蟲師のレビュー
10点 朔太さん
日本の風土と日本人に根づいた原世界がそこにあります。
全ての人が心の底に持っている懐かしい世界です。
私は幼少期に目にした夜の闇や日暮れ時の神秘性を
いつまでも脳の底に残している気がしています。
その恐れが日本なら妖怪、欧米なら妖精などの存在を生みます。
漆原さんは、さらにこれを総称的に蟲と定義し、
時にはナガレモノという自然現象にさえ生命と意味を与えて世界を作りました。
最初に賛辞されるのは、江戸時代でも明治時代でも
なさそうな、およそ文明からは遠く、
しかしとんでもない昔でもない独特な世界観と蟲の存在でしょう。
蟲が人間に及ぼす悪さや自然の営みだけでも、
十分に絵として成立していますが、次に蟲に関わって
しまう人間の織りなす物語がセットで用意されています。
命の根源である蟲に抗っても仕方なく、共生を促します。
どこかの漫画雑誌では「勝利、努力、友情」なんて
共通語で作品を生み出させて商業的に成功していますが、
この作品は全くそのいずれの言葉も当てはまりません。
だけれども、とても気持ち良い時間を与えてくれる、
まるで美しい絵画と静かな音楽を合わせて愛でるような
思いにさせてくれました。
全体を流れる静謐で穏やかな空間と時間が3つ目に
賞賛されるべき点でしょう。
それはきっと水彩画のような薄墨のタッチと自然画の
多用がもたらしたのでしょう。
この作品に出えたことは、大変幸せに思います。
名作です。
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[投稿:2020-06-11 02:19:07] [修正:2020-06-11 02:19:07] [このレビューのURL]
7点 勾玉さん
異形のものを既存の「妖怪」ではなく
「蟲」という独自の概念に置き換えたところが秀逸。
怪異をもたらす点に於いて、妖怪と共通した存在であるにも関わらず
本作の「蟲」には、妖怪の持っているおどろおどろしさは無く、
むしろ神秘性に満ち溢れた存在として、世界を彩っている。
そして、そこから紡ぎだされる物語は幻想的で叙情的。
妖怪の跋扈する世界に行きたいかと問われれば後ずさりしてしまうが
蟲の存在する世界なら、一度くらいは覗いてみたいと思えてしまう。
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[投稿:2010-09-22 13:54:50] [修正:2016-11-18 23:55:10] [このレビューのURL]
6点 pazzoさん
作者の描きたいことを描きたいだけ描いてるっぽい作品。
こういうのはアフタヌーンならではの質の高さだと思う。
よくまとまっていて読みやすい。
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[投稿:2013-08-29 10:09:59] [修正:2013-08-29 10:09:59] [このレビューのURL]
5点 臼井健士さん
「蟲」という超自然的な存在と、人とが関わることで起こる不可思議な事件の数々。
「蟲師」という蟲と人との所謂「トラブル解決屋」である男・ギンコの視点から語られる
物語を描く。
時代設定は不明です。舞台は大抵「山中」だったり「海辺」だったりします。
が、文明の利器など全く出てこないため正式な特定は出来ません。
語り部であるところのギンコがかろうじて洋装をしていることから、
(おそらくは)明治以降の日本であるだろうことが推察できるくらいです。
蟲という古来から日本に住む精霊とも妖精とも言えるような存在。
彼等はときに人間に寄生というか、人間の生活圏に入ってくることで
様々な問題を引き起こすことがある・・・・。
それは大抵「不幸なこと」であるので、蟲師と呼ばれる蟲について精通している
プロが問題解決に乗り出すのである。
ほぼ事件絡みの物語ですが、意外なほどに「淡々とした雰囲気」で
物語は進んでいきます。
まるで「昔話」や「童話」を読み終えたような、読後に独特の満足感に
包まれる他に類を見ない作品ではあります。
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[投稿:2010-09-12 20:12:43] [修正:2012-01-03 10:03:10] [このレビューのURL]
7点 columbo87さん
伝奇物、なのかな?蟲師と呼ばれる主人公が旅をしつつ事件や問題を解決していく人情物。
病気や妖怪、果ては現象までを蟲とすることで、話しの幅を広めあらゆるものに対応できるようにした発想が見事ですし、よく続けられるなぁ、と思わせられます。
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[投稿:2011-06-01 14:26:27] [修正:2011-06-01 14:26:27] [このレビューのURL]
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