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零細街金の冴えないサラリーマン春居。
日々店長や同僚に舐められながら顧客の為に汗をかく。
しかし、それは世を忍ぶ仮の姿。
その真実は法で裁けない悪を裁く魔術師ドクター・フー。
散りばめられたマジックの小ネタが楽しく、お裁きではさらにド派手なマジックが映える。
サラリーマンの日常編とドクター・フーのお裁き編のコントラストは陳腐とはいえ解りやすくて面白い。

中盤からはドクター・フーの背景設定が明かされていき、
彼が悪を裁くのには理由があり仲間がいることがわかる。
彼らはクロブチ機関を名乗る一味で、政界の黒幕クロブチという男が、
日本を掃除するためワケアリの男女を集めた、
暴力と犯罪による正義の執行を旨とした組織であった。
ドクター・フーはその一人というわけ。

終盤では春居でもなくドクター・フーでもない。
彼自身の戦いを描く。

基本的には大した話ではないが、そこは細野不二彦。
人間の醜い部分を嫌にならない程度に織り交ぜて読んでいて飽きない。
強引な結末もキャラクターに感情移入できていれば許容できる。
良い意味での娯楽漫画と言える。

*雑考
主人公ドクター・フーははっきり言って気持ち悪い。
3億円の豪華マンションに住み夜景を見ながら裸で筋トレしている。
キメ台詞「この債権有効なりや?」もどうかしているとしか思えない。
しかし、それでもなお言動に憎めないところがあって、それが作品全体の救いになっている。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2011-11-29 22:12:32] [修正:2011-11-29 22:16:03] [このレビューのURL]

この漫画家の代表作といっていいんじゃないでしょうか。
美術にあまり興味はありませんでしたが、これを読んで興味を持つ様になりました。
一つの美術に特化せず日本も西洋も色々やるので、自分が興味を持った所を突っ込んで調べたりするともっと面白く、知識も深められると思います。
ただ、漫画としては、おいしんぼ型なので、ラストにかけての盛り上がり等考えると不完全燃焼な感覚を持ってしまいます。
美術の事を取り入れないといけないので仕方ないとは思うのですが、人間の関わり合いという意味では後一歩。
まあ、それを楽しむ話ではありませんがね。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2011-11-25 01:44:20] [修正:2011-11-25 01:44:20] [このレビューのURL]

9点 寄生獣

この作品の、特筆すべき点は着想である。

「それが何か」「それが何処から来たのか」といった疑問に関しての追求はせず、最後まで「それがいる事によって変化する世界」を描き、さいらには「それ」との対比として「人間」の立ち位置を再確認するという手法は、なるほど舌を巻く。

この「それ」を生み出したという着想こそが、この物語の成功と言える。

ただ、それだけでは無い事もこの漫画が、高い評価を受ける所以だ。
一つは、構成力。
しっかりと纏められた物語は、随所に読み手の心を鷲掴みにして離さない。

そして、主人公=最強という王道が存在しない事も面白い。
この物語はあくまでも、主人公=超人的な能力を持ち得ながらも人ひとり救出する事も用意ではない者として描かれている。

故に飛躍的な物語ではなく、あくまで読者と主人公が同じ目線で物語を進める事を可能にした。

そして、最後にこの作者の技量が大変高い事も評価の理由として上げておく。
この物語は、ご都合主義の物語である。
もっとも漫画を問わず創作物語というものは、ほとんどがコレに依存するが、この作者はこのご都合主義を、読み手に悟られないように物語を描く事が非常に上手い。

ここまで、絶賛しておいて何故10点を着けなかったかというと、これは個人的なものなのだが絵があまり好みではない。すこし古くさい印象尾を受けるため減点とさせて頂いた。

絵が好きではないという理由でこの漫画を読んでない人間も多いのではないであろうか?
しかし、一度食わず嫌いを克服して、この本を読んでみて欲しい。
この作品は、絵という弱点を補ってあまり有るストーリーが詰まっている。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2011-11-23 18:39:20] [修正:2011-11-23 18:39:20] [このレビューのURL]

