「左手」さんのページ

総レビュー数: 23レビュー(全て表示) 最終投稿: 2011年04月07日

 「まさに漫画の四次元ポケットや!(彦麻呂風)」

 なぜ映画監督のスタンリー・キューブリックが評価されているのか?漫画とは関係ないが映画の説明から始めます。それは作品ごとに全く違ったそれも新しい手法やコンセプト(基本的な概念)を用いて、その上悔しいほど良くできていて、正直に面白い映画だから評価に値するのです。ジャンルもかなりバラバラで、不謹慎コメディ、軍隊もの、サイコホラー、超SF作品などその懐と技術力、挑戦心に畏怖をするほどであります。

 ここで、特に手塚治虫を始め、なぜ、超が付く大物がすごいというと、そのジャンルやコンセプトが全く異なった漫画を描いてきて、その上面白いということです。ここでは漫画自体をほめているのではなく、"漫画家"をほめていると理解して下さい。
 藤子不二雄も同様に手塚治虫と並べられる超大物です。ドラえもんみたいな子供騙しの漫画を描いている人としか認識していない人は人生を損しています。この方は子供騙ししか描けないそこらの三流漫画家ではなく、"子供騙しも描ける"漫画家だということをこのSF短編集を読んでわかるでしょう。
 そんな藤子不二雄、特に子供向けのF先生の大人なS(すこし)F(ふしぎ)ストーリーを読んでみる価値は十分にあります。

 以下は漫画について書きます。

 あのドラえもん絵柄であれらの話を綴る怖さ。楳図かずおのようなリアルな絵で怖さを感じさせず、藤子漫画の絵だからこそ垣間見える人間のもともと備えている人間性の怖さが、むしろ爽やかに描かれてるところや、また、コンセプトつまり話の作り方の目の付け所が語彙力が少ないと思われますが、凄いの一言で、誰かこの話をパクって漫画描けよ、と言いたくなる程の出来です。

 何度も読める漫画はオチを知っていてもやはり面白い。これは話の内容もですが、私自身よく使う表現なのですが、面白い漫画は漫画としての喜びに満ちている。それは表現やお話作りなど全てを含めた要素が良い方向に向いている。それがこの漫画にはセクシーコマンドー外伝すごいよマサルさんのヒゲ部のシンボルマーク並みに盛られています。

 漫画に一過性の楽しみを求めている人にとっては、なんだこりゃつまんね、と言ってしまう作品ですが、漫画としての喜びが満載なこの漫画、そんなに甘くはないですゼ。

 藤子不二雄原理主義者ですが、布教ついでにオススメです!

 (全巻所持)

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[投稿:2011-05-13 00:47:34] [修正:2011-05-13 00:47:34] [このレビューのURL]

 「天才の苦悩と成長(前作の昴以上に)」

 前作の昴もレビューしました。さらなる主人公の宮本すばるの成長ストーリーが展開されていて、前作では独りよがりな孤高の天才が周囲の人を引っ張り成長する物語でしたが、今回では少し異なり、それまで引っ張ることしかなかった周りの人、特にパートナーと共にぶつかり合いながらさらなる高みへ向かう成長物語となり、天才が独りでなくなり、また、同等のライバルの出現など、この作者は天才すばるをどこまでもっていくつもりなのか、まさに天才を描く天才、曽田正人のやることには畏怖します。

 絵の描き方についてなのですが、思ったよりもバレエのコマが少ないと思いました。
 これは私自身が思っただけですが、例えば普通のスポーツ漫画ではメインのそのスポーツをより長くかくことが多々ありますが、この昴・MOONでは思ったよりも少ないコマでバレエシーンが描かれており、作者自身がバレエの芸術的な感じやバレエの刹那な時間がより際立つ勢いのあるタッチで描かれていて、読んでいてもその短さを感じさせない、むしろ読者自身がその間のコマや時間を補完して読んでいるような気がします。

 他の漫画に比べ、ハチミツとクローバーの羽海野チカやNANAの矢沢あいのような少女漫画のようなラフな線で常に躍動感のある絵になっていてバレエシーンでもすんなりと読め、読んでいる勢いをそのままに保ってくれている。それもまたこの漫画を褒めちぎってしまうところです。

 これは私事なのですが、すばるの炎のような激しい生き方にボレロの観客の一言「こんなテンションで生きてえな」に共感せずにいられないッッッ!!!!!ので超オススメです。

 (投稿現在、昴全11巻、MOON6巻まで所持)

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[投稿:2011-05-12 23:57:00] [修正:2011-05-12 23:58:41] [このレビューのURL]