奇子のレビュー
8点 朔太さん
手塚の意欲作。壮大なスケールで圧倒されました。
まずは、時代背景ですが、真に前近代的日本の封建的
家督制度の時代です。
横溝正史も殺人事件の動機、背景を前近代的な日本社会に
求めた小説が多いですが、本当の田舎の悲劇を表現しています。
現代のドラマで本当の田舎の悲劇を描いたものは
皆無ですから、現代人には「まさか?」の世界だと思いますが、
戦前以前の田舎では極めて自然な家制度の産物だったと思われます。
三男のセリフに「家系を調べると、まるで汚物ダメだ。
兄妹、姉弟、夫婦、いとこ、血縁関係が、およそ犬か
猫みたいに混ざり合って、それが子を作りその子同士が
また混ざり合って、小作人や他人の女にまで子を産ませ・・。
その都度金と権力でもみ消してきた。」
そんな陰惨な家の犠牲により、23年間監禁生活を過ごす
奇子ですが、決して主人公ではありません。
戦後の占領下でGHQやCIAの思惑により翻弄される日本人
スパイの次男も田舎で家督を継ぐためには命も差し出す長男も、
倫理を説く三男も家を出て客観的な視線を送る長女も含めて
皆が主人公です。
しかし、全員が善人ではありません。
悪人もいませんが悪魔的悪意を潜在的に持っています。
長女ですら傍観することで罪を犯したことを自覚していません。
彼らが紡ぐ大団円は、ドラマとしては当然の帰結と言えます。
読後感としては、一編の小説かテレビドラマか映画を
見せられたような思いがします。
手塚は一流の脚本家でもあったように思います。
やはり天才です。
ナイスレビュー: 0 票
[投稿:2020-06-26 07:32:33] [修正:2020-06-26 07:34:09] [このレビューのURL]
5点 くろしびさん
久々に手塚作品を読んだが、コマ割りとかがやっぱりって思えた。
内容的には、どこまで史実とシンクロしているのかよくわからないが、
戦後の今とは違う特殊な時代背景からきているが、
思ったより奇子の影響が小さかった気がする。
天外家も単にドロドロしてただけだったし。
二朗も殺そうとしたり好きだったりいまいちその心理がわからない。
ナイスレビュー: 0 票
[投稿:2010-10-02 21:57:15] [修正:2010-10-02 22:13:04] [このレビューのURL]
7点 鈴森一さん
ムラ社会のとある地主の家族の物語です。
ドロドロを絵にかいたようなお話で、とにかく善人が出てきません。
しかし、昼ドラのような下世話な感じはなく、高尚で文学的な香りが漂っています。
漫画なのに、小説を読んでいるような気分になりました。
作品としての質は極めて高く、作者の力量を感じます。
登場人物たちがあまりに救いようがなく、読後感はよくなかったですが、人の業について考えさせられました。
ナイスレビュー: 0 票
[投稿:2010-07-05 00:01:02] [修正:2010-07-05 11:34:23] [このレビューのURL]
6点 bugbugさん
後書きの作者の弁だったと思いますが
手塚版カラマーゾフの兄弟を目指していたそうな
カラマーゾフというよりは明治の文豪の作品のようなイメージ
このころの作者はヒット作に恵まれず、野心的な作品を多く発表しています。
田舎的なドロドロ具合と完全にシリアスになりきれない作者の味が調和していて個人的には好きな作品
次兄が悪の組織で出世するのなんか真面目に書いたらギャグだけになってしまう
カラマーゾフになるためにはもうちょっと手塚色と兄弟の数を抑えたほうがよかったんじゃないでしょうか
キャラクターごとに作者の愛着の差が顕著のような気がします
ナイスレビュー: 0 票
[投稿:2010-05-03 18:26:52] [修正:2010-05-03 18:27:13] [このレビューのURL]
8点 taroさん
ドロドロのドラマ的でありながら、漫画というジャンルでしか表せないだろう物語。手塚作品の中でもかなり質の高い作品。
ナイスレビュー: 0 票
[投稿:2009-09-26 21:08:25] [修正:2009-09-26 21:08:25] [このレビューのURL]
PR