新のぞき屋のレビュー
8点 ほげさん
『のぞき屋』というタイトルだが、エロティックな漫画ではない。大学生の恒を通して、人間の本当の姿を探って行く物語である。のぞきを趣味にしている青年のスコープはそのための道具に過ぎない。のぞくことで性的興奮を覚えるためではない。
のぞき屋の青年は、恋人のさとみに対して常に「作り笑い」をして、セックスしたいという本音を言わない恒に、「ありのままの彼女を見届けて」みろと告げる。そのために探偵まがいのことをしろというのだが、青年に恒が「探偵」を依頼するのではなく、恒に青年が「探偵」を誘導するというところに、本作の主眼が見える。本作の主眼は、自分にウソをつき、セックスしたいのにしようといわないで、「作り笑い」でごまかしている主人公の恒を、本心に立ち返らせることである。人間は、のぞき屋の青年がスコープで覗いているように、強欲の世界だ。本作では性欲と名誉欲とが描かれているように、その欲望に沿って生きているに過ぎない。というか、それ以上の存在にはなりえないのだから、善悪の問題ではない。だが、ある一定の人間はどうかすると、その欲望を隠蔽したがるものだ。主人公の恒のように、自分にさえウソをつき、彼女にもウソをつき、のぞきを誘導する青年に散々言われてやっと開眼するといったところだ。恒は人間が欲望に沿って生きていることに気付かない振りをしている。青年は、その陥穽をついてくるのだ。
もっとも、本作の主題は、突き詰めれば非現実的になってしまうのは否めない。全てを疑ってかかり、本音を突きとめるというが、原理的にそんなことはできるはずがない。時間的な無理もあるけれど、第一そんなことをしたら生活が営めないし、孤独になるほかにない。だから、人間は、欲望に忠実であるという命題を抱えながらも、どこかではそれを隠蔽する他にない。人間は理性もあるといった考え方で、その命題を捉え直していくしかない。それが一歩間違えると、本作の恒のように、自分を隠蔽し続ける人間に成り下がってしまうということになるだろうから、バランスの問題である。人間は欲望のもとに生きるが、理性もあるということ、疑い始めたらきりがないということ。これがこの漫画から分かる。
ナイスレビュー: 1 票
[投稿:2005-08-09 22:11:43] [修正:2005-08-09 22:11:43] [このレビューのURL]
7点 朔太さん
山本英夫の作品には、偏執狂、オタク、ゲイ、・・・など普通でないキャラが
てんこ盛りされるけど、ありそうなリアルさが魅力である。
社会のどこかでこんな偏った世界も存在しそうだから、続きが見たい。
盗聴なんか今や常態化されているし、そこに踏み込んだ被害の怖さ、覗く側の魅力
など、20年前の作品とは思えない先見性を持った作品である。
殺し屋イチもすごかったが、これも一押し。
でも、どれもこれも不気味な世界だから、人によっては拒否反応が出るかも。
ナイスレビュー: 0 票
[投稿:2013-10-12 22:19:35] [修正:2013-10-12 22:19:35] [このレビューのURL]
6点 okadaさん
山本英夫は才能が溢れる漫画家だと思います
シリアスな場面も時折挟むギャグも面白い
下ネタが多すぎる、もっと真面目な話を描いてほしかった
あと終わり方がよくない、これで完結なの?と思ってしまうようなすっきり出来ない終わり方
ナイスレビュー: 0 票
[投稿:2013-06-11 16:07:58] [修正:2013-06-11 16:07:58] [このレビューのURL]
6点 chunya0816さん
人間は誰もが「闇」を持っている。その闇は深く、薄暗い。
本作はその闇を見つめ続ける、青年の話だ。
結局やっていることは探偵なワケだが、作者の山本英夫がなぜ「のぞき屋」というタイトルを打ったのか?
読むにあたって「のぞき」というのが重要なワードとなるのでご留意頂きたい。
それにしても、1993年連載と今から20年近く昔の作品。にも関わらず出てくる盗聴グッズは今見ても恐ろしい。
現在はどれほど進化しているのだろうか?
知らない間に、我々も「のぞき」をされているかも知れない。
ナイスレビュー: 0 票
[投稿:2012-05-24 11:02:03] [修正:2012-05-24 11:02:03] [このレビューのURL]
8点 てつさん
単純に面白かった。
人間の欲望をうまく表現していた。
ただもうちょっと伏線をちゃんと拾ってほしかった。
いきなり終わった感じ。
ナイスレビュー: 0 票
[投稿:2009-08-07 15:57:18] [修正:2009-08-07 15:57:18] [このレビューのURL]
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