「ほげ」さんのページ

総レビュー数: 17レビュー(全て表示) 最終投稿: 2005年05月28日

5点 珍遊記

『西遊記』の翻案漫画として誕生したのが『ドラゴンボール』なら,『珍遊記』は『西遊記』のパロディなのかもしれない.四方田犬彦のエッセイにも書いてあった.

だが,『珍遊記』を読むと,誰しも感じるが,画太郎の露骨な『ドラゴンボール』パロディにも見られるように,一つの作品へのパロディではなく,方向性は多岐に向かっているように思える.だがそれが,功を奏していないという感じは否定できない.『ドラゴンボール』を露骨にパロった章など,どう見ても笑えなかった.

本作を見て,笑おうとするなら,鼻水やよだれというものよりも,いきなり坊さんを爺さん婆さんが殴りつけたり,「じゅうまんえ〜ん」の台詞に見られるごとく,見開きをつかった唐突さに,現れている.結局,昔ながらの単純なギャグなのだ.たけし映画を観ていて,ギャグではないかと思うのは,たけし演じる刑事やヤクザが,いきなり相手を殴るようなシーンに現れていた.そういう意味では,単純ではあるけれども,暴力と笑いの親和性をつきつけている本作は,ギャグ漫画として悪くはない.

だが,この漫画は物語の構成力が破綻しており,ギャグも息切れが見られるため,それほど評価したくなるような漫画ではないと思っている.ギャグにちょっと光るものもあるが,最近の漫画などに比べると,やはり物語に粗が多すぎる.訳の分からない戦闘シーンとか,本屋の婆の暴力シーンとか,どこでどう笑うのだろうと首をかしげたくなるようなシーンが多すぎた.今再考されるべき漫画ではないだろう.

ナイスレビュー: 0

[投稿:2006-03-27 22:58:37] [修正:2006-03-27 22:58:37] [このレビューのURL]

虚構の名探偵金田一京助の子孫・金田一一が主人公の推理漫画。推理小説もミステリー映画も興味のない私は、この漫画の推理がどの程度優れているのかは分からない。ただ、『コナン』と比べると、金田一が考え考え物語を進めているように描かれているのは好印象だった。『コナン』は、なんでこんなに早く?という感じでコナンが犯人を射止めてしまっていた。

『コナン』が江戸川乱歩とコナン・ドイルのあいのこ的な名前を持っている人間を主人公としているのは、多分に本作の影響が見られる。連載当初は推理ブームともいうべき現象があって、少年マガジンの発行部数をのばしたのもこの漫画のおかげだ。だから講談社は『金田一少年〜』に足をむけて寝られない。

2回ほどドラマ化されたように記憶するが、オカルト、ホラーテイストの内容で案外に楽しめた。原作の方は、髪の毛を一つにしばる金田一のセンスのなさと、女性が描けない(男性のように見える)作者のセンスで絵にとけこめないものがあったが、江戸川乱歩的な猟奇殺人には、割とひきつけられた。ドラマ化は、そこをチープながら上手く実写化していたようである。

物語としては、頭は悪いけど推理はできるという、テレビゲームの『クロス探偵物語』的な設定。パクリはあるのだろうが、いちいちそんなことに憤っていてはこのシミュレーション化された世界ではやっていけないから、減点対象にはならない。だが、ことあるごとに起こる事件の中で、やたら犯人が自殺する展開が多かったのは大変鼻についた。フィクションの中で犯人が警察にとらえられず死んで終わりというのでは、全く何もなかったかのようである。インクを消したようなものだ。やっぱり罪は罪としてつぐなってほしいものだが、この作品は、犯罪者の動機をつき、読者の同情を誘うので、そういうわけにはいかないようだった。自殺することで、悲しみで幕を閉じるというやり方は、犯罪者の罪を隠すようで好ましくない。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2005-09-21 00:43:16] [修正:2005-09-21 00:43:16] [このレビューのURL]