「夜、テレスドン。」さんのページ

総レビュー数: 37レビュー(全て表示) 最終投稿: 2007年06月13日

なんかすごい事してる、って評価を聞いていたんだけど
「まあ所詮は少女マンガでしょ」
と軽い気持ちで3ページ程パラパラめくった所で
あれ…何が描かれてたのか分からない、となって
改めてその3ページをしっかり読んだところ、納得。

作者の冷めた暴走が素晴らしい、傑作ギャグ。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2007-06-29 21:45:25] [修正:2007-06-29 21:45:25] [このレビューのURL]

憂鬱な甘さがある。

ノスタルジーマンガで幼少時の孤独感を
あまり強く打ち出すと若干あざとく見えてしまいがちだが
みぎわパンの孤独感は、確かに深い。
しかし深いはずなのに、そこまで強い感情をあまり感じない。
子供の自然な気楽さと自然な不安が同じくらいの分量で存在する。

もともと実験的なマンガを描いていた作者で
マンガを客観的に見れるから出来たことだと思う。
また、その実験精神も盛り込まれており、上手い見せ方がかなり多い。

人に勧めるときは「これぞ、ノスタルジー」と言って回ってます。
この変な暗さが他の作家に出せるものか。



ナイスレビュー: 0

[投稿:2007-06-26 19:30:18] [修正:2007-06-26 19:30:18] [このレビューのURL]

もう好きで好きで、しょうがない。


詳しくは、そのうち書きます。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2007-06-21 00:39:33] [修正:2007-06-21 00:39:33] [このレビューのURL]

「みんな大好き丸尾末広」って感じで、その筋の人間なら誰もが知ってる基本的な漫画家。

私も高校二年生の時分に初めて「薔薇色の怪物」を読み
歪んだ性、見世物小屋、奇形、暴力、血、焦燥……などの要素が
本来相容れるはずの「情念」を排除した、感情を失ったコマで表されており(よく言われる「一枚絵」)
その映画や文学からのパロディ的な要素も含めての「コラージュ性」に心から酔っていた。

と、これは当時の話で今改めて読んでみると、また違った思いが出てくる。
若い感性では刺激が強かっただろうなあ、と冷静にページをめくる自分がいる。
そしてフト気づいたのは「丸尾末広は本気で描いていないのでは?」。

寺山修司的な要素、澁澤(「血と薔薇」とか)、映画ではカリガリ博士はじめ様々の影響。
そのあまりに露骨な「好きもん」さが、どうも引っかかる。

多分、マンガを描くときにニヤニヤ笑いながら描いているような気がする。
ファンが想像するような、例えば江戸川乱歩なら
「暗い土蔵の中で蝋燭の灯だけで作品を書いている」
という真面目な姿勢とは違うんじゃないか。(乱歩のもファンサービスだけど)。
「お前らが絶対好きそうなやつ描くから、ソラあつまれー!」みたいに思っちゃうんだよなあ。
丸尾本人は、それ系のコレクターらしいので好きなのは間違いないだろうけど。

で、コレに収録されてる「腐れオメコにDDT」を読むと納得できた。
いつもどおりの眼帯つけた学生服の美少年が出てきて
ボットン便所の中に落ちたりするのだが、描かれている内容は

最近休憩時間は女子便所で落書をしている、油性細字が最適。
絵が上手いから(星飛雄馬の模写)わざとヘタクソに描かないとバレる。
結局バレ「出て来い お前はB組の丸尾だろう わかってるんだ」
と教師にドアを叩かれ
逃げ場がないから便器の底へ落ちる。

初めて読んだときは勢いで「う〜んカッコイイ!」なんて思ったが、バカな話である。
他の作品内では自分のイメージを崇高なまでに高めておいて
それを卑下してしまうという、メタなギャグ。
ああ、やっぱりそういう感覚の人なんだなあと分かる。
更に最後のページに「正しいエロ漫画の描き方」というコマまで用意してあり

?,△泙螻┐?うまくない事?▲螢▲襪任△襪海鉢F鐡?であること
?ぅ好函璽蝓爾?なければ納得しないようなアホな読者の為に
取ってつけたようなストーリーでもちゃんとつけておく

ますます自分の描いてることがちゃんと分かってるような様子で面白い。
「良い漫画家例」で福原秀美と書いてて皮肉ってるのも楽しい。

あとまだ言いたいことがある。
よく「高畠華宵まんまの顔」と言われるが
絵の下手さ(この頃は上手いとは思えない)と合わさってか
しっかり「丸尾末広の絵」になっている。

捻くれた感想になったが、昔ほど熱狂して読めなくはなったものの
なんだかんだで、やっぱいいよなあ、とシミジミ読める丸尾マンガ。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2007-06-21 00:07:45] [修正:2007-06-21 00:07:45] [このレビューのURL]

素人レベルの下手糞な絵で、それを繕おうとしてか萌え要素の入ってる、
読んでて時間の無駄にしか感じないマンガ

を猛烈に読みたい!!という欲望がムラムラと沸き起こって古本屋へ走る。
で、決めたのがこの本。

上の要素に加えて、お笑い好きの考えたって感じの
つまらないネタの多さも、より面白くなくてイイ!
たいてい面白くなるはずの下ネタも、センスのせいか面白くない。
テンポも酷い。このマンガは「脱力」を謳ってるようだけど
「脱力」といっても、やはりそれにはそれの「テンポ」「間」がある。
このマンガにはそれがない。最高。
思わず棚に並んでる分、全部買ってしまった。

しかし次の日、新刊コーナー見てたら
このシリーズの新刊出てたのは笑ったな。
まだ続いてんのかって。

たまに読み返しても「面白くねえなあ」と感想が変わらない。
当たりだったなあ。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2007-06-19 20:04:42] [修正:2007-06-19 20:04:42] [このレビューのURL]

多分、安田弘之は佐伯俊男が好きなんだろう。

セーラー服を着た、感情がないような目つきの少女。
無駄のない簡素な線。それゆえの伝わってくる汗の臭い。なによりエロい。

紺野さんと遊ぼう、というか、紺野さん「で」遊ぼうの方が正しいか。
とにかく紺野さんでフェティッシュに遊ぶ。
例えば等身大のカブトムシに襲わせたり、素足でモチをつかせてみたり
紺野さんを太らせ太股にテニスラケットの網目を押し付けてみたり
など、作者の妄想が一話一話続く。紺野さんは喋らない。

かと言って、フェチ一直線かと言うとそうでもなく
実際この本を人に貸し、曰く「これ笑えたよ」だった。
ギャグとしても読めるのだ。ギャグとまでは言えるか分からないが
自分の妄想に読者が引かないようにか、かなり読みやすい形で書かれている。
それが読者への配慮なのか、それとも元々そういう楽しいノリが好きなのかは知らないが
どっちの見方をしても十分に読める。まあフェチの方が圧倒的に強いが。

それでも一巻で「幻の序章」と銘打たれた紺野さん第一号の、煩悩全開の作風が好きだなあ。
線の雑さも一層、初期の佐伯俊男風。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2007-06-17 15:10:37] [修正:2007-06-17 15:10:37] [このレビューのURL]

[ネタバレあり]

少女の精神が壊れていく様を淡々と描いた作品。
ラストも一応、少女は救われるが、あくまで淡々としている。派手な演出など一つもない。
そこに不満を感じる人も勿論いるだろうが、まあそういう人たちは
このマンガを知る機会なんてないだろうから大丈夫。

これは凄いよ。まずタイトルから、引っかかるものがある。表紙の絵も同様。
読み終えた次の日、知人に散々語ってしまった。

このマンガは「空虚」の表し方が抜群に上手い。
はじめに「淡々と進む」と書いたが、その乾いた雰囲気も「空虚」の一つだ。

線。アクがなくあっさりとしている。むしろ「頼りない」と言ったほうがいいか。
その線でキャラクターも背景も同等に描かれている。境目がない。
例えば70ページ。少女が木陰に座って少し遠くの並木を見つめている。
見つめていると遠くの木が段々と少女の顔の横に迫ってくる。
71ページになると、まるまる1ページ使って、見つめる顔と木が並べて同じ大きさで描かれる。
目は黒目の部分はあるが白い。意識がない。

精神が壊れ「現実と妄想」が混ざることを、「自分と風景」が混じることで表している。

背景。普通の少女マンガならキャラの後ろにはバラなんかが描かれるが(古い?)
このマンガでは「偏執的な線」が目立つ。
「偏執的な線」と言ったところで分かりにくいと思うので、イメージするならば
楳図かずおの「おろち」の髪の毛みたいな感じの線。

9ページ下一面の大きめのコマ。夜中、少女が悪夢に目を覚まし壁に手をついてため息をつくシーン。
真っ黒のベット、窓以外の周りの壁すべてが「偏執的な線」で埋め尽くされている。
このコマはワクがなく、どこまでもこの気持ちの悪い線が広がるようで読む側に「不安」を与える。
このワクがないことは同時に「空虚」である。
59ページの左下のコマ。普通の教室にも関わらず、天井はその
「偏執的な線」が使われている。
後ろの机に座っている人物が落書き程度の簡単な線で描かれていることも気になる。

ここのシーンで注目するところが、もう一つありそれは
少年の「横顔」である。このマンガではキャラクターが横顔になるとき、なんの脈絡もなく
目は落ち窪み、中が白くなり、口はポカンと開いて白痴のような表情をするときがある。
これは少女に限らず他の正常なキャラクターにも見える。
ここも「不安」であり「空虚」。

そして最も気に入った「空虚」は86ページ。
上のコマ、右から左まで使って一コマ。ワクあり。右端は黒で続いて少女の顔。白い。
左側全部を使った空白と一つになっている。
真ん中の段、右斜め下のコマに降りる。ワクあり。右側、黒。左、少女の白い顔。
次、本来の読み方なら左に行くべきはずだが左側にはコマがない。空白。
そのまま下、全部使った大きい一コマ。ワクなし。
右上に「おまえ」と五角形の吹き出し。振り向く少女の顔が大きく。

コマの配置、ワクの有無、空白の使い方。このページはいくら見ても飽きない。
真ん中左の空白の「本来あるべき場所に何もない」不安と
下のコマの空白の不安が繋がったときの「空虚」。

こんな凄い作品のあとに書き下ろしの「エムの解放」。
タイトルから絵柄、中身まで、ただのダジャレづくし。
倉多江美は凄い。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2007-06-17 00:24:26] [修正:2007-06-17 00:24:26] [このレビューのURL]

[ネタバレあり]

この本を、まんだらけで見つけたとき私は、心の中で笑い転げていた。

倉多江美と言えば、最初に買った単行本は「一万十秒物語」であり
ブラックジョークをブラックジョークと感じさせないほど飄々とした
その乾いた線と空気に一発ではまり
「一万十秒物語・2、3巻」「エスの解放」(傑作)「樹の実草の実」「ドーバー越えて」「宇宙を作るオトコ」
と買い集めていき、次に手をつけたのが本作である。

「なぜ育児?」とニヤつきながら表紙を見てみると
ほっぺたを膨らませた女の子が「プッ」と顔を赤くさせている。タイトルの上には「まんが 安心育児」。
一番下には「指導 愛育会総合母子保健センター保険指導部長 高橋悦二郎 先生ほか」、長い。

駕籠真太郎が「健康の設計」という、表紙がなんとなく真面目なような作りで
結局、中身はいつも通りの駕籠テイストな単行本を出しているが
そういう冗談的な意味を持たせているのではなしに、どうも本格的な気がする。
下の、やたら長い「〜先生ほか」とか。なんたって天下の小学館だし。

と言うわけで「これは買わねばなるまいて!」で即効レジへ。
開いてみると予想通り。可愛い娘に振り回される専業主婦と、まわりのドタバタ。
至って普通の育児マンガ。しかもオマケに真面目な文章まで書いている。エラい!
マンガ4ページで文章2ページという構成。

なぜ、このようなマンガを描こうと思い立ったのかは分からないが
まあマンガとしてはありふれた物になってはいるものの、絵のセンスが良いので苦もなく読めた。

倉多江美は変わった人だ。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2007-06-16 22:29:21] [修正:2007-06-16 22:29:21] [このレビューのURL]

10点 SF全短篇

[ネタバレあり]

マンガマニアの嗜み、F先生の短編集。
ほとんどの作品が皮肉に満ちているが、中には結構穏やかで良い話もある。
「皮肉」という言葉を使ったが、それは国民的マンガ「ドラえもん」にも見られると思う。
F先生は「皮肉の人」である。その皮肉の人の書き上げた黒い作品群の中でも
私が一番引き付けられた作品が「絶滅の島」だ。
例えば「ミノタウロスの皿」「流血鬼」にしても「皮肉」はストーリーに練りこむ形で現れている。
ところが、この「絶滅の島」。こんなやり方があるのか!と皮肉り方に感動してしまう。

あらすじは、ある日UFOが地球にやって来る。
侵略者のモンスターたちによって人間は一方的に虐殺される。
主人公とヒロイン他、合わせて27人は「秘島ツアー」に行っていたため偶然にも生きのびる。
しかし、その島にもUFOはやって来た。応戦するものの次々と殺されていく。
そしてヒロインは逃げ遅れ侵略者に捕まる。
他に生き残った、頼りになるオジサン(名はない)と夜になるまで待ちヒロインを助けに行く。
ヒロインは生きていたものの遺体を棒に突き刺し煙でいぶしている光景を目にする。
侵略者に気づかれ、オジサンは自ら犠牲となり二人を逃がす。
しかし二人は追いつかれてしまう。もう駄目かと諦めると
突然UFOが降りてきて中からは今、襲われている侵略者と同じ形のモンスターが出てくる。
するとモンスターたちは話し合いを始める。ここで初めてモンスターに吹き出しが使われる。
吹き出しの中は、よくわからない記号のようなもの。
場面は変わって医務室で裸の主人公。襲われた際の傷は治っている。
ラスト。モンスターに見送られ、ヒロインと逢わされ島の奥へ寄せ合って歩く二人の後姿。

と、ここまでは「まあこんなもんか」ぐらいの感想しかなかった。
なかったんだけど、その最後のコマの下に、字ばかりが書かれたコマがある。
見ると「宇宙怪物語 日本語訳」と書いてある。そりゃ「え・・・?」ってなる。
もっと読んでみると

428ページ「きみたち こんな島でなにをしてる?」「別に・・・・・・ ただの離島ツアーだよ」「ごまかすな!!」「チキューケナシザルは保護獣に指定された 密猟者は逮捕する」
429ページ「すんません ケナシザルの黒焼きは 円形脱毛症に効くと聞きまして・・・・・・」「それは ただの迷信だ」 ガク

ここまで読んで、もうほんとクラクラした。日本語訳はもう少し続くけど、要は人間を絶滅しないよう保護しにきたってこと。
何から書こうか・・・。まあとにかく物凄い皮肉り方でしょ?

本編やってる間はわりと、作品に感情移入して書いてるように見える。
燻製にされている人間の死体を見つけ、主人公にはゲロを吐かせ
オジサンには「気をしっかりもて!!」「正視するにはたえん光景ではあるが・・・・・・確かめぬわけにはいかんぞ あの中にカオリ君がいるかどうか・・・・・・」
なんて、格好良い台詞を言わしたりして。

にも関わらず最後の「宇宙怪物語 日本語訳」で一気に作品の世界をドンと突き放す。
429ページの訳で「ガク」ってのあるけど、これって
うな垂れたモンスターの上のほうに書いてある記号の訳になる。つまり「擬音まで怪物語で書く」ってこだわる程ストーリーに何の思い入れもないということなんだよ。

だから私がこれを読んでいて、さして心に来るものがなかったのは
作者自身がストーリーに対してドライな視線で書いていたからに他ならない。
一番書きたかったのは最後の訳なんだもの。

「ガク」とガッカリする後姿のモンスターの頭に白い丸があって。ただのハゲなんだよな。
「すんません」っ言葉遣いも人間くささの表し方が上手い。

名前のないオジサンは頼りになる存在として描かれてはいるが、こんな危機的状況じゃあなけりゃ
ただの冴えない顔した、つまらないオッサンでしかないデザインで
作中「フフ・・・・・・皮肉なもんだねえ」っていう台詞を言わせるF先生の悪意に痺れる。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2007-06-15 01:35:12] [修正:2007-06-15 01:35:12] [このレビューのURL]

[ネタバレあり]

「まさかヒロインが死ぬなんて・・・トラウマになった!!」

こういう書き込みを見るたびに愚痴りたくなる。
第一巻のヒロインを見てみろ。
こんな女、いくら首が取れたって

「また取れちゃった!モー、嫌ンなっちゃうワ!」

と首だけになってもペチャクチャ喋りまくるに決まってるじゃないか。
つまり「明るく活発なヒロイン」という記号でしかない。
この記号キャラが、五巻になって「死」が自分に迫ってくる瞬間
記号は人格を手に入れ、初めて人間になったのだ。
そしてその「現実」に読み手は、何かしらショックを受ける。
ヒロインが群集に犯されるシーンの迫力は凄い。
講談社コミックスでは162ページ、バラバラにされるという表現で
体のパーツがネバアっと裂けているが、ヒロインの顔が二つある。
片方は恐怖の顔。涙が一筋、悲しみ。もう片方は苦痛の表情。しかし復讐を誓うよう。
この体をバラバラにされ「死ぬ」瞬間に体と同時に精神もバラバラになる
という表現に、このページに見入ってしまった。
この復讐のほうの顔がキリっとして格好良いんだよなあ・・・
有名なラストのシーンよりも、ここが一番印象に残る。

なんだか記号キャラを否定しているようだが、そんなことはない。
私、横山光輝「魔法使いサリー」の記号ヒロインっぷりに
可愛いやチクショー!となるタイプである。

あと、五巻198、9ページのデビルマン軍団とデーモン軍団が攻めてくる
構図は、祭り神輿のようで、いつ見ても笑ってしまうのは私だけか。
和太鼓の音がドンドコドンドコ聞こえてくるじゃない。

ナイスレビュー: 3

[投稿:2007-06-13 02:03:41] [修正:2007-06-13 02:03:41] [このレビューのURL]