ヒミズのレビュー
8点 電光石火さん
若い時代の毎日の気だるさや将来に対する不安をこれでもかってほどリアルに描いていると思う。漫画的なわざとらしい盛り上がりがないところもリアル。
ハラハラする場面を書かせると彼の右に出るものはいないと思います。特に正造が住田君のために金を盗むシーン。どんどん先へ先へ読まずにはいられなかったです。
そしてラスト。
少しばかり希望が見えてきたところで、やはり未来を信じられなかった住田君。最後の最後までリアルさを追及したあの裏切り方。余韻が残ったのを覚えています。
最後の朝、隣に住田君が寝ていないことに気づいた茶沢さんが外に様子を見に出たシーン。あのときの茶沢さんの無表情がすごく好きです。
おそらく「どこいったんだろう?」という漠然とした不安と、それでも最悪の想像はしていないであろう、複雑な表情が絶妙に描かれていると思いました。
ナイスレビュー: 1 票
[投稿:2008-04-12 22:15:51] [修正:2008-04-12 22:15:51] [このレビューのURL]
9点 朔太さん
社会の底の閉塞感を文学的に哲学的になり過ぎず、
適度の分かりやすさで表現している。
「僕といっしょ、1997年」、「グリーンヒル、1999年」
に続く一連のシリーズも同様ながら「ヒミズ」は
救いようのない底辺の底の息苦しさが今まで以上に
切迫しており、これ以下はないと思える設定である。
この後の「シガテラ,2003年」、「わにとかげぎす,2006年」でも
絶望の状況はあるが、一筋の光が見え隠れしている。
今回もお節介な女性理解者には同様に救い神としての
役割が与えられているのだが、結局は主人公が受け
入れていない点で、他にはない地獄っぷりである。
何事もなく、貧しくとも平穏を求めるだけで、清く
正しく生きるつもりだった主人公の絶望ぶりは
半端ないものである。
単純に言えば“行き場のない暗い”作品だが、
切り捨てられない魅力がある。
こんな主人公や哲学に共感しないまでも理解できる
読者がいるとすれば、私も含めて病人と呼んでも
良いのではないだろうか。
大きな熱量とインパクトを持った作品である。
漫画として成立しているのが不思議ではあるが。
ナイスレビュー: 0 票
[投稿:2020-06-18 17:09:57] [修正:2020-06-18 17:09:57] [このレビューのURL]
7点 gundam22vさん
作者にとってシリアス路線への転換作であり、その後に類似作が多いですが、本作が最高傑作ではないかと。序盤は以前のギャグ漫画ノリが残っていますが、一巻終盤で主人公が天涯孤独になってからは、センスあるダークサスペンスになって行きました。衝撃ラストの余韻は凄いです。ただ、そこは一シーン加わる連載版の方がより良かったので変更意図は良くわかりませんが。
ナイスレビュー: 0 票
[投稿:2018-04-13 20:11:41] [修正:2018-05-04 04:53:20] [このレビューのURL]
8点 デビルチョコさん
どんな状況に遭遇しても、
自分は常に最善の選択が出来ると信じていた主人公。
そういった思いが人一倍強かったぶん、
考え方や価値観が揺さぶられた時、異常なまでに反動してしまう姿を、
丁寧に違和感なく描いている。
ストーリーに引き込まれました。
名作。
ナイスレビュー: 0 票
[投稿:2015-03-08 23:11:00] [修正:2015-03-09 22:07:03] [このレビューのURL]
6点 ニシジマさん
本作を発表して以降、古谷実はこの路線を突き進むこととなる。
言語のみに捉われず、視覚的な試みに意欲的に挑んでいるため、物語は停滞しない。
青臭さを全体に匂わせつつも、志の高さで最後まで乗り切っている。
文字を読むことと、絵を見ることといった、漫画の持つ特性を読者に強要する感覚が素晴らしい。
強さと弱さを兼ね備えた、ギリギリの所を従来する秀作。
ナイスレビュー: 0 票
[投稿:2014-08-20 13:27:56] [修正:2014-08-20 13:27:56] [このレビューのURL]
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