「左手」さんのページ

総レビュー数: 23レビュー(全て表示) 最終投稿: 2011年04月07日

「年齢に合わせた優しい漫画」
 ドラえもんについて勘違いをしている方が多いです。絵が話ごとにコロコロ変わるやひみつ道具の効果が被っているなど、作品全体を通してみると不完全な部分が多いと思っているでしょうが、違います。

 ドラえもんをwikipediaで調べてください。掲載誌はコロコロコミックだけではないのです。小学館の児童向け雑誌にそれぞれ載っているのです。小学○年生、てれびくん、よいこ、幼稚園、サンデー、そしてコロコロコミックに載っていました。
 それゆえに、似た道具や絵も違うのです。
 考えてみてください。月刊のコロコロコミックだけで45巻もの作品量を出せません。

 以前、レビューを書いた大人なSFがある「藤子F不二雄SF短編集」でF氏は漫画のアイディアがバーゲンセールするほどある、ようなことを私は言いました。

 ここでドラえもんを良く見て下さい。絵と文字の対象年齢が話ごとに少しづつ異なります。

 ・コマ割り…コマが縦に入る数が違う。
 ・背景、構図…対象年齢が高いほど書き込んでいる(全体的に暗い絵)
 ・のび太の性格…これも対象年齢が高いほどかっこいい、男らしい。

 以上の違いについて方法論的(構成や台詞などの作品の作り方から評価すること)に読むと、流石F氏!すごい!とうならざるを得なません。


 一番好きな回は「オーバーオーバー」と「ボールにのって」です。オチが素晴らしい。

 もし、ドラえもんを子供だましの読み物だと思っている人は、もう一度作品の巧みさを楽しんでみてはいかがでしょうか。
 <全巻所持>

ナイスレビュー: 1

[投稿:2011-06-23 09:24:37] [修正:2011-06-23 09:24:37] [このレビューのURL]

 「夢に憧れ諦めた人たちへ」

 読んでほしい対象は、これから夢を追おうとする若者、夢を叶えた人、夢を諦めた大人、夢を叶えたが訳あってその夢を捨ててしまった大人。要するにこれは夢に憧れる、また憧れたすべての人に当てはまります。

 しかし、この中に登場するキャラたちのほとんどは私たちの現実世界にいるような夢を諦め、普通に仕事をし、生活を営む人ばかりです。特に1巻のなんともない日常がしっかりとその風景をまざまざと見せ付けています。
 その中で唯一夢を叶えるために頑張っているのが種田であり、結果は悲惨なことになりました。
 現実とはなかなか上手くいくものではありません。
 夢を見ることの憧れは花屋のアルバイトの井上、夢ではなかったのに叶ってしまったのが鮎川、夢を叶えたが現実を直視しプロデュース業をする冴木、それらのキャラが夢の象徴として配置されているのが、浅野いにおが仕掛けた表現といえます。

 物語としては1巻は極普通の日常、2巻は芽衣子が種田の夢の向こう側を探求する話。
 2巻だけでスッキリした内容で、言いたいこともいろいろな角度から言えているので、何度も読める作品に仕上がってます。

 サブカル厨(ヴィレッジバンガードによくいる奴等)大絶賛の浅野いにおが若者の鬱憤を吐き出した漫画、と高をくくっていた私ですが、ソラニンが映画化することになり、もう一度よく読んでみると、なんて完成度の高い漫画なんだ、と驚きました。
 その漫画を読まずにイメージだけでどうこう言うのはダメだね、と思わされました。オススメです!

   全2巻所持

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-04-24 11:05:32] [修正:2011-04-24 11:05:32] [このレビューのURL]

 「食うこと」に共感しない人はいない。描かれている状況はリアルであり、また日常であり、そのシーンをそのまま切り取りコマにした漫画です。
 漫画を読むというよりも、知り合いのおじさんのちょっとしたエピソードを聞いているような感覚に陥ります。その程度の話でも、現実は小説より奇なり、を体言している作品です。
 何が面白いと聞かれれば私はこう例えます。無数にある非現実世界の漫画から現実的な孤独のグルメにまるで世間話を聞きにいくように読んでしまう漫画界の公園のベンチ、と。
 読み終えたあとにしばらくしてまた井之頭さんに会いたくなるような漫画です。オススメです。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-04-08 19:26:01] [修正:2011-04-08 19:26:01] [このレビューのURL]

 私自身、野球自体好きではありません。野球の魅力や野球の強さが全然分かりませんでした。それまで読んできた野球漫画と呼ばれるものはビックリ人間ショーや野球を通じての友情恋愛を描いたもので、本質の野球のルールやプレーの面白さが全く伝わらなかった。
 しかし、おおきく振りかぶってはそれらの漫画とは一味も二味も違います。

 打席でのバッターとキャッチャーの球の読み合い、強くなるための(矯正ギプスなどの非現実的なのでない)トレーニング、凡才たちの努力、高校生らしい立ち振る舞いなど、相手校の選手も主人公たちもが一途に野球に青春を賭ける姿に読者は読みふけてしまう。

 悪い点とすれば、女性作者がありがちな登場人物の不必要なまでの詳細設定、試合が長い、絵に特徴があり苦手に思われる。
 それでも、キャラクターたちが頑張る姿にはハッとさせられるところがあり、オススメです。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-04-08 14:03:43] [修正:2011-04-08 14:03:43] [このレビューのURL]