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一介のロードバイク乗りがレビューします。

自転車(ロードに限ります。競輪とかじゃなくてね)という競技の素晴らしいところは「練習した量は絶対に裏切らない」ところだと思います。逆に言えば強くなるためには時間を掛けるということは絶対に避けることの出来ない行いだと言えます。才能という絶対的な強みを持つ人間であれ、たくさん走ることなくして強くなることは有り得ません。

と、いうことは家族や仕事や様々なしがらみを持つ大人にはとってもやさしくないスポーツなんですよ自転車ってやつは。朝も晩も走れるプロとは違って、ロードバイクに跨ることを愛する人々は皆少なからず何かを犠牲にし続けます。そんな自転車乗りたちが強くあろう、他人に勝とうというただそれだけのために、努力を重ねる。そんな姿に胸打たれるのは俺が自転車に乗っているから、というだけではないはず。それは世の中の無益な行いほぼすべてに共通するジレンマだと思うので。

作中の最初のクライマックスになる乗鞍(日本でたぶん一番有名なヒルクライムレース)で重力に逆らいハンドルにしがみつき、ペダルを踏み込む姿はまるで自分を縛りつけ、自転車から遠ざける現実を振り払う姿のように見えました。

自転車乗りの葛藤がめちゃくちゃ巧く書かれている漫画です。時々狙ってるのか天然なのか分からないギャグがたくさんありますが、それ含め楽しく読むことが出来る作品だと思います。

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[投稿:2010-05-15 18:23:58] [修正:2010-05-15 18:27:47]