「」さんのページ
6点 鈴木先生
非常に繊細な中学生像を描いており、一つ一つの問題はくだらないのだが、ある部分で共感できてしまうので面白い。
鈴木先生というキャラクターは名前の通り没個性的な、しかし「良きスタンダード」として理想とされる教師といった存在となっており感情移入がし易い。
性問題、親子、人間関係も真っ向から冷静な視点で見据え、それぞれの登場人物の視点に立たせ心の内を覗かせる。同時に読者にもある内面の痛い部分にもメスがいれられるのである。このあたりの引き込ませる描写力は見事としか言いようがない。作品全体を通して感じられる部分である。
魅力的なキャラクタが多い鈴木先生だが、一方でその扱い方はあまり好みではなかった。顔の適当さで"良い"人間と"悪い"人間が区別できるのは分かり易いし、まぁ有りだとは思うのだが、あまりにも差が酷い。
具体的には椿とか、足子先生とかなのだが、なんのフォローも無く理不尽に劣った人間として描かれるのは不快であった(竹地あたり人間的に姑息な奴はいてもまあいいかと思えるが)。足子先生に関しては山センのエピソードでやったことを繰り返しただけでも疑問だったのだが、作者でも手がつけられない程暴走していたのに何故復帰させたのかがさっぱりわからなかった。
そういえば、「鈴木先生」には狂人レベルまでいってしまう人物がまま出てきたが、一般的に見てそこまで悪人ではない、普通の人間がちょっとした間違いで道を踏み外してしまうパターンが多かった。この過程はリアリティがあって良いのだが、実際の人物の描き方があまりにも漫画的すぎて非現実的なものに映ってしまっていたのは残念な所、漫画的表現の使い方が巧くなっているだけに生じた歪のように思える。
漫画作品としては、最初が良かっただけに後半には不満が残った。
「掃除当番」のエピソードがピンと来なかった(受け手の想像力の欠如ということではなく、「鈴木先生」の物語としてこれには違和感があった)ことや、盛り上がるはずの鈴木裁判が予定調和的で少し期待外れだったのもあるが、とにかく後半は文字の多さが苦痛だった。ゴー宣とかより多いんじゃないかと思えるほどの文字の羅列、もはや漫画ではない。しかもそれが、やられ役が語った論理を鈴木先生か誰かしらが論破するという形式としてパターン化されていて、先が見えているのに読まなければいけないのも苦痛であった。
結構クサしまくってしまったが、まぁ、不満があったにも拘らず引きつけて読ませる吸引力、作品の持つエネルギーがすごいってことで…
ナイスレビュー: 1 票
[投稿:2011-10-24 17:58:30] [修正:2011-10-24 18:02:00] [このレビューのURL]
8点 ドントクライ、ガール
家族と離別して人間不信に陥った少女が、青年と次第に心を通わせ、真実の愛を見つける物語(笑)。
(ほぼ作中原文のまま)
読む前は全く期待してなかったので、個人的にすごく意外。 まさかこんな面白いとは思わなかった。
作者の代表作である「HER」とかはちっとも合わなかった(むしろ途中で挫折した)のですが、
これは一体どうしたもんか。 ずーっとニヤニヤしっぱなしでした。
男に免疫のない女子高生がとある事情で同居することになった31歳イケメンは、全裸だった。
話の内容としては本当にこれだけ。
基本的に全編下ネタのシチュエーションコメディと言えなくもないですが、この作者は
言葉選びのセンスが抜きん出ていて、それがいちいちツボにはまります。
奇想天外奇天烈なボケよりも、類稀なるボキャブラリーを駆使して心の底からほとばしる衝動を
力の限りにぶつけるたえ子ちゃんのツッコミが痛快でテンポ良くてもう素晴らしい。
そんなたえ子ちゃんもどんどん壊れてきて、後半はまさかのラブコメに突入します。
どうしてそこでそうなるかな、っていう展開なのに、これがまた上手い具合にアホすぎて。(褒め言葉)
最後の方は完全にたえ子ちゃんが主導権握ってますからね。 この辺の描き方も面白いです。
ちょっとだけ残念なのは、個人的にもうちょっと長く読んでみたかったこと。
めちゃくちゃなのに力技で大団円に持って行ってるあたり、個人的には終わるのが早すぎたかな、と。
もちろん笑いの好みは人それぞれなので、特にこういうクセのある作品は万人向けとは言い難いですが
少なくともタイトルと表紙の絵ではこの内容はさっぱりわかりませんね。
この作品、女性からよりも男性からの方がウケが良いような気がします。
と言うかそもそも少女漫画なのかこれ。
また、短編「3322」も同時収録されています。 こちらは一遍変わってシリアスな話。
個人的にはこういうのはあまり好みではなかったです。
タイトルの「3322」の意味がパッと分かる(解読できる)のってギリギリ自分らの世代ぐらいまでかも。
ナイスレビュー: 1 票
[投稿:2011-10-21 00:54:56] [修正:2011-10-22 01:32:12] [このレビューのURL]
地味なキャラばかりだけど、みんな好感が持てる
部員達の会話も面白いし、書道を通して起きるハプニングも楽しい
ただ、入部〜合宿辺りのワイワイやってる感じが一番面白くて、
最近の大会を意識した話はイマイチ
全国レベルの実力者と知り合うのが早過ぎるし、
部員達が格上の相手を意識し始めたせいで、漫画の雰囲気が変わってきてしまっている
序盤のようにもっとギャグをたくさん混ぜてのびのびと書道をやって欲しい
ナイスレビュー: 1 票
[投稿:2011-10-20 03:12:22] [修正:2011-10-20 03:12:22] [このレビューのURL]
7点 怪物王女
はっきり言おう。スタトレ臭が好きだww
シリアス?ミステリアス?ホラー??
どーでもいいw
かの作品に共通した、曲折あって元の木阿弥。ってオチをきちんと再現している。よって、進展はほとんどない。それこそがスタトレ臭w
アノ、両さんも一攫千金を目指していろいろ頑張り、ほぼ手中にする。が、オチはやっぱり元の木阿弥。
もちろん、それでいい。
その程度の作品。
この作品を通して、作者が伝えたいメッセージなどないのだから。
したがって、ドコから読んでも問題ない作品であり、時間の経過とともに作風が大きく変わるということもない。
つまり安定感はある。
キャラも、女性中心で華やかさがある。
一応、メインとなるストーリーは牛歩ながら進んでいるし、打ち切りが決まるまではだらだらと引き伸ばし、決まり次第、ストンと決着を付けることもできるだろう。
キャラの衣装にほぼバリエーションがないトコロは残念。
その意味、竜ボールのブルマって、画期的だったのかもしれないなー
キャラに数がいる上、顔での書き分けがほぼない。その上衣装まで変化させたら読者がついていけない可能性もある。
んが、
是非挑戦してみて欲しいものである。
ナイスレビュー: 1 票
[投稿:2011-10-16 05:03:57] [修正:2011-10-16 05:03:57] [このレビューのURL]
8点 ぼくらの
非常に重たい話ですが、ただただ安易に『死』を扱っている訳ではなくしっかりとした『生』に関するメッセージを込めた読みごたえのある漫画だと思います。
一人一人に順番に焦点を当てていく話の進め方なので途中だれるかな、とも思いましたが上手く謎が散りばめられていて、伏線も上手く張ってあるのでとても楽しめたし、繰り返し楽しめました。
この作品でこの作者の他の漫画も読んでみようかなと思いましたが、『なるたる』のレビューを読んでると結構びびったのでやめときます。
ナイスレビュー: 1 票
[投稿:2011-10-15 03:18:44] [修正:2011-10-15 03:18:44] [このレビューのURL]
5点 よいこの黙示録
(追記)
2011年10月12日
ご冥福をお祈り致します。
素材は面白いのだが全体のバランスを欠いている。
キャラクターとストーリー、話言葉と絵に感じる不協をどうしても拭えない。
あらすじとしては新人女性教師が担当するクラスで宗教が立ち上がる(立ち上げられる)というものだ。小学生という多感な時期に「奇跡」を見せることで「羨望」から「畏怖」を経て「信仰」に至るというプロセスは面白い。冒頭で「充足」から「崩壊」に向かうことは明記されており、それが外圧によるものか分裂によるものかはこれからのお話というわけだ。
残念なのは核となる登場人物の言動だ。
新人教師は経験不足ということもあり、宗教を立ち上げようとする生徒に振り回される。時に協力してしまい、自分の行いを自問している。
つまりヌルイのだ。話の本筋に関わる唯一の大人として、常識や抑止といった社会側から切り込むのかと思いきや、結局は懐柔されている。これでは傍観者以下のご都合主義のお手伝いさんでしかない。
もう一人、同級生を教祖に宗教を立ち上げようとする小学生の言動も違和感を覚えてしまう。劇場型と言うべきか、大仰な言回しに大胆な行動。本当に小学生かと呆れてしまう。
同作者のSWWEEETでも感じたことだが、(大変失礼だが)漫画じゃなく小説を書いたほうがいいのではないかと思う。所々の表現にグッとくるだけにもったいなく感じる。
「思えばあたしは『責任』とか『プレッシャー』とかが精液を飲むのと同じくらい(つまり何より)苦手だったわけで…」(第1話より)
この表現は好きだが、なぜこれを小学生に振り回される頼りない女性教師に言わせるのか。いっそ処女で世間知らずの設定にした方が今後の展開でもいくらか話が通じるのに。
こういったものが随所で目に付き、そのせいで「あぁフィクションですね(悪い意味で)」と冷めた目線でしか読めなかったのが残念だ。
ナイスレビュー: 1 票
[投稿:2011-04-24 00:57:49] [修正:2011-10-12 14:22:33] [このレビューのURL]
8点 キック・アス
ごく普通の男の子がコスチュームを着てヒーローになろうとするとこんな凄惨なことになってしまうのね。
いやー、本当に血みどろ。バイオレンス。
内臓とかそういうのはないからそこまでグロくはないけどなかなかにえぐい。アメリカは日本よりかなり表現規制が厳しいんじゃなかったかな?よくパス出来たなぁと思いつつ読めるのはありがたいです。
私達が生きる現代の世の中、コミックオタクの少年デイヴはこう思った。”これだけヒーローコミックがあふれているのに、なぜ誰一人本当にヒーローを目指そうとしないんだ?”
何となく分からなくもない気もする。そう思うだけならね。
しかしこのデイヴの一味違う所は、いくら現実に不満で、現実と向き合いたくなかったとしても、本当にヒーローになろうとしてしまう所だ・・・そう、キック・アスに!
デイヴに超人的な力なんてない。というかコミックオタクでスポーツをしているわけでもない彼のことだから恐らく平均的な高校生より運動能力は低いだろう。コスチュームだってブルース・ウェインのように金持ちではないからウェットスーツに自作の改造を施しただけのものだ。
そんなデイヴが街の自警団として不良やマフィアに立ち向かった時にどうなるのか、そして彼は殺し屋少女ヒット・ガールに出会って何に巻き込まれていくのか・・・という物語。
最高に刺激的で、素直に楽しめる作品。最初から最後まで興奮しっぱなしですよ。
アメコミは作家の思想性が強く出てて、しかも文字数が多いから比較的日本の漫画に比べて読むのに時間がかかる作品が多い。でもこのキック・アスはエンタメ性が強くてすごく読みやすい上に、それでいてマーク・ミラーの工夫だったり新しいヒーローものの形の模索というのは上手く表現されているからもう脱帽するしかない。さすがは現代アメコミ界希代のヒットメーカー。
そもそも冒頭から話にすごく引付けられる上にその後の展開もおもしろいんだよなぁ。やっぱり先が読めないって大事だよ。すごく楽しいしわくわくする。ヒットガール登場あたりからはもう一気にぐわぁぁーーとね。
普段あまりアメコミを読まない方にも自信を持っておすすめできる作品。
上に書いたように非常に読みやすい上に、わりと日本の漫画に近いと思うから。美少女(幼女か?)が悪人を銃や剣で殺戮するというのもそこはかとなく日本的だよなぁ。ということでヒットガールはもちろん私のお気に入り。何とも可愛くて、凄惨で、悲しきヒーロー。
しかし何気にオタクに対して相当手厳しい気がする。デイヴは結局強くなるわけでもないし、大きく成長した様子は見せない。オタクはずっとオタクで、ヒーローはずっとヒーローだ。それは当たり前だけど、何となくさびしい。
ちなみにマーク・ミラーはキック・アス2を描いているらしいです。映画の続編も決まったことだし、その公開と併せて邦訳が出てくれることを切に期待します。
ヒットガールは出るのか?、レッドミストはどうするのか?、わくわくは尽きない。
【追記】
書き忘れてたけど、映画も傑作。同じ素材でも調理によってここまで違う料理になるのかと。セットで読むとよりおもしろいのでおすすめです。
ナイスレビュー: 1 票
[投稿:2011-10-01 01:59:52] [修正:2011-10-09 16:09:09] [このレビューのURL]
8点 四月は君の嘘
前作同様あまり長すぎずにまとめてくれたら…と今非常に期待している作品です。
メインキャラはスポーツが得意な男の親友と、面倒見の良い女の幼馴染との3人と、ボーイ・ミーツ・ガールな出会いを果たしたメインヒロイン・かをりの4人で構成され、かをりとの出会いから話が動きだします。
王道なキャラ構成と導入かもしれませんが、非常にすんなりと話に入り込む事ができます。
絵柄が地味というのが前作を読んだ時に感じた惜しい点だったのですが、かをりが出るだけでぱっと画面が明るくなるような派手さと存在感があるのでその点が解消されてます。
「モノトーンだった世界が色づき始めた」という主人公とかをりの出会いを文字通り感じる事が出来て自分でも驚いてます。凄い。
失われていた音楽への情熱が出会いをきっかけに取り戻されていくという青春ストーリーになりますが、音楽的な要素よりも青春してるキャラクター達が活き活きしてます。
作者が描きたかった場面をどんどんつぎ込んでいるかの様。
1巻からすでにクライマックスみたいな盛り上がりを感じました。。
オススメです。
ナイスレビュー: 1 票
[投稿:2011-10-05 23:56:27] [修正:2011-10-05 23:58:48] [このレビューのURL]
6点 Steins;Gate
【ネタバレ注意】
この作品はゲームが原作です。
自分はアニメ化きっかけでアニメと並行して原作をプレイしました。
元々口コミで面白いと非常に評判が高かった作品だったので、楽しみを奪わない様に何よりも「ネタバレ」だけは回避する事に努めました。
そうしてインターネットというネタバレの嵐を避けに避け、無事最後まで大したネタバレも踏まずに終えられて本当に良かったと思ってます。
何の作品にしてもオチを先に知るのは損だと思いますが、例えば日常系作品のネタバレを知るのと本作のネタバレを知るのは大きな差があるように感じます。
なのでレビューといいつつもこの作品の中身についてはあえて書かないでおこうかと。
ついでにいうなら【原作(あるいあアニメ版)をクリアするまでは『Steins;Gate』関連の漫画は全て読まない方が良い】位まで言いたくなります。
何故かというとまぁやっぱり原作の出来が一番良いからです。
同じストーリー、同じタネ明かしでも魅せ方の上手さ故に感じられる面白さが段違いだと思うので。
漫画版を先に読んでも「ふ-ん」で終えられてしまったらなんだか勿体ない様な気がするのです。
原作は既に数年前に発売した作品なので今更ネタバレどうこういうのは本当はおかしいのかもしれませんが…
「Steins;Gate」はコミカライズの数も非常に多く、未単行本化の作品もまだいくつかあったりします。
このさらちよみ版が一応本編準拠のストーリーで、その他は外伝だったり、視点を変えたスピンオフだったりしますのでそこもネタバレの嵐。
原作との雰囲気の違いはシリアス加減の弱さでしょうか。
ジョジョを読んでいる時「ゴゴゴゴゴ」の音と共にじわじわと「何かがおかしい…」という恐怖感と何が起きるのかドキドキして続きが気になる感じ。そういう感覚が足りません。
ナイスレビュー: 1 票
[投稿:2011-09-29 00:18:08] [修正:2011-10-05 23:58:02] [このレビューのURL]
ゴッサムシティで記念日ごとに人を殺す殺人鬼ホリデイは誰か?
ハードボイルド探偵小説のようなバットマンコミック。
は、良いのだが、漫画としての可読性が低すぎる。
誰に対し何を表現しようとしてるのかが不明で、全編を通し首尾一貫しない。
派手なキメゴマの多用は食い違いの違和感を助長し、読む側の徒労感をいや増す。
瑣末なエピソードがやたら多いのもマイナス。
苦労して小さな文字を読んでも作品の理解の助けにならず、
キャラクターへの感情移入を強めもしない。
バットマンとキャットウーマンの恋の鞘当てなどどうでもいい。
クライマックスも酷い。
ホリデイの正体はひねりがない上に、バットマンによる看破でなく本人が自ら登場してしまう。
何のために正体を隠していたのか。
さらに記念日と殺人に全く関係がないと来ては、根本的に貧しい作品と言わざるを得ない。
バットマンシリーズに長く親しみ、キャラクターの人格設定や背景、動機付けなどを熟知した読者なら(詰まらないなりにも)読むことは可能だろう。
ナイスレビュー: 1 票
[投稿:2011-10-03 14:43:28] [修正:2011-10-03 14:52:59] [このレビューのURL]