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7点 沈夫人の料理人
食べる事が何よりお好きな劉家の若奥様・沈夫人。
退屈に飽かせて今日も奥様はお抱え料理人・李三を相手にお戯れになる。
基本的には一話完結のワンパターン漫画。
空腹もしくは退屈のために不機嫌になった奥様が李三に無理難題を言いつけ、困り果てた李三が
旨い料理を作って奥様を満足させる、というもの。
李三は忠義に厚く、小心者で、困った事があるとこの世の終わりみたいな表情になって嘆き悲しむという
良く言えば純粋、悪く言えば愚鈍な性格。 密かに奥様のファンでもあります。
そしてこの男、困れば困るほど旨い料理を作るという、ある意味本当に困った男。
この奥様は性格が破綻しているかどうかはさて置き、別に根が悪人なわけでも李三が憎いわけでもなく
彼に意地悪を言うのはただ単に自分の食欲(と、ドSな嗜好)を満たしたいだけ。
本気で悩んで窮地に陥っている李三を見るのは楽しくて仕方ないし、そんな状態の李三が作る料理は
さらに旨くなるしで、李三を困らせることは奥様にとって一石二鳥なのです。
もちろんそれだけでは李三がストレスで倒れてしまうので、上手く褒めることも欠かさずに。
単純な李三はそんな企みに全く気付かず、奥様のアメとムチによって天国と地獄を行ったり来たり。
そういうやり取りが非常に巧みに描かれていて楽しめます。
この作品は料理は当然のこと、服や小物、街並み、文化や生活様式に至るまでその描写が凝っていて、
当時の中国の主従関係の雰囲気も伝わってきます。
主である年下の美人奥様に対して横恋慕なんてとんでもなく、ただただ奥様を心からお慕いする李三。
自分に出来ることは美味しい料理を召し上がっていただくことだけ、という気概で努力し続けます。
そんな料理をパクッと食べたときの奥様の笑顔(と李三をいじめているときの笑顔)が何とも素晴らしく、
奥様の苦労、李三の苦労、それぞれが報われる瞬間というのが読者にもわかりやすくて実に良い感じ。
上記のように基本的にはワンパターンなので、まとめ読みにはあまり向いていないかもしれません。
最初は李三に同情しながら読んでいたのですが、なんか話が進むごとに李三の阿呆っぷりにターボが
かかっていくように思えてイラッとして、途中からは奥様目線で読むようになりました。
李三目線と奥様目線、それぞれ違った楽しみ方ができていいですね。
もっとイラッとさせられる玉潔や李大など味がある脇役もいますので、彼らが出てくる話では
奥様が人格者に見えるという錯覚すら味わえます。
この作品が上手く出来ていると思うのは、料理漫画として中華料理のみに的を絞っていること。
例え同じ近世を舞台にしていても、確かに和食や洋食ではこうはいかなかったかもしれないですね。
食材やその調理法の幅広さでは他に類がなく、薬食同源的な発想で、食で体と心を整える中華。
作り手の食べ手に対する意図が作中でも明確に表現され、よくもまあ毎回のテーマごとに
これだけたくさんの料理を紹介できるなと感心してしまいます。
さてその料理ですが、調理工程から完成図の描写に至るまでとても丁寧に描かれていて、
実に興味と食欲をそそります。 とても秀逸な料理漫画。
ナイスレビュー: 1 票
[投稿:2011-11-16 00:44:09] [修正:2011-11-16 00:46:33] [このレビューのURL]
8点 一平
どのエピソードも非常にレベルが高い警察官を主人公にした人間ドラマを描いた傑作です。
中学生売春AVからシャブにまつわる話まで、警察(刑事)の嫌な役回りを目に出来ますし、片方では剣道の大会の話だったり、ラブコメ調の話だったり、ダイハードみたいな話だったり、非常にバランスが良いと思います。
個人的には名作だと思います。
現在連載しているMOONLIGHT MILEが好きな人はマストで、そうでない人もMOONLIGHT MILEよりも読みやすいので是非読んでほしいですね。
ナイスレビュー: 1 票
[投稿:2011-11-15 22:17:15] [修正:2011-11-15 22:17:15] [このレビューのURL]
6点 ストロボライト
良くできた小品、といった印象です。列車の中でつらつらと記憶をたどって行くと突然第三者が現れ話が急展開する、というのはどこかで見たことがある気がしますが、個人的には好きな展開です。寄せ集めでもなく打ち切りでもない一巻で綺麗に終わっている意外とタイプの珍しい作品です。この作品もSWWEETと同様主人公が一歩前へ進むところでENDとなります。
ナイスレビュー: 1 票
[投稿:2011-11-14 02:05:01] [修正:2011-11-14 02:05:01] [このレビューのURL]
6点 SWWEEET
これは思い出の中で美化されがちな嫌悪感まじりの「青さ」をよく表現しているマンガだと思います。だからあちこちキツイ描写もあります。抱えきれなくなった過去に端を発する心理描写や、度を超したイジメとか。しかし2巻で密度の濃い話の進め方をしているので集中してすぐ読み終わってしまいます。最後はいろいろと再出発により「救われる」パターンですので、よかったような、ちょっと悲しいようなそんな読後感をもたらしてくれます。
絵は初連載という言い訳は無用なレベルだと思います。
ナイスレビュー: 1 票
[投稿:2011-11-08 20:46:16] [修正:2011-11-08 20:46:16] [このレビューのURL]
7点 YAIBA
確か小学館漫画賞を受賞していたと思ったのだけれど、そのときの審査員のひとりにあの「石ノ森章太郎」先生がいらっしゃって、面白いと絶賛していましたね。
マンネリ化しているコナンよりもスッキリと終わらせているのも好印象。話としてはもっと続けることだってできたはずだが、敢えてそれをしなかったのだろう。
見所はかぐや編のかぐやとの対決。そして地底王国での戦い。最後にヤマタノオロチ上での鬼丸との決戦を挙げたい。次々と出てくる鬼丸一味の怪人がユーモラスで良い。
ゲッコーが封印を解いた「魔王剣」は武器として出色の存在感があったと思う。
「邪悪な心を吸収して破壊力に転化する」という特性には刃も最後まで苦しめられた。
「かぐや編」では魔王半月剣までの使用に止まったのは、後に「鬼丸」が使用者となったときに最大の「魔王満月剣」を放つという布石だったのですね。
「ヤマタノオロチ」もスケールの大きさではとてつもない存在。日本列島自体が竜になる・・・!という展開も確かに日本列島の形を確かめたら竜ソックリだよな、と妙に納得してしまった。
それを操って世界を焼き尽くそうとする鬼丸のセリフも無茶苦茶な迫力があった!
ただコナンの次作で「YAIBA2」とかやり出さないかが唯一の不安点。
ナイスレビュー: 1 票
[投稿:2011-11-06 00:25:49] [修正:2011-11-06 00:25:49] [このレビューのURL]
6点 緋が走る
若い女性の主人公が、男性優位・経験重視の伝統的な陶芸の世界に飛び込み、
経験や苦労を重ねながらも成長していく様を本格的に描いた作品。
古来から焼物大国として栄え、大陸の文化を吸収し独自の文化に昇華させてきた歴史を有する日本。
そんな土への郷愁、窯元の師弟制度、アマとプロの違いと厳しさ、新人や無名陶芸家の辛苦や困窮、
例えば1個300円の湯呑み茶碗を売ることがどれだけ難しいか。
その辺りが綿密な取材に基づく膨大な量の薀蓄とともにしっかりと描かれています。
同じ食べ物でも発泡スチロールの器で食べるのと陶器の器で食べるのとでは感じが全く違いますし、
陶器のジョッキで飲むビールはグラスとはまた違った旨さがあります。
旨い食事と見事な器は切っても切り離せない、言わば「表と裏」の対等な関係。
この作品は萩が舞台なので主に萩焼について触れていますが、備前焼、丹波焼、無名異焼など
代表的な陶器ももちろん登場。 各地の土によってこんなにも性質が違うものなのかと勉強になります。
ただ、私なんてこれを読むまでは陶器と磁器の具体的な違いすらよくわからないど素人だったので、
もうちょっとわかりやすく描いてくれれば良かったかなと思ってしまいました。
不満というほどでもないですが、説明も注釈もあるもののどうも全体的にわかりづらい気がします。
まあ現在の親切丁寧な作りの業界漫画ならもっとわかりやすい構成になっているのでしょうが、
この当時としてはこんなものでしょうか。
あと惜しむらくは展開がちょっと(時々かなり)安っぽいところ。
そもそもこの作品は、萩近辺在住で焼物に没頭していた原作者がある日「夏子の酒」を読んで感動し、
自分でもこんな話を作ってみたいと思ったのがきっかけとのことですが、ジャンルこそ違えど、
やっぱり夏子の酒の二番煎じという評は自分の中で覆せなかったですね。
美咲が独立するまでは話がかなり練り込まれていて面白かったんですが、そこからは料理漫画のように
勝負や対決なんかも多くなり、突拍子もない展開などもたまに出てくるようになってきます。
もっと深い部分まで切り込んで描けたのではないかとも思えますが、陶芸ビギナー層を取り込むために
浅く分かりやすい話に特化したのか、全体的に話の厚みが足りない印象を受けます。
より一層深くて良い作品になり得ただけに非常に惜しい感じ。
とまあ色々書きましたが、少なくとも本作を読んで焼物の世界に興味を持てたのは間違いないです。
これまで食事のときには皿の上のもの(=料理)のみを注目してきましたが、これからは皿自体にも
目を移して楽しむことができるようになったかな、と。
奥が深いなどという言葉では表しきれないほどの伝統を誇る陶芸の世界なだけに、この漫画だけで
語り尽くすのは当然ながら不可能なんですが、入門編としては申し分ない作品だと思います。
萩にも実際に行きたくなりましたね。
ちなみに続編は美咲が青磁を追い求めて世界各地を駆け巡ったりする話。 あんまり萩は出てきません。
ナイスレビュー: 1 票
[投稿:2011-11-05 01:25:18] [修正:2011-11-05 01:51:48] [このレビューのURL]
7点 ひとりぼっち
国書刊行会BDコレクション第二弾。
モノクロのバンド・デシネを紹介するというおもしろい企画がこのBDコレクション。
イビクスではグラデーションのかかった淡い白黒、アランの戦争では過去を想起させるセピア色、そしてこのひとりぼっちでははっきりとした白黒とそれぞれに特徴があって興味深い。
かもめが海の上、そして灯台の周囲をじっくりと飛び回る場面からこの物語は始まる。岩礁の上に建った灯台に一人で暮らすひとりぼっち氏、彼と外界をつなぐものは週に一度食料を運びに来る船のみ。その船とさえ関わろうとしない彼はまさに世界から孤立している。
ひとりぼっち氏のたった一人の友達は金魚、そして彼の唯一の楽しみは辞書を落として偶然見つけた単語を想像する遊び。この隔絶した世界で意外と幸福そうなひとりぼっち氏の日々、しかしいくつかの切欠がその世界を…。
音が、台詞がとても少ない。かもめが飛び、船が波を切り裂き、ひとりぼっち氏は釣りをする。呼吸音すら場違いに感じられて、ふと読んでいる時息を押し殺している自分に気付く。
上手いと言っていいのだろうか、独特で魅力的な絵であることは間違えない。
「BOOM」
灯台の静けさが辞書を落とす音で破られる。その音と共にひとりぼっち氏は誰知らず一人夢想の旅に出る。
ジョギング、ファルス、紙吹雪、オーボエ、キノコ…彼が想像するものは私達が知っているものとかけ離れていてこっけいに感じられる。彼の想像力がたくましいわけではない。想像力とは知れば知るほど無くなってしまうものだ。だから世界と隔絶したひとりぼっち氏は誰よりも想像の地平が広い。
その奇妙な幸福は知ることによって変質する。
「孤独」という言葉を辞書で見た時、ひとりぼっち氏は理解できただろうか?私はそうは思わない。そんな概念は彼にはなかった。なかったのだ…。
知恵(この作品の場合知識と言い換えてもいい)が楽園からの追放、脱出につながるというのはアダムとイヴを髣髴とさせる。あの神話が何を示唆しているのかは知らないが、「ひとりぼっち」では恐らく人間として前向きなものと捉えられるだろう。
しかしそれでも尚、哀しすぎるハッピーエンド。ハッピーエンドと思いたい。
ひとりぼっち氏は金魚を海に逃がした。広い世界を知ることを願って。金魚は海で生きていけるのか? 彼が世界に蝕まれないよう切に祈っている。
読み終わったらため息が出ることは保障します。
ナイスレビュー: 1 票
[投稿:2011-11-01 01:33:51] [修正:2011-11-05 01:32:43] [このレビューのURL]
10点 NARUTO-ナルト-
最高の漫画。これ以上の漫画には
いまだかつて出会ったことがない。
ストーリーはしっかりしていて、感動もあり、
伏線が多く、絵もかなり上手い。文句のつけどころがない。
レビューを見て、申し訳ないが低い点数を付けてる
人ほど何も分かっていないと感じた。
マイナス点と思われたところは、深く考えたら
何もおかしくないことに気がつくはずだ。
岸本さんは天才。ラストまで楽しみにしている。
ナイスレビュー: 1 票
[投稿:2011-11-03 00:54:38] [修正:2011-11-03 00:54:38] [このレビューのURL]
7点 外天楼
石黒ミステリーの奇作。
多分この外天楼の感想を見ると、着地点が全く読めねぇ!、みたいなのが多いと思う。それはもちろん全力で同意。ちなみに前評判でそんな話は聞いていたので心構えした上で読んだわけだけど、それでも尚こんな結末が予想できるはずもない。
外天楼という少し奇妙な住宅街で暮らす人々に絡んだミステリー集。エロ本、戦隊もの、ロボット…一つ一つは他愛もない完結した話ではあるものの、微妙なつながりを見せて驚きの結末へつながっていく。
石黒正数のミステリーでちょっと興味深いな、と常々感じているのはそのルーツの謎。
金田一やコナンあたりは古典を中心とした正統派ミステリー、加藤元浩のQ.E.DやC.M.Bは北村薫に代表される日常の謎の血統に連なると思うのだけど、石黒作品は少なくとも私にはそのバックグラウンドを見つけることが出来ない。
何というか、あえてB級を狙っている感じがすごくある。トリックのしょぼさも承知の上だよというような。
でもそれが何か居心地が良くて、意外に悪くない。小説でも問題ないようなミステリー漫画が多い中、石黒正数にしか、漫画でしか出来ない作風ではあるのだし。
前置きが長くなった。今回もそんな作品なのかな、と序盤は思っていたところどんどん妙な方向にずれていく。先が読めるはずないのよ。伏線なんてあってないようなもんだし、展開が予想の斜め上というかもはや異次元だから。
構成はもちろん巧みではあるのだけど、どちらかというと掟破りの上手さが目に付いた。邪道な作品であることは確かなのに何故かそこに嫌味がない。よく分からない場所に連れて行かれる感覚がある。
多分これにはもう一つ原因があって、キャラクターの記号化がすごく効果的なのだ。
ミステリーにおいては日常の謎という例外を除けば人は死ぬ。で、人が死んだら漫画の上とはいえ程度の差はあれど感傷的にはなってしまう。でもミステリーというのは著者の作り上げた美しい構造を理性的に楽しむものだ。だからそのような感情的な部分とは相反する、感情移入することで本筋から逸れる部分もある。
しかしこの外天楼ではキャラクターをどうでも良いような良くないような、絶妙な具合に記号化している。正直死んでも大した感慨は抱かない。なので余計な感情に惑わされずミステリーと取り組み合える、と思えばそういう作品でもない。だって上で述べたように先は読めるはずもないのだから。
結局何がしたいのか分からないまま怒涛の勢いで結末まで突き進む。ふわふわしたまま読み終わり、何がなんだか分からないけど印象は悪くないといった新鮮な体験だった。
究極の出オチみたいなもんだから、正直最初が一番という再読性の高い作品ではない。ジェットコースターに乗った後のように、凄かったけど何も残らない感覚を存分に味わえる。
でもこれは一読をおすすめしたい。そのくらい初体験に凝縮されたおもしろさ。
ナイスレビュー: 1 票
[投稿:2011-11-03 00:11:33] [修正:2011-11-03 00:11:33] [このレビューのURL]
8点 かぶく者
正直歌舞伎なんて興味もなく、ぜんぜん知りませんでした。
しかし知らなくても十分楽しめる作品です。
本当にこんな世界なのか分かりませんが、それでも歌舞伎というものに興味を持つきっかけにはなりうる作品だと思います。
ただ終わり方だけは不満が残る作品でした。
ナイスレビュー: 1 票
[投稿:2011-10-31 17:28:12] [修正:2011-10-31 17:28:12] [このレビューのURL]