「いーらび」さんのページ

総レビュー数: 38レビュー(全て表示) 最終投稿: 2010年04月15日

『うしおととら』に続いて、相変わらず脚本が濃い。

話の運び方やブレる時間軸の描き方が秀逸。
広げすぎた設定にも、よくある不安を感じず読めるところは流石。
藤田和日郎独特の、細部まで作り込まれた世界に惹き込まれる。

ただ、一巻を読んだだけでは、はっきり言って何も面白くない。
が、しかし、読み進めていくとはまる。
続きが気になって気になって堪らなくなる。

兎に角、キャラに対する愛情を感じる。
一人一人にストーリーを作り、繋がりを大事にし、張り巡らされた違和感も後で必ずスッキリ爽快。
特にアルレッキーノとパンタローネの最期は、オートマータの存在理由が集約され、人間らしさや幸福感に満たされていて美しかった。
主人公がしっかりと自分の足で成長していき、各々の人生に意味があって関わり、誰の身にも何らかの救いがある。
そういった配慮が行き届いているところに素晴らしさを感じる。

最後に多少物足りなさを感じる(頼りになる後ろの奴は、まさるだと鳴海に気付かせて欲しかった)ものの、
壮大なストーリーの運びがあまりに秀逸で、作者の頭の中に興味が湧く。
こういう描き方の出来る作家はあまりいない。

ナイスレビュー: 3

[投稿:2010-11-09 19:43:54] [修正:2013-04-10 10:31:21] [このレビューのURL]

人間の心に潜む闇の描き方が秀逸。

残虐な描写にも不思議と説得力がある。
これこそが人間の真実。

ただグロイものを描くのとは次元が違う。
それ程に深い人間描写。


『三浦建太郎細密画集』になってしまったのが残念。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2013-04-01 14:15:24] [修正:2013-04-10 10:26:47] [このレビューのURL]

9点 LIAR GAME

頭脳明晰で冷静沈着な秋山。お馬鹿で感情的な直。
真逆の性質の男女が、志同じく助け合う姿がいい。

ゲーム上でも精神的には常に2人セット。
負債を背負って、運命を共にする方法を選ぶところなんかも、
そこらの少女漫画よりよっぽど精神的結び付きが描けていると思う。
かといって馴れ合わず、一定の距離感のある微妙な関係。

直がお人好し過ぎてイラッとくる場面は多々あるものの、いやだからこそ、
それをどっしりサポートしてくれる秋山の魅力が光る。

しかし毎度毎度、よくこんな面白いゲームを。
密輸ゲーム?感染ゲーム?どこからそんな発想が。こんな椅子取りゲームは前代未聞。

ゲーム進行上刻々と変化する状況を、対戦相手の心理描写や策略も踏まえながら丁寧に追っていく
やり方は、単純に良く出来ていると思う。臨場感があって読者も楽しめる。

ついでにみんな「はあっ!?」の表情がイイ。
特にフクナガとヨコヤ。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2010-10-05 18:05:07] [修正:2010-11-15 17:40:11] [このレビューのURL]

9点 ねじ式

このとりとめのなさを一つの作品として書き落としているところが、何とも文学的。
他の誰にも真似出来ない独特の世界観。
さながら泉鏡花。

一見、他人にはわけの分からないものに映る心の断片、いわば自分の中だけで完結していた物を、
漫画として公にさらした感性には、評価すべき光るものがある。

読後にぼんやり残る後味は、まるで難解な文学でも読んだかのよう。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2010-11-11 18:07:08] [修正:2010-11-11 18:07:08] [このレビューのURL]

恐ろしく志の高い漫画。

世界観に引きずり込まれる冒頭からずっと、ダレない展開が素晴らしい。
キャラの構築にも群を抜く魅力を感じる。
一人一人個性的で味があり、敵と言えど憎めない。
皆カッコイイ。台詞も常にカッコイイ。

戦がまた面白い。
敵味方双方の実情や背景が丁寧に描かれているので、
参戦する者全員の本気が常に伝わってくる。
兵法や地形、現在地の説明も細かく成されるため、
状況が良く伝わって来てこの上ない臨場感がある。

得難い物を得ようとする道程の厳しさや歩む際のもどかしさ、
一歩夢に近づいたという爽やかな充足感が、上手い具合に絡み合っている。

ここまで期待を裏切らない面白さは珍しい。
今後の展開が楽しみな作品。

素晴らしい。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2010-07-12 14:57:32] [修正:2010-07-12 14:57:32] [このレビューのURL]