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7.75点(レビュー数:4人)

作者羅川真里茂

巻数1巻 (完結)

連載誌短編集:2010年~ / 白泉社

更新時刻 2011-02-24 23:52:19

あらすじ 羅川真里茂にしか描けない。
どこまでも切なく、たまらなく優しい「罪」をテーマに描く感涙の3編を一挙収録282P!

備考 短編集の為連載開始年には発行年を表記。

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朝がまたくるからのレビュー

点数別:
1件~ 4件を表示/全4 件

7点 paranaさん

赤ちゃんと僕で知られる羅川真里茂先生の短編集。
3作品が収録されているが、それぞれが80ページ以上あって読みごたえがある。

この短編集は、何の予備知識もなく読んで欲しいところなので
あまり語らないことにするが、
キーワードはズバリ
「罪」、「禁断」そして「優しさ」。

どの作品もまずキャラクター設定の良さが光り、
キャラクター設定の良さを殺すことなくストーリーが見事に展開していく。
3作品とも短編といいながらページ数がそれなりに多いのであるが、
ページ数以上にドラマが盛り込まれているように感じられる。
そしてどの作品も最後は心に優しくジーンと響く。

実力のあるマンガ家の短編集って、いいですね。
(泣ける度2★★☆☆☆)

ナイスレビュー: 1

[投稿:2015-03-14 11:08:40] [修正:2015-03-14 11:08:40] [このレビューのURL]

7点 booさん

 何というか、読み返すたびに色んな意味で何とも言えない思いになる。

 羅川真里茂がドラマを描く名手であることは私が言うまでもない。「赤ちゃんと僕」の広瀬とその漫画家である父親のエピソードにおける、“漫画は人間同士の心が動くからおもしろいんだ”という拓也の台詞は羅川先生の偽らざる気持ちだろうし、それを今まで実行し続けているから羅川作品はまさにずっと変わらずおもしろい。

 赤ちゃんと僕、しゃにむにGO!、いつでもお天気気分、チムアポート、ましろのおと…ホームドラマからスポーツや音楽もの、ファンタジーまで羅川作品の核には人間同士のドラマがある。チムアポートは以前書いた記事のように、ファンタジーとしては今ひとつでも人間ドラマとしてはやっぱりおもしろかった。
 それは“贖罪”という重いテーマを持つ3中篇を収録した、この「朝がまたくるから」においても変わらない。やはりどんなに重苦しいものであっても羅川真里茂は美しくドラマに仕上げ、彼らを救済してしまう。

 最初見た時、素直に感動した。ああ、羅川真里茂の真骨頂だなと。でも読み返していくうちに、ふとここまで物語を堪能してしまって私はいいのだろうかという疑念が芽生えてきてしまったわけで。
 誤解して欲しくないのは、羅川先生が真摯にそれぞれの作品のテーマと向き合っているのは確かなのだ。でも、何というか美しいドラマに仕上げて、読者をすっきり感動させてしまうのは羅川真里茂の持ち味だけれど、それはこのようなシリアスな作品集において長所と裏返しの欠点も露呈してしまっている気がする。

 要は“重さ”がよりドラマを盛り上げる助けになってしまって良いのか?、ということで。こんなシリアスなテーマなのにそのおもしろみはいつもの羅川作品と変わらない。相も変わらず、美しい物語に読者は酔いしれ涙する。
 それは素晴らしいことでもあるけれど、でも「朝がまたくるから」においてはいつものように全てを肯定することはできない。ドラマであるということは、裏返すと現実ではないということだから。そして私はドラマであって欲しくなかった作品集なのだ、この作品は。

 でもドラマを描かない羅川真里茂はもう羅川真里茂じゃないんだよなぁ。そういう意味では羅川ファンの私だけれど、向いてない作品だったのかもしれない。
 これからも変わらず羅川ファンではあり続けるのは変わらない。ただ羅川真里茂の良い所がはっきりした一方、限界も見えてしまった気がしてならない。

 やっぱり「朝がまた来るから」を読み返すとおもしろいのだ。そしておもしろいからこそこの気持ちの行き所の始末に困ってしまう。慈しむような優しさに満ちている作品だけれども、でもなぁ…。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-08-14 01:36:21] [修正:2012-01-22 22:12:15] [このレビューのURL]

8点 blackbirdさん

短編集といってもかなり読みごたえのある作品が揃っている。

どれも「罪」がテーマに流れているが、本当に罪なのか、責められるようなことなのか?と、読み手もつい感情移入してしまいそう。

話の構成がとても上手い作家さんですね。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-06-08 11:38:28] [修正:2011-06-08 11:38:28] [このレビューのURL]

9点 ITSUKIさん

短編集ですが、コマ割やモノローグの配置がとても上手で読みやすい上に、一作あたりのページ数が80-100Pあるのでどの話も強く印象に残りました。

「葦の穂綿」
普通の少女漫画ならごくありきたりなボーイミーツガールなラブコメに行きそうな導入に対し、明かされる彼の過去の重さ。その落差が凄いです。
決して結ばれない、報われない恋。ハッピーエンドなのかそうでないのか、胸が締め付けられる様なラストは少女漫画特有の感覚に思いました。

「半夏生」
タイトルや写真展の内容、またラストのモノローグといった伏線が利いていて好きな作品。
年上の女カメラマンと女装少年の禁断の恋、というのはどちらかといえば漫画チックな設定ですが、こちらは二人の再会のエピローグまでを描き切りハッピーエンドで締めている処がたまらなく良いです。

「冬霞」
児童虐待のトラウマが描かれます。
幼き双子と「おにいさん」の逃亡劇。
親に虐待されて生きてきた双子は連れ出された彼によって初めて愛情を与えられます。
なぜ家に押し入ったのか、なぜ双子を連れ出したのか、などの謎めいた彼の言動の真相には心打たれました。

3作のどの題材も読み切りとしてここまで高い完成度で話をまとめられる方はそうそういないのではないでしょうか。
オススメです。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2011-03-09 23:56:42] [修正:2011-03-09 23:56:42] [このレビューのURL]


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