今から書かせて頂く内容はストーリーや画力、構成力などではなく
漫画を読ませる能力についてです。

「週刊少年ジャンプ」と聞いて皆さんは何を思い浮かべるでしょう?
私がまず思うのは「人気漫画の引き伸ばし」です。物語を作る上でこれほど
難しい問題もないでしょう。ジャンプで連載している人気漫画と呼ばれる
作品はすべからくこの問題に直面します。回避するには作者特権で無理やり
止めるか(スラムダンクなど)人気作家になり引き伸ばしを拒否もしくは
打診されない力を持つか(だいたいの人気作家は他誌へ移ってしまう)
あるいは富樫さんの様にフリーダムに生きるしかありません(笑)
さて前フリが長くなりましたがドラゴンボールについて話させていただきます。
長期にわたり引き伸ばしを強制されてきた事で有名ですが、皆さんは
どのあたりまでが鳥山先生の思うドラゴンボールだったかご存知でしょうか?
実はピラフ一味を打倒する所までで7巻に収めるつもりだったと言われています
背表紙で7巻までで神龍が完成している事も確認できます。
それでは今現在連載されている人気漫画を想像してみてください。
7巻で終了するような構成で連載開始している物は一つも無いでしょう
10巻以上もしくは20巻をも視野に入れた組み立て、世界、設定で
描かれています。あくまで個人的な意見ですがそれだけの用意があったにも
かかわらず引き伸ばしを受けた後確実におもしろさが落ちています。
現在連載中の作品が受けている引き伸ばしなどせいぜい10巻から20巻です
35巻もの引き伸ばしを受けた後半のドラゴンボールの方が今の漫画より
確実に読ませるチカラは上でした。キャラクターにしても人気のある
クリリンやピッコロ、ベジータも引き伸ばし後に生まれたんです。
ドラゴンボールは昔の方が面白いと言う言葉を良く耳にしますが、
私の回りで途中で読むのを止めた人は一人もいません
なんだかんだ言いながらも最後まで読んでしまっています(笑)
そして皆味わうのです42巻分の思い出ともう会えない寂しさを・・・

ナイスレビュー: 1

[投稿:2011-11-23 10:07:20] [修正:2011-11-23 10:10:29] [このレビューのURL]

吉田秋生氏の作品は「BNANA FISH」は面白いと思ったものの
他の作品「ラヴァーズ・キス」や「吉祥天女」は買って読んだものの
あまり面白く感じなくすぐに売ってしまい、もう彼女の作品は読まなくて
いいかなぁと思ってました。
が、「海街」にはしてやられました。

物語の視点は主に看護師の幸29歳と中学生すず14歳(二人とも物語の
進行と共に歳を重ねていってる)のものなんだけど、それぞれ興味深い。
すずの視点は両親共に亡くし複雑な環境のせいか大人っぽい所が
あるものの瑞々しく、幸は家庭や仕事柄様々なことを背負ってきた
せいか熟成された所があるけれど頑なだったりして違いが面白いです。

特に一話目が秀逸で幸の「キャパが狭いのを責めてはいけない」って
セリフにはハッとさせられたり、蝉時雨にまぎれて文字には表現され
なかったすずの大泣きに感動させられたり素晴らしい出来。
どちらかというと大人向けの物語ですね。

家族への思いや絆、恋愛など様々な出来事の中に鎌倉の桜や紅葉等の
四季が魅力的に描かれており、それだけでなく昔ながらの野花を植えた
自宅の庭や、梅酒を作って床下にしまったりするなど失われつつある
様々な慣習がさりげなく描かれているのもいいです!

ただ話が進むにつれ、異常に偶然に会うことや、人物達があちこちで
繋がっているのには「ここは人口2000人ぐらいの離島かよ…」と
思ってしまいました。

あと絵柄は相変わらずすっとした線で上手く読みやすいんだけど、他の
年取った作家さんのように目に力がなく、また絵によって左右バラバラの
視線に見え、なんか気になります。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2011-11-22 15:45:43] [修正:2011-11-22 15:45:43] [このレビューのURL]

9点 HOTEL

業界もの漫画の先駆け的存在でありながら、未だにこれを超えるような作品は思いつかないです。

「お客様は神様です」や「申し訳ございません」連発などのイメージもありますが決してそんなことはなく、
ホテルマンを聖職者扱いせず、綺麗事だけではない本音の世界が描かれていて非常に興味深いです。
最初っから客を疑ってかかったりとか(まあそれもどうかと思いますが)。

最初の頃はホテルを舞台とした群像劇、途中からは従業員をメインにした業界ものとなっています。
東堂マネージャー、もしくは若手社員の赤川くんも一応の主人公格となっていますが、
二人が出てこないことも多く、それどころかホテルの従業員が話にほとんど絡まないこともあります。
言ってみれば、ホテルに泊まる人、ホテルで働く人、ホテルを一時的に利用するだけの人、
それら全ての人に様々な角度からスポットを当てて見事に描き出した傑作。

人の生死にまつわるような話ではないですし、単にホテルを利用する人とその従業員という構図は
どうしても淡々と落ち着いた内容になってしまいがち。
ただ、100組の宿泊客がいれば100通りの物語があります。 同様に従業員の数だけ物語があります。
宿泊の話はもちろん、ホテルのフロント、クローク、バンケット、照明、営業、設備点検、ドアマン、厨房、
客室係、経理、庭師に至るまで様々な職種の人たちが主役となり、様々な物語を織り成していきます。
確かに派手さはないものの、これほどまでに安定した面白さで多彩な物語を描けるのも巨匠ならでは。

当初は作者が群像劇を意識しすぎたのか、話によって出来不出来の差がかなりあります。
従業員メインの話になってからは、東堂さんの仕事っぷりがほぼ完璧に近いので、同じ社会人として
本当に感心するばかり。 ただその点での面白みには欠けるところがあるかもしれません。
作者もそれよりは、危なっかしいながらもどんどん成長していく赤川くんや、たまに男を見せる
松田さんの方が話作りがしやすかったのかも。
まあ基本的には毎回ハッピーエンドを迎えるために話が上手くいきすぎる感も結構ありますが、
それでも途中からは話にどんどん厚みを増して、手が付けられないほど面白くなってきます。

とりあえず念のため、当たり前ながらこの作品はフィクションです。
あまりのリアリティゆえにまるでこんなホテルが実在するような錯覚に陥ってしまうかもしれません。
業界もの漫画では、その内容の真偽はともかく(素人には判別つかないので)、いかにも本当だと
思わせてくれるような確固たるリアリティを持ったものが個人的には良い作品だと思います。
そういう意味で、やっぱりこの作品を超えるような作品はなかなか出てこないでしょうね。

文庫版表紙での世界の一流ホテルの写真も雰囲気作りに貢献していて素晴らしいです。
一流ホテルでの人間模様と舞台裏を見事に描いた、格調高いながらも庶民的な趣もある傑作。
巨匠の代表作と呼ばれるに相応しい作品です。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2011-11-22 01:37:16] [修正:2011-11-22 01:42:55] [このレビューのURL]

大人になると知らず知らずのうちに自分の発言や思考、行動を正当化したがる。
まあそれは今までの自分の経験に基づくものでもあり、それはそれでいいと思うのだけど、
その考え方に固執してしまって他の人の意見を排除してしまいがち。

大人とはまた違った角度で物事を見て判断する知世の視点は、
時に斬新で、時にその発想が懐かしく、時に目を背けたくなるようなところをグサッと突いてくる。

知世は手探りで懸命に頑張るお父さんを見て色々なことを感じ取り、教わり、のんびりと成長していく。
「Papa told me」とはよく言ったもので、お父さんは知世にたくさんのことを伝えようとする。
でもそれだけではない。 お父さんはそれ以上に知世の話を真摯に聞く。 一人の人間として。
「所詮は子供の言うことだから」とか「子供は親の言うことを聞いていればいい」なんていう発想は
微塵もない。 子供だって大人と同じように、もしかしたら大人以上に何かを感じ取り、考えているから。
そしてお父さんもまた知世から色々なことを教わり、学んでいる。

世の中には心無い人もいて、でもそういう人たちは自分のことがきっと見えていなくて、
彼らの心無い言動が知世を攻撃する度に、読んでいて何だか申し訳ないなという気持ちで一杯になる。
しかし知世の感受性はそんなものに負けはしない。 いつも強く、逞しく、そして、微笑ましく。
作者の照れ隠しなのか単にこういう芸風なのか、どこかはっきりとせず靄がかかったような空気だけど、
どこまでもテーマはぶれず、優しさと暖かさとが慎ましやかに伝わってくる。
単行本の巻数が一桁の頃なら10点を付けてもいいかもしれない作品。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2011-11-22 01:32:40] [修正:2011-11-22 01:33:27] [このレビューのURL]

『アウトランダース』『キャラバン・キッド』の流れを汲む作品で、掲載誌であるWINGSの読者層とのマッチングはどうだったのだろうかと当時から思っていました。

物語は典型的なこの時期の真鍋作品で、可愛い女の子が大活躍する活劇の中にギャグパートが差し込まれる感じです。

物語もシンプルでまとまっていますし、クライマックスにかけての盛り上がりもしっかりしています。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2011-11-17 21:38:01] [修正:2011-11-18 11:59:05] [このレビューのURL]

少年誌的な主人公が困難に立ち向かっていくストーリー展開は競艇のギャンブルという面を打ち消して、イメージをかなり高めたんじゃないかなぁ?と思います。
しかし、いざリアルで競艇を見てみようとするとチンピラ?ホスト?ヤクザ?みたいな外見な選手が多くてなんとも言えなくなるんですが(笑)

競艇部分のストーリーは面白いんですけど主人公の恋愛部分がどうもねぇー
この漫画家は女のキャラクターの作り方に問題が有るんじゃないの?とちょっと思ってしまいます。
波多野のキャラの軽さと、幼馴染の恋人っていう要素で、少年誌の基本的には真面目な展開では、恋愛方面はお約束的なはずなのに、そこに出す女キャラが真面目で健気な・・・どうするのこれ・・・?って思いました。
で、やっぱりグダグダになって、うりゃぁって終わって・・最後はうーん?な展開です。
そこが残念です。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2011-11-17 19:40:20] [修正:2011-11-17 19:40:20] [このレビューのURL]

8点 イムリ

あまりにも壮大なスケールのSFファンタジー。

まるで底が見えないほどに重厚な世界観、複雑ながらもしっかりと練り込まれた設定、
少しずつ謎が解き明かされていくと同時にまた新たな謎が浮かび上がる展開。
歴史や慣習はもちろんのこと、社会の支配体制、生態系や食文化に至るまで綿密に作り込まれており、
「作品世界を構築する」という言葉がこれほど当てはまる作品もなかなか無いのでは。

しかしながらこの作品、困った事に、最初に1巻を読んだ時点では何が何だか全くわからないはず。
最初から全体の構成を理解できるような作りには敢えてなっておらず、しかも用語が複雑怪奇で、
さらには作者の独特の絵柄自体が一見さんお断りな感じなので、もうかなり敷居が高くなっています。
用語も、「カーマ」、「イコル」、「イムリ」、「マージ」、「ルーン」、「デュルク」、「デュガロ」……。
全巻に詳細な用語解説や登場人物説明が載っているので、最初のうちは照らし合わせながら
読んでいくことになるでしょう。
おまけにこの作者の作品はその絵柄のために登場人物の顔が似ていてただでさえ区別しづらいのに、
各々の個性が見えにくく(見えないのではなくあくまでも見えにくい)、非常にキャラを覚えにくいです。
1巻すら読み切れずに断念してしまっても全然おかしくありません。

ただ、そこをがんばって乗り越えると、途中からふっと世界観が頭に入ってくるようになってきます。
そうなると不思議なもので、読むたびにどんどん理解できるようになります。
恐らく意図的にそういう構成になっていると思いますが、この辺りが作者の作り手としての凄さ。
もともと作品の全体的なテンポは良いので、慣れれば今度はサクサク読み進めていけます。

支配民族カーマ、奴隷民族イコル、かつてカーマと戦争を繰り広げたルーン星の原住民族イムリ。
同じ「共鳴」という能力を持っていても、全く異なる方向へ進化したカーマとイムリ。
カーマはその力を他者との共鳴、すなわち他者の精神に働きかけ人の心を操る侵犯術として特化させ、
逆にイムリはその力を物質との共鳴、すなわち「星と仲良くする」ために使ってきた。
イムリは物質の力を引き出すことで恐るべき威力を発揮する「イムリの道具」を持ち、
そんなイムリの力を恐れたカーマはイムリを力で押さえつけて支配しようとする。

大まかに言うとこんな物語ですが、「一つの民族が他の民族を征服して支配する」という作品の構造は
主人公の立ち位置とともに最初のうちはカーマ視点で、そのうちにイムリ視点で描かれるようになり、
単純な善悪二元論ではとても量り切れない深さを秘めています。
SFファンタジーなのに確かに泥臭い空気の作品ですが、失われたイムリの術を解き明かしながら
地に落ちたイムリの民が反乱すべく無骨に立ち上がるというストーリーにピッタリな感じ。
とにかく質の高さにかけては申し分のない作品です。 あとはもう好みの問題でしょうね。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2011-11-16 00:48:20] [修正:2011-11-16 00:53:36] [このレビューのURL]

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