「notatall」さんのページ

総レビュー数: 34レビュー(全て表示) 最終投稿: 2010年07月18日

10点 SLAM DUNK

なにやら見当はずれなレビューが目に付くので物申したい。


春、体格にも運動能力にも優れながら、FA状態で入学してしてきた高校生がいる。名を、桜木花道…。


作者がバスケを描く気でいた以上、主人公の身体的な設定は譲れない。背が低かったり、虚弱だったりさせられるハズがない。
が、しかし…。
こんな逸材がFA状態で入学してくることが、現実的にありうるだろうか?
逸材である以上当然、中学時代すでに、格闘技などのスポーツ関係者から注目されていたはずである。

答えはイエス
ヤンキーならばありうる。それも気合が入ってない、中途半端なのがいい。ケンカにあけくれる青春群像を描きたいワケでもないのだから。


ただ、そんな中途半端なヤツが、高校入学と同時にバスケに目覚めることがありうるだろうか?

答えはノー
入学まで中途半端だったのに、突如としてバスケ(に、限らずスポーツ全般)に目覚めることなど、ありえない。
したがって強烈な、されどバスケとは無関係の動機付けが必要となる。

それが、「バスケはお好きですか?」
と尋ねる、遺伝子の奇跡とも、複雑な家庭の事情とも噂される、天然娘の存在である。
しかもこの恋は、実ることがない。

もしもすんなり実れば、花道をバスケに引き止める動機は消える。根の、中途半端なコゾー戻っただろう。
よって必然の片想い。そして片想いの相手も片想い。可能性をゼロにして、花道があきらめても、物語は続かない。
これをラブコメと言うのは、どうだろう?
必然の設定を描いただけではないだろうか?


逆に言えば、この設定ナシで、
中途半端ゆえにFAの逸材を、突如バスケに縛り付ける手段があるというなら、あなたは作品を送り出す側に立つべきだろう。
無論、大衆に違和感なく受け入れられるものであることが前提である。


これらを見事にまとめあげた序盤を、冗長とするのであれば、
あとは入学と同時にバスケに燃える少年たちが集まる、そんな高校を舞台にするしかない。

そんなコトが商業的に許されない状況なのは、今も当時と、さして変わらない。バスケは決して、「商業的な」人気スポーツに成長していない。


加えて、
花道が全くの初心者としてバスケに接したことは、ほとんどの読者と同じ目線に立ち、親近感を持たせた。影響されてバスケをはじめたという人が、正にそれである。
それがバスケの強豪校が舞台だったとしたら、そんな影響を与えられただろうか?

ゆえに、
多くの人を、花道と共に、いつしかバスケに引き込んだ序盤こそ、この作品の真に賛辞すべき場面の一つだ。




しかし花道は所詮素人。
ゼロからのスタート。

このことが、
私を含めた多くの人を嘆かせる、あの最終回への必然でもなかっただろうか?


逸材は、
赤木に基礎を叩き込まれ、ドリブル、パス、庶民のシュートを身につけていく。
更にリバウンド、スクリーンアウト、フリースロー。
そしてゴール下をへて、左手は添えるだけ。にたどり着く。

言わば、これが花道の最終形態なのである。
もっと言えば、花道はこれ以上の、成長を必要としないのである。

だとすれば、
物語が終わりを迎えたのは、当然ではなかったか?

仮に続けるなら、3ポイント、人徳、スタンド、スペシウム光線あたりを身に着ける物語と成り果てていただろう。
スーパーサ○ヤ人の物語が、どれ程しょうもない読後感を与えるかは、それぞれの体感に任せる。
花道は、どこまでも花道だからこそ、魅力的なのだ。


確かにインターハイ、3戦、4戦と勝ち抜いていって欲しかった。しかしこれこそが、大半のスポーツ漫画とは、格の違いを見せ付けてくれてるとも言える部分だ。


全ての作品が、甲子園の決勝までを描ききる必然性など、まるでないではないか。
しかも入れ替わりの激しいトーナメント。
相手選手の回想シーンだけで、どれだけの項を費やしてしまうかを想像してみるといい。


それを、わずか2戦。

その時、最終形態となった桜木花道に、必要だったのは何か?
ここに作家の、恐るべき深謀があるのだとまで言えば、それは傾倒し過ぎだろう。
名は、なんとなく付けられたのだと信じたい。

少なくとも、クライマックスとなる試合だけは必要だった。


緒戦は、大した評価もない豊玉。
私達はこの緒戦で、インターハイの底知れなさを知る。
次いで2戦、王者山王を前に、ぽよんぽよんまでもが動く…。



ヤグラのとなりがラスボスだと、誰が予想しただろう?

勝ち上がって行く様子を描くしかなかったトーナメントを、そう描かなかった作品を、私はこの他に知らない。
ここでは、わずか2戦で、王者に挑めるシステムであり、ゆえに白眉だ。


確かに、まだまだまだまだ続けて欲しかった。
回収されてない伏線も少なくない。

しかし花道の成長が頭打ちになった上に、最強の相手とのクライマックスも終えた。
終焉は、やはり必然だったのだろう。それでも嘆きを禁じえないからこそ、我々は作者の思うツボであり、
同時にココで終わるのがよかったのだと確信できる。

はっきり言おう。確信できる者が、この作品を理解しているのだ。


あのラストパスに心を奮わせる力があると感じるなら、
なぜそんな力を持つのか、という問いに答えられるはず。

決して、最初だったから。だけではない。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2011-07-09 13:42:44] [修正:2011-07-09 13:42:44] [このレビューのURL]

10点 寄生獣

まさに不朽の名作。

根底にある壮大なテーマを読者それぞれに考えさせるあたりは、結論を押し付けてこないだけに、またそれにも拘らず、奥深い。

そしてこの点を抜きにしても、寄生生物たちとのバトルや心理描写で魅せる。
しかしスプラッタ耐性のない人が読んではいけない。

それからどこぞのホラー映画のぱくりぽい部分があることには目をつぶってあげよう(笑)。
必読中の必読。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2010-07-18 21:45:26] [修正:2010-07-18 21:45:26] [このレビューのURL]