「団背広」さんのページ

総レビュー数: 137レビュー(全て表示) 最終投稿: 2005年05月03日

6点 骨の音

「ゴミの海」にびっくり。おいおい、デビュー作でこれが書けるのかよ…かなわねーなこりゃ、この人才能あるわ。

俺は漫画とか映画とかを見るときに、割とその話の構成とか、演出とかの技術的な部分を気にしてしまう人なんだけど、岩明均さんはすごいねぇ。家庭内の不和を「パサッ」という新聞を広げる音ひとつで表現するあたり、しかもそれをデビュー間も無い短編でやってしまうとこなんかに本物の才能を感じる。
なんか、地に足がついてるというか。多分この人は揺るがないな、あと何十年かはマイペースに漫画を書いていってくれると思うよ。
いやー、参った参った。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2005-11-03 12:46:30] [修正:2005-11-03 12:46:30] [このレビューのURL]

[ネタバレあり]

狂える作家が一人の女に導かれ、気違いじみた芸術の深淵に足を踏み入れる物語。

白昼夢に取り憑かれた男を主人公にしたことが設定として上手く活かされていて面白い。
どこからが夢でどこからが現実なのかわからず、ひとつのエピソードが終わるまでそれがどういう話なのか予測しようがないのがいいね。船の話なんかはそれでいて上手くオチがまとまってるし、このへんに手塚治虫のソツのなさを感じる。

ただ、この現実と幻想が入り混じった感覚が最後まで一貫していれば良かったんだが、2巻に入って黒魔術の話がメインになるとそれまで「わけがわからないから良かった部分」に突然説明が入ってしまって、途端に面白味が薄まってしまう。
読者ウケが悪かったからテコ入れしたらしいんだけど、俺は前半部の狂った感じが好きだったのに。最後まで徹底してそれを貫いてほしかったなあと思って少し残念。


この漫画に出てくるバルボラという女、これはまるで芸術そのものを具現化したような女だ。気まぐれで、本当にいるのかどうかわからないってとこなんて特にそう。
そして偏屈で気狂いじみた作家というと、どうしても色々と逸話の多い手塚本人を連想してしまう。
多分この作品は手塚治虫の半自伝みたいなもんじゃないかな。「芸術」という名前の女と付き合った日記のような。
そういった意味でも印象深く、興味深いので、個人的に手塚作品の中でもかなり好きな一作だったりする。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2005-11-03 12:37:19] [修正:2005-11-03 12:37:19] [このレビューのURL]