ホーム > 青年漫画 > 月刊アフタヌーン > 大日本天狗党絵詞

7点(レビュー数:12人)

作者黒田硫黄

巻数4巻 (完結)

連載誌月刊アフタヌーン:1995年~ / 講談社

更新時刻 2009-11-25 06:27:27

あらすじ 天狗!自在に飛行をなしあやかしの術もて人をさらい古来より畏怖と敬愛を享けた天狗!今かれらはどこにいるのかどこから来てどこへ行くのか?何を食っているのか寒い日はどうするのか。天狗にさらわれちゃった子はそれからどうなっちゃったのか?

シェア
Check

大日本天狗党絵詞のレビュー

点数別:
1件~ 5件を表示/全12 件

9点 ■■■さん

最初に主人公とその師匠が「天狗」だということがわかるシーンですごい引き込まれますね。

この漫画を一言で説明するのはちょっと難しいですね。ちょっと文学っぽい描写も入ってますし。
よくわからないと言う人もきっといるでしょう。それはキャラクターの性格がちょっと複雑で、その心情を文字で表現してないからなんですけどね。その時に何を思っているかをちゃんと絵から読みとらないと作品に置いていかれてしまうんです。

でも基本的なルールはシンプルなんです。舞台は普通の日常なんですけど、ひとつ変わっているところがあって、「天狗」の存在を知った際に、世界に自分の居場所がないと感じているとその人も「天狗」になってしまうんです。
つまりこの作品は孤独感や存在する理由を「天狗」に例えて表現しているんです。

僕がこの作品を好きなのは、主人公のシノブと師匠が辿り着く答えが、結果的に全然違うものになったことなんです。
この二人は話の途中ですれ違って決別してしまうんですけど、もしも二人の答えが同じだったらもっと点数は低かったはずですし、ひどく安っぽいB級漫画で片付けられてもおかしくないでしょう。この作品がそうならなかったのは、いかにも漫画的なことをしながら、出てくる人間を深く掘り下げた奥行きがあるからだと思います。
僕は哀しさと力強さを感じる師匠とシノブの最後のやりとりが大好きなんです。
僕にとって『大日本天狗党絵詞』はおもしろくて勇気をくれる漫画なんです。

このレビューを書いていて改めて気付いたことがあります。それはこの作品のキャラクターの表情、特に目の表現力が非常に素晴らしいということです。
セリフがなくても伝わる、いや、言葉にしづらい感情を見事に捕らえているんです。
そのことに気付いてからは、この作品はシノブの表情が変わってゆく過程をを描いた物語なのかもしれないなと思っています。

ナイスレビュー: 2

[投稿:2006-11-09 22:45:54] [修正:2006-11-09 22:45:54] [このレビューのURL]

8点 あんりさん

なんだこれ   
すごいんだかわけわからんのか
あのラスト、人を選びそう

奇妙、奇怪、奇抜
さすが奇才といった処でしょうか

ナイスレビュー: 1

[投稿:2009-04-01 15:51:35] [修正:2010-05-24 20:41:16] [このレビューのURL]

7点 ジブリ好き!さん

作者の初連載とは思えないほど、新人とは思えない話の方向性と独自性をもった作品です。それでいて、序盤こそ盛り上がりに欠けるものの、2巻でZ氏が登場してからの流れには新人がもつ特有の勢いをしっかり発揮しています。(最近の新人さんにも、ぜひこれほどの気概を持った方が現れるといいなぁ。)

物語は終始天狗の謎を追う展開ですが、そこには天狗に限らない、天狗を比喩とした社会風刺を感じ取ることもできます。
最高の力を持つ天狗、Z氏の姿が外人であること。
泥人形と、それを愛する者。
師弟関係。
天狗の本質:自分を天狗だと思い込んだ強いアイデンティティをもって初めて天狗となりえること。
そして何より、人間にも天狗にもなりきれないシノブの存在と結末。
こうした様々な要素を基に、自分がこの作品に何を照らし合わせて楽しんでいくかは、人それぞれでしょう。それだけ比喩になりえる多くの物事が、たった3巻(新装版)の中に詰まっています。

作中の人物は皆、自分のアイデンティティを失いかけながらも、最終的にしっかりと「自分」を取り戻していきます。
テングを見せつけられても確固としたアイデンティティで動揺もせず天狗としての気概を取り戻した師匠
人間にも天狗にもなりきれないシノブが、様々な経験を経て、何かを悟り、前向きに進もうとするラスト
しのぶに隠してきた過去を話、しっかり向き合おうとする教授
有吾堂も比良井も幸南も、不本意な結末を迎えながらも、しっかりと自身のアイデンティティを取り戻しています。
こうした登場人物たちのモラトリアムを楽しむ作品でもあるのです。

水墨画とも劇画とも思える筆のタッチも新鮮。迫力を引き出しながらも、細かい表情までしっかり書きこまれています。

とにかくどこをとっても独特な漫画ではあるのですが、その独特さが長所とも短所とも言えてしまう嫌いがあります。最近の漫画に馴れ過ぎた人には読みにくさを感じるでしょうし、テンポの遅さも気になるかも知れません。漫画らしいエンターテイメント性を発揮しているのですが、盛り上がりに欠けたり古臭く感じるかも。
一般受けする作品ではありませんが、もし漫画に娯楽以上の何かを求めるのであれば、一度は読んでみてはいかがでしょうか?

ナイスレビュー: 1

[投稿:2010-04-11 18:00:23] [修正:2010-04-11 19:35:11] [このレビューのURL]

10点 dollboxさん

すごいです、黒田硫黄。

天狗の設定や、筆で描かれた絵の躍動感が素晴らしい。
個性的でとても印象に残ったものばかり。

サラリーマンや若者までもが天狗になって空を飛び回るシーンなんかは、シリアスなんだけれど、どこかコミカルでおもしろい。

「天狗であること」を問うシーンは最高の見所。

なぜすれ違ったのか。
どうなったのか。
どこに行くのか。

それらをどのように解釈するかは
読み手に委ねられている。

しかしその答えは最後の表情から読みとれるはず。

絵、物語、人間描写どれをとっても唸らされっぱなし。

おもしろい。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2005-08-04 02:04:02] [修正:2009-12-27 14:39:29] [このレビューのURL]

なんというか、これに関しては点数が意味を持たないというか…
どうしても黒田硫黄がハイセンスすぎる。
語らない部分が多い一方で、巨大なZ氏による破壊行為とか人間の足を生やしたカラスの姿とかが最高に可笑しく映る。
エンターテイメントに収まらない一作ではあるが、マンガとして見るのであれば盛り上がりが多少遅かったかな。
元々手を出しにくい作品なだけにこの一点だけは残念だった。

本作についてどうやって説明しようかなと考えたところで、
People In The Boxというバンドのフロントマンである波多野氏が、この作品を好きなマンガとして挙げていたのを思い出した。
なるほど、このマンガの世界観はバンドのそれと似ているところがある。
どこから湧いてくるのかその比類のない「発想」に驚かされ、
社会への「批評性」を「メタファー」で表現し、
そして少し恥ずかしがってそれをごまかしているような「シュール」さ。
大胆な筆使いとコマ割りは目まぐるしい「転調」に通ずる。

天才の考えるところは分からないままで、(手垢の付いた表現にはなってしまうが)読み手や聴き手それぞれに違う響き方をするのだろうと思う。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2013-03-12 17:45:41] [修正:2013-03-12 17:45:41] [このレビューのURL]

PR


<<前の10件
123

大日本天狗党絵詞と同じ作者の漫画

黒田硫黄の情報をもっと見る

同年代の漫画

月刊アフタヌーンの情報をもっと見る