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7.59点(レビュー数:27人)

作者新井英樹

巻数9巻 (完結)

連載誌ビッグコミックスペリオール:2001年~ / 小学館

更新時刻 2011-01-12 13:48:03

あらすじ 両親の愛情に守られ、一日一日をたくましく生きるキーチ。世間の常識なんてお構いなしのキーチは、毎日のように幼稚園で問題を起こしてパパもママも苦労が絶えない。幼稚園でのライバル、チャンスとも顔を合わせるたびにケンカになってしまい…!?

備考 『キーチVS』に続く。

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キーチ!!のレビュー

点数別:
1件~ 5件を表示/全27 件

10点 朔太さん

新井英樹氏の作品には、ただならぬ熱を感じる。
ページをめくる度に、発散する熱気を顔に浴びる感じである。
その熱気が無駄に暑苦しく、不愉快に感じることもあるが。

社会の中で生きていくための鎧をまとうことを生まれつき拒否する異端児キーチを当初は本能的に毛嫌いしていた。
反社会的で、周囲の人間に迷惑をかけ続ける人間性に嫌悪を感じるからだろう。
一方で、こんな生き方に憧れを持ちながら。
後に、幼少期の子供はこれでいいかもと思えるようになるが。

前半4巻までは、人間キーチの原型ができるまでを長々と説明している体だが、ここが大切なパートである。
「パパがいてママがいて、キーチがいる。・・」のフレーズは、最終回まで持ち越された。
本能のまま生きる幼児期は、ノーの意思表示は暴力しかない。
少年期になれば、「俺に近づくな」と警告できる知恵がつく。
しかし、人間の原型のまま、社会で他人と上手くやって、すり合わせながら生きることを拒否するキーチ。
ひとりで生きることを宣言して、それを貫くために暴力を選ぶしかないキーチ。
私たちに、一人で生きることの覚悟を突きつけるキーチ。
多くの人は、安全に守られる社会に生きる代償として、搾取や権威に従うストレスを我慢する。
これを選ぶ以上、我慢する。
一方で、文句を言うなら一人で生きる覚悟が必要だ。
キーチが我々に問うているのは、この覚悟があるかどうかだ。

後半5巻から、怒りの矛先が目の前の醜いものに向けられる。
この世で醜いものが見えることに我慢がならないと言う。
権力に真正面から刃向かう少年たち(キーチ&甲斐)の姿は、やや荒唐無稽な気もするが、少年だからこそ可能な純粋なレジスタンスは、本当にあっても良いと思った。
才ある少年は、凡庸な大人には二度と追いつけない選民なのだから。
個人的には第61話が心に沁みた。
親は自身を乗り越えていく子供に捨てられることを喜ぶべきか。

読み終えたところで、考えよう。
社会悪と戦うカリスマヒーローを描いた作品?
いや違うだろう。
奇跡を起こしてしまうから、思い違う読者もいるだろうが、それは漫画としての演出だ。
最終87話でちゃんと甲斐が言っている。
損得勘定で多数派が涼しげにしたり顔で作る嘘くさい民主主義社会の限界に、皆気づいているのに、抵抗するすべもなく受け入れる醜悪さ。
それどころか、体制側に法の範囲で迎合する者こそ、勝者と言わんばかりの小狡い小市民が支持するから、一層、偽の民主主義社会が悪循環でどんどん腐っていく。
そんな社会への反撃、革命への飢餓感を表現している。

分かりやすく言おう。
クラスや職場にいじめがあったとして、あなたは「そんなくだらないことは止めろ」と被害者のために声を上げることをする?
半分以上は見て見ぬふり、酷いのは加害者に間接的に加担する奴まで現れる。
あなたもその一人だろう?
なんで、そんなことになるの?
見て見ぬふりは違法行為じゃないから?
いじめもいじめへの加担も、証拠がなければ違法じゃないから?
たとえ被害者に一生消えない心の傷を与えたとしてもね。
誰も問題の解決策を持っていない。
これが多数派の作ったニセの民主主義社会なんだ。
その時に感じるのは、無力感だったり、閉塞感だったり、人によってはこれが大人の社会だ、なんてね。
あるいは、それならそれで学歴なんかの力をつけて、逆に利用してやってやれ、って開き直る。
いや、正しいのは、そこで「いじめなんか止めろ」って声をあげるという、簡単なことなんだけどねえ。
キーチの行動は、教師を含めたクラス全員を殴ることだった。
「ここのところを、ちゃんと理解してるか?みんなで迎合して醜い社会の一員になるくらいなら、ひとりで生きろ」とキーチは本能的に主張している。

極めて根源的な問題を通して、文学的、哲学的に気づきを与えてくれる作品として、大きな感銘を得た作品。
新井英樹の問いかけに、君はどう応えるか?

ナイスレビュー: 0

[投稿:2022-03-05 10:07:16] [修正:2022-05-21 08:53:22] [このレビューのURL]

9点 punpeeさん

最近の新井英樹はぶっ飛びすぎて付いていけなくなったのですが、このキーチは全盛期の作品の一つだと個人的に思ってます。
この人はカリスマを描かせたら本当に巧い。

ただ、この作者はスロースターターなので、そこの我慢は必要なんですよね。
この作品も前半のホームレス編は衝撃的な展開ではありましたが、真骨頂は小学生編。
甲斐と出会ってからの展開がめちゃくちゃ面白い。

小学生である事の無力感からの挫折もあり、
小学生である事を武器にした反撃や演出。
キャラクターの躍動感が流石です。

「こんな小学生いる訳ない」とは思うし、
相変わらず我が強く、民衆を馬鹿に描き過ぎる作者の癖も鼻に付きますが、それでも夢中にさせるエネルギーがある作品。

カリスマの一挙一動に、漫画ながら目が離せない。

続編の「キーチvs」は全然入り込めなかったので、レビューはやめておこうと思います。笑

ナイスレビュー: 1

[投稿:2017-02-27 17:46:21] [修正:2017-02-27 17:46:21] [このレビューのURL]

9点 ゆーやさん

小学生編くらいまではキーチのルーツを辿る旅になります。

そこまででも十分面白いけど、なかなか物語の輪郭が掴めない。

しかし、甲斐と出会ってから、終盤までへの駆け抜けた盛り上がりは凄まじい。

キーチのカリスマ性と甲斐の演出にワクワクが止まらなかった。

最終回のラスト2コマも素晴らしかった!

ナイスレビュー: 0

[投稿:2015-05-19 18:06:33] [修正:2015-05-19 18:06:33] [このレビューのURL]

0点 童貞小僧さん

作者が考えるカリスマ性というのが薄っぺらすぎて
それが話の軸になっているから全体的にうすっぺらい。
作者は相当な世間知らずなんだろうなと思います

ナイスレビュー: 0

[投稿:2014-01-04 00:41:12] [修正:2014-02-12 02:56:41] [このレビューのURL]

4点 gumigumi25さん

ザ・ワールド・イズ・マインがダメだったけど
キーチなら読めるかもと思って2巻まで読みました。
感動しましたが、続きが知りたいと思えませんでした。
好みの問題です。私はこの作者の作風が苦手です。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2013-10-29 14:17:12] [修正:2013-10-29 14:17:12] [このレビューのURL]

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