先生に出会い、ジャンプスクエアを本作が連載するからこそ買い始めた私に取って、本作の終了は悲しい知らせだった。

 漫画が嫌いだと言う人にも読んでもらいたい。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-02-21 12:32:49] [修正:2011-02-21 12:33:19] [このレビューのURL]

 この作品が終わった時。私は面白いことが永遠に続くわけではないのだと知った。
 それは誰しもが、どこかで何かで感じることだと思う。例えば2時間のアニメ映画かも知れない。または遠足や旅行だったりするかも知れない。
 私にその哀愁を教えたのは間違いなく、この作品の最終回だった。

 立場も性格も異なり、敵だった者たちが集い友情を育み、気付けば互いに命を掛け合う仲になる。彼らの互いを思う気持ちは、それぞれの吹き出しの中にしっかりと詰まっている。大きな戦いの最中に描かれる日常は、過酷な戦闘の中で清涼剤としての役割を果たしていた。
 少年漫画に大きな変革を齎した作品のひとつだろう。悪役の心理を描き読者に彼らへの共感を与える、ということがそもそも当時の少年漫画においては邪道であったように思う。
 勝敗も一辺倒ではなく、決着は意外性を忘れない。能力バトルも描いており、その中で強力な力を持つ主人公達が脆弱な悪役に振り回されるという構成は非常に印象的だった。

 個人的には最も終わって欲しくなかった作品だが、現在の全19巻が最も美しい形であるようにも思える。
 そんな相反する感情を抱かせるとは何とも罪作りな奴である。

 好きなキャラクター。飛影と骸。後、蛍子ちゃんのお尻あたりに「てんで性悪キューピッド」の匂いがあって素敵。
 好きな話。戸愚呂編と仙水編は甲乙つけ難い。最終編も賛否分かれるでしょうが、個人的には賞賛してる。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2011-02-21 11:40:20] [修正:2011-02-21 11:40:23] [このレビューのURL]

 部毎に味の変わる本作を、まとめてレビューするのはなんとも難しい。

 子供の頃は正直怖かった漫画だった。タイミングが悪かったのか、丁度キャラクターが惨たらしくが死ぬ場面だったからだ。ほとんどのコマに血が映っていたし。

 しかしある程度成長すると、こういった劇画調の絵柄に対する忌避感が薄れた。
 有名でもあるし読んでみるか。そんな風に気楽に考え読み始め、後は好きな方ならお分かりの結末に至ることになった。

 スペックの優劣が勝敗の決定的な差にはならず、互いに搦手、イカサマのような策略を用いて戦う――所謂能力バトルというジャンルの先駆け的存在だろう。
 厳密にはバトルという分類に入らないような「戦い」も決して少なくなく、この膨大な巻数にも関わらず飽きることはない。

 ……ただ、少年漫画と呼ぶにはちょっと……。
 どちらかと言えば青年漫画に近いと思う。ストーリーや台詞回しはともかく、そのバトルの難解さや絵柄の濃さはやはり人を選ぶだろう。
 また、前述のように部によって別物なので、その内のひとつが合わなくても他の部を面白いと感じることはあると思う。それほどまでに違うものだ。

 味方は「黄金の精神を宿し」、敵は「吐き気を催す邪悪」。そんな言い回しが大好きだ。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-02-21 10:48:31] [修正:2011-02-21 10:48:31] [このレビューのURL]

10点 寄生獣

 ランキングの上位にいるので、私も乗ってみます。

 この作品の魅力は、パラサイトという人間に寄生する異種生命が人間に与える様々な衝撃を、僅か十巻という長さに無駄なく収めきった点。
 やはり巻数が多いと敷居が高くなる。十巻というのは友人を勧誘するにも気楽な長さかと。

 主人公新一は、右手にパラサイトを宿すことになってしまい、彼にミギーと名付け、パラサイトと出会い戦い、成長していく。
 こういった種族間の争いなど心理的な描写が味である本作だが、新一とミギーによるバトルも迫力があり、逆転要素もありで拳を握ってしまう。

 パラサイトの身体が変形するシーンなんか、幼い頃に見たら軽くトラウマになってしまうだろう。
 多感な時期に一度見て、嫌な思い出がある方も、どうかもう一度手に取って読んでみて欲しい。

 人間を食べる必要のあるパラサイトと人間の生存競争。共存の難しさ。
 これはやはり命題としては難しく、だからこそ、この作品は価値が高いのだと思う。
 説教臭いわけではなく、作品全体に問い掛けられているような気分。漫画というジャンルの価値を一段階引き上げた作品と言っても過言ではないだろう。

 絵柄は味がある、その表現が一番似合う。登場人物の表情を、その内面に応じて描けるのはただただ凄い。

 終盤。寄生獣という言葉による衝撃は、今も憶えている。

ナイスレビュー: 2

[投稿:2011-02-21 10:35:56] [修正:2011-02-21 10:35:56] [このレビューのURL]

10点 SLAM DUNK

 バスケ漫画。そのカテゴライズにおいてこれ以上に有名な物は存在しないだろう。

 当時小学生だった私が、高校という存在を人外魔境の地であると錯覚したのも無理はない。
 登場人物すべてが日本人離れした骨格だ。

 初期こそ、絵が拙いがそれを勢いでカバーしており、中期以降は安定しながらも無類の迫力を持つ絵柄で私たちを魅了した。
 当時学生だった男子には、この作品でバスケを知り、レイアップに挑戦してその難しさに驚愕したものも数多くいるに違いない。
 ――そして私もその一人だった。

 スピード感と重量感を兼ね備えたそのタッチ。
 静かである筈の自分の耳に響く彼らへの歓声。

 当時連載していたものを追っていた、というだけの人にはもう一度。
 読んだことがないという人には良い物を。
 既に持っている人は探してみて。

 ともに、あの数秒を共有しよう。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-02-20 18:13:08] [修正:2011-02-20 18:13:31] [このレビューのURL]

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