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7.63点(レビュー数:38人)

作者志村貴子

巻数15巻 (完結)

連載誌コミックビーム:2003年~ / エンターブレイン

更新時刻 2012-06-23 23:17:34

あらすじ 何で男に生まれてきたんだろ。これは女の子になりたい男の子のお話。女の子になりたい少年・二鳥修一と、男の子になりたい少女・高槻よしの。誰にも言えないこの気持ち…。思春期手前の子供たちの揺れる心情を描く話題作。

備考 2011年にTVアニメ化された

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放浪息子のレビュー

点数別:
1件~ 5件を表示/全36 件

5点 朔太さん

性同一性障害という病気がもたらす本人のみならず、
家族や社会との葛藤をテーマにしました。
ナイーブな問題だけれども、想定できる問題や衝突を
余すことなくタブー視しないで問題提議をします。

皆さんの評価は高いので、口はばったいのですが、
全巻を読んだ正直な感想です。
背景を理解するための1巻と結着の15巻の間の
13巻分のお話は、毎号毎巻同じ繰り返しに感じてしまいました。
プロセスの進展はほとんどありません。
周辺の同じ思いを持つ男女、姉、母、女友達の優しい
共感と彼ら同士の反発の繰り返しです。
やや退屈さを感じるほどの行きつ戻りつを繰り返すのが残念です。

また、画は可愛いのですが、人物の描き分けが苦手な
ようで、十人くらいのサブキャラはほとんど誰だか
わからないまま話しが進んでいった感じでした。
まあ、それでも問題ない展開も困ったものですが。

面白いのは、主人公を取り巻く男友達のほとんどは、
無邪気な攻撃を仕掛けてくる敵ですね。
男社会が絶対敵だと理解できます。
要するにオンナ世界になれば、救われる男も沢山
いることを男は知るべきですね。

つまるところ、本当の自分をさらけ出したい欲求と社会と
どのように折り合いをつけていくかの問題なんですよ。
繊細な心を持つ人間は、獣がいる社会では生きていけません。
繊細な世界を好む人たちに守られた駕籠の中の世界だけが、
彼らの住処という結論かと理解しました。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2019-06-09 14:55:45] [修正:2019-06-09 14:55:45] [このレビューのURL]

4点 デビルチョコさん

繊細な題材だが穏やかな絵で描かれていて、
良い意味で万人受けしやすいと思う。

しかし最後まで、ドラマチックな話としてこの題材を取り扱っているのか、
或いはリアリティーを重視したいのかハッキリとしなかった。
要するに中途半端な内容。

仮に後者であれば、ストーリーが綺麗過ぎるし、
題材とされる人々の事を軽視していると感じてしまう内容だった。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2015-02-19 07:07:25] [修正:2015-03-25 12:22:22] [このレビューのURL]

7点 shunさん

女装が気になる男の子と、女性化を拒む女の子が主体の物語。
思春期の多感な時期と、淡い友情や性の目覚め、異性意識など、
端的に言葉で表せない事柄たちを、主人公二人を通して味わった気持ちになれる。
男性の中にある女性への(異性としてではない)あこがれに触れ、共感を覚え。
女性の中にある女性化していく身体への拒否反応を、感覚的にわかった気持ちになった。

画は終始安定しており、作者の持つ個性で十分に世界観は保たれている。
この物語を表現するに当たり、かなり適した絵柄だと感じる。

物語に起伏はあまりなく、登場人物の心理状況を考えなければ、かなり退屈な漫画だと思う。
しかし、無意識下の「単純に異性が好き」という普通の群衆の中でこそ、それ以外の存在の異質さは現れない。
異質な主人公たちを、そういう人達もいて当然じゃないか、と意識誘導されていることに
読んでいる間は気づかなかった。
とくに差別意識があるわけではないが、「何とも思わない」というニュートラルな姿勢を、
実際に身近に「そういう人たち」がいたら演じきれるかどうか・・・演じる?と考えさせられた。

ゲイ・レズといった扱いではなく、心理的に女性寄りという主人公で、
生々しい部分は全くないきれいな世界なので、嫌悪感もなく受け入れることが出きた。
主人公たちが成長していく様を見守れるのも面白さの一つとなっている。

女装男子をいち早く扱った作品として、ブーム(?)の下地にもなったかもしれない。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2015-02-04 14:03:07] [修正:2015-02-04 14:03:07] [このレビューのURL]

9点 asd5さん

なよなよした子のなよなよした物語と思ったら大間違い。
しっかりと主人公としての強さも持ちながら、悩んだり挫折しながら生きていく青春物語、成長物語です。
女装や変態という特異なモチーフでありながら、普遍的な人間物語に落とし込んできたところには驚いたし痺れた。終盤は目頭熱くなりました。青春モノの新たな名作。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2013-07-28 23:43:09] [修正:2014-05-25 22:33:58] [このレビューのURL]

8点 booさん

 フロム・ヘルなんかとはまた違った意味で、本当に読んでいてしんどかった。もちろんおもしろくないとか下手だからではなくて、志村貴子がすごいからなのだけれども。
 何でそんなにしんどかったのかというと、ハチクロの台詞でいう“自分が苦労して脱ぎ捨ててきたもう見たくないものを、強制的に見せられている”感じに近い。読んでいて、あぁぁぁーってなっちゃう。

 女の子になりたい男の子と男の子になりたい女の子の話、といえばもちろん正しいのだけれど、性同一性障害を描いた物語かというと少し違う。恐らく志村貴子が描きたいのは、それよりもう少し広いもの、成長するにつれてカテゴライズされていく子供たちの姿だ。
 
 作中に、女モンの下着を持ってるのか?と聞かれて肯定した二鳥くんと友達のこんな会話がある。「女の服着るだけならまだ、てゆーかそれもアウトだけど、でもまだマシだけど、下着は完全アウトだろ」「それを何でおまえが決めるんだよ」
 もちろん私は二鳥くんのような、女の子になりたい男の子ではなかった。でも成長するにつれて自分を取り巻く“線”を少しずつ感じ取っていくのは決して二鳥くんような子だけの話ではなくて、誰もが経験することだと思う。私が中学生の時、学校ではズボンを腰まで下げるのが流行していたし、校則違反だけれど眉を剃るのは格好良いとされていた。二鳥くんは何でおまえが決めるんだよ、と言ったがやっぱり人によってアウトとセーフの線は異なるし、その線を決めるのは周りの人間なのだ。子どもはそういう雰囲気にすごく敏感だから、自分はどこまでズボンを下げていいのか、眉を剃っていいのかを考えて、出来るだけ線からはみ出さないようにする。

 でも時にはその線からはみ出したくなるときもあるんだよね。いつもより気張った髪型をしてみたり、思い切った服を着てみたり。しかし大体な所、自分の線をはみ出した結果、何となく決まりの悪い思いをしたり、友人に馬鹿にされたりすることになる。二鳥くんが女の服を着たいということは、こういう誰もが経験することの延長線上にあるのであって、決して普通の人と関係のないことではないのだ。
 もちろん男と女ってだけじゃなくて、子どもと大人、可愛い人と可愛くない人、だったり人は色んなカテゴライズをされていくわけだけれども。ただ二鳥くんを取り巻く線は、成長するにつれて少しずつ狭くなっていく。制服によって男と女は形式的に分けられるし、第二次性徴期によって否が応にも自らの性別を実感することになる。これは苦しいよなぁ。
 
 成長するにつれて、あんまり人ははみ出さなくなる。線をはみ出ることで苦労をするより、その中でやっていく方が精神的に楽だから。二鳥くんはどうやら高校生になっても、おっかなびっくりしながら線をはみ出し続けていくようだ。それが多分タイトルの“放浪”息子ということなのだろう。
 多分思春期をこういう風に描いた人って志村貴子以外にいなかった。よしながふみの根底にも似たものがあるとは思うのだけれど、志村貴子は噛み砕く前のものを見せてくれる。だから青臭くて、照れくさくて、読むのがしんどいのだ。いや本当に佐々ちゃんという清涼剤がいなかったら読めなかったかもなぁ。志村貴子はやっぱりすごい。

 志村貴子は様々な放浪を見せてくれる。人によって自分を取り巻く線は違う。ちーちゃんのように異様に広い人もいるし、高槻くんみたいな人もいる。色んな線のはみ出し方があって、線をはみ出すことには相応のリスクだってある。
 二鳥くんの放浪はどこに行き着くのか、それとも放浪し続けるのか。読むのはしんどいけれど、それ以上に楽しみなのであります。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2012-02-10 23:47:53] [修正:2012-02-10 23:47:53] [このレビューのURL]

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