ありがとうのレビュー
9点 佐々木裕健さん
露骨な性描写が気持ち悪い。(無ければよい、と言うのではなく、描き方が生理的に合わなかった。あんなにモロでなくても、表現はできるだろうに。作者の趣味だから仕方は無いけど。)
それさえなければ本当に非の打ち所の無い作品である。
登場人物全てが理性的なところ、狂っているところをもっており、しかもその「狂っているところ」こそが、単なる個性を越えて、今の日本社会の「豊かなんだけどどこか壊れている」といった感じを上手に反映させている。
この作品全体からは、どこにでもいる「善人」に対する強烈な怒りを感じる。もちろんこの場合の「善人」は、
表面は問題の無いように取り繕い、肝心の臭いものにはふたをし、他人に対しても自分自身に対しても嘘をつきながらだましだまし生きていて、しかもそのことさえも認めようとしない「善人」である。
ナイスレビュー: 1 票
[投稿:2007-06-12 15:49:17] [修正:2007-06-12 15:49:17] [このレビューのURL]
7点 白い犬さん
単身赴任からお父さんが帰ってきたら家は不良のアジトになっていて
母はアル中長女は薬漬けで性的玩具と化し次女は自慰行為を不良に
写真にとられて、としょっぱなから救いがない。
で、お父さんが命を張って我が家の平和を取り戻す・・・という
お安い話にならないのが山本直樹。
一応不良は追い出したもののお父さんががんばって家族を再生しようと
すればするほど家族の絆というものが幻想であることがわかってきてしまうという、深いよ山本さん。
連載当時作家の柳美里が絶賛していたのが印象に残っている。
彼女も家族の絆に振り回された生き方をしていたからであろう。
家族の再生をあきらめてそれぞれ家族が好きなことやってときどき集合して旅行いったりしたりしはじめたときにお父さんは死ぬ。
最期の言葉は「ありがとう」。このためのタイトル。
山本直樹に完敗。
ナイスレビュー: 7 票
[投稿:2006-05-01 02:17:36] [修正:2006-05-01 02:17:36] [このレビューのURL